「金利上昇とのバトルが始まった」―――さて、FRBは勝てるのでしょうか・・・。
今月18日の公開市場委員会(FOMC)で、アメリカの連邦準備制度理事会(米中央銀行:FRB)は、現在実施中の量的緩和策(Quantitative Easing :QE)の縮小を決定しました。ご存知のとおり、その内容は、FRBによる月間資産購入額を来年の1月から750億ドルに減額するというものです。昨年の秋から続けているQE第3弾において、FRBは毎月、米国債450億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)400億ドルの合計850億ドル(約8.8兆円!)もの債券を市場から買い入れていますが、これを来月から750億ドル、つまり月間100億ドルほど減らすことになります。
FOMC前の金融マーケットの事前予想では、QE縮小開始は早くても来年1月以降という観測が多かったように思えます。個人的には、以下に記すような事情から、同3月以降でないと、FRBはQE縮小に着手できないだろう、と予想していました。ということで、今回のFRBの金融政策変更を知って「えっ!? 早いね」と思われた方も少なくないのでは、と推測しています。
このあたりは、バーナンキ現FRB議長の強い思いが反映されたのだろう、と考えています。つまり、QEという、中銀としては異例の政策の実行を決断したのが自分であるから、その縮小開始の決定も自分自身で下しておきたい、ということです。来年の1月末で任期を終える予定の氏にとって、今回のFOMCがそのラストに近いタイミングだったわけで・・・。
さて、QEは現状のアメリカ経済のいわば「命綱」。「資産バブルよ、もう一度!」―――不動産バブル崩壊後の景気浮揚に向け、何かと手間も時間もかかる実体経済の改善を促すより、ずっと即効性があるバブル再生の「資産効果」でアメリカ経済の回復を図る―――これに必要不可欠なのが低金利のマネーであり、それを供給してきたのがQEです。
当然、このQEには過剰流動性(お金の刷り過ぎ)がもたらす赤色巨星クラスのバブル(大げさ! でも、すでにその兆しあり!)と超新星爆発という、通貨の番人・中銀としては絶対に避けなければならないリスクがあるから、いつかは止めないといけないけれど、一方でQEを停止すれば金利の急騰と債券価格の急落でこれまた経済危機がもたらされる懸念がある・・・。なぜならアメリカは言わずと知れた双子の赤字(巨額の経常赤字および財政赤字)を抱える世界最大の純債務国だからです。
「麻薬」のように危ないが、とりあえずのところ、低金利とドルの価値を保ってくれる、そんな「命綱」のQEがいよいよ縮小されることになりました。そこで米経済を襲う可能性があるのが強烈な「禁断症状」―――金利の上昇です。このあたりで懸念されることはいまのアメリカには山ほどあるのですが・・・。
直近でもっとも心配されるのが、2014年の年明け早々から再燃必至のアメリカの連邦債務上限問題でしょう。現在のスケジュールによると、10月に決定された暫定予算が1月15日に切れ、2月上旬には債務上限期限が到来し、再び上限額を設定する必要が出てくるもようです。おそらく来年の早春、今年の秋のようなゴタゴタが米議会で繰り広げられるものの、結局は債務上限額が引き上げられることになるのでしょう(デフォルトなんてできるわけがないでしょうから!?)。ということは、アメリカはこれまでにも増して国債を発行することになります。
一方、そのタイミングですでにFRBはQE縮小、つまり米国債の購入量を減らしています。米政府は米国債をさらに吐き出そうとしているのに、いまや米国債の最大の「買い手」となっているFRBがその購入を減らせば、当然国債価格は下落し、金利を跳ね上げるリスクが高まる―――繰り返しになりますが、FRBはそんなリスクを最小限に抑えるため、債務上限問題の成り行きを見極めてから(つまり3月以降に)QE縮小を始める気だろう、と推測していたのですが・・・。
はたして今回のFRBの決断が、年明けから始まる米議会の財政協議の行方にどのような影響を与えるのか、注目されるところです。
(続く)
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