わが国の不動産バブルを典型例に、バブルは終わってから「あのときはバブルだった」と回顧される、なんていわれます。同じようにいま、大荒れのマーケットのなか、世界中の投資家が過去を振り返りつつあるのではないか・・・バブルは、少なくともバブルのピークは完全に過ぎ去った、と。で、そのピーク期とは・・・2014年の夏だった・・・。
以前こちらの記事に、アメリカを中心とする世界市場では、米FRBのQE(Quantitative easing:量的緩和策)によるドル散布によって、本来ならばありえないはずの株と債券の両者が同時期に、ともに異様な高値に達する「双子のバブル」(株と債券のバブル)が発生した、といった見方を綴りました。ここで「発生した」と過去形にしたのは上記のとおり、この「双子のバブル」、現在は明らかに崩壊過程に入っているからです。
このあたりを如実に表しているのが、アメリカの債券でもっとも安全とされる米国債と他の債券との利回り格差である「スプレッド」の拡大です。最近はどくに、債務弁済能力が低いハイイールド債(ジャンク債)の拡がりが急です・・・
バンクオブアメリカ・メリルリンチの指数データでみた格付け「CCC」およびそれ以下の債券のスプレッドですが、この10年(2006/1~2016/1)でもっとも小さかったのが2014年6月下旬~同7月上旬となっています(オプション調整後のもので6%台前半)。じつは同時期、格付けの違いによって数値こそ違いはあるものの、ほぼすべてのスプレッドが最少を記録しています。
スプレッドが小さいということは、それだけ当該債券の価格が米国債の価格に近いことを意味しています。いかに当時、これらの(ジャンク債を含むすべての)債券が高値で売れていたのか、すなわちそれだけ投資家がリスクを取れるほどにカネ余りな市場環境だったのかが窺えるわけです。そのあたりからこの時期―――2014年の6月から7月にかけてが債券バブルのピークだったと振り返ることができるでしょう。
逆に、上記10年間でスプレッドががもっとも大きかったのが2008年12月頃。上記ジャンク級では一時、40%台半ばを付けています。同年9月の「リーマン・ショック」直後の金融危機で信用度の低いこれら債券の価格暴落が起こっていた様子がしのばれます。で、そのままいけば債券発行企業は軒並み破綻、金融機関は巨大債務超過に陥って経済・金融恐慌・・・となる寸前の同年11月、当時のバーナンキ前FRB議長によって開始されたのがQE第一弾。これが超低金利マネーのマーケットへの大量供給を促すことでスプレッド縮小に大いに寄与するかたちになりました・・・
で、そのスプレッドですが・・・上述、最少となった2014年半ばを境に、少しずつ広がり続け、昨年の秋以降は急拡大して現在(1月下旬)は、この5年間ではもっとも大きくなっています・・・