世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【米には無理?でも日本には可能な「インフラ再生」】日本企業の「キャッシュリッチ」ぶりに思うこと⑦

2016-12-09 00:02:38 | 日本

前回からの続き)

 本稿の最後に、前述した内容に関連して「需要不足」(デフレギャップ)について思うところを追記します。

 日銀のテーパリング(「異次元緩和」縮小)有無にかかわらず、世界経済情勢の変化によって今後は円高外貨安となる可能性が高いでしょう。そうなれば先に書いたとおり、エネルギーコスト等が下がって、わが国の家計の可処分所得は増加すると思われます。不可避の生活費以外に自分の意志で使えるおカネが殖える―――そのこと自体は国民にとってありがたいことに違いはないでしょう。

 ただし・・・これが必ずしも消費の大幅な増加をもたらすわけではありません、おそらく。というのも日本国民の多くは、電気代や小麦粉の価格が安くなって浮いた手元資金のかなりの部分を消費ではなく貯蓄に回すと考えられるため。となれば、わが国の統計上の「個人消費」は増えるどころか円高デフレの分だけ、むしろ減るようなこともあり得るかもしれない。「なんだ、結局、おカネは消費されないで預貯金に回るばかりではないか」―――そのとおり、このままでは日本国の需要不足はなかなか解消されません・・・

 ・・・が、正しくいうと、これら貯蓄は「タンス預金」(死に金:日銀「マイナス金利」政策の成れの果て?)にならない限り、日本国債への投資すなわち政府事業等に活用される生きたマネーになる(経済学では、貯蓄=投資)。ということは、円高の恩恵で国民の預貯金が増えた分だけ日本政府は自ら需要を創出する力を新たに得ることになります。これを、たとえば・・・道路、橋、下水道といった公共インフラ投資に振り向けてみてはどうでしょう。

 これ、米ドナルド・トランプ次期大統領が実施を公約にしている大規模インフラ整備政策と似ているようで、じつはまったく異なる面があります。アメリカがその必要資金(5千億ドル!?)のほぼ全額を「外国」から借りる以外にない(って、それでも足りそうにないからFRBに紙幣を刷らせるしかない?)のに対し、わが国は外国マネーに頼ることなく「国民」のおカネ(税収、そして預貯金≒国債投資)だけで公共投資を実行できる、ということ。

 もちろん、だからといって、全国津々浦々のインフラを全部改修!みたいな財政の大盤振る舞いはできません。日本経済最大のアキレス腱である長期金利の過度の上昇を招きかねないからです。したがって対象となるプロジェクトは、こちらの記事で書いたようなもの、つまり投じられる費用以上の便益をもたらすと計測されるものに厳格に絞り込まれるべきでしょう。

 これらを前提とした財政出動を追加すれば、老朽インフラの更新が進むうえ、わが国の需要不足は徐々に満たされていくとともに、景気も回復して企業家は投資意欲を呼び起こすから、企業内キャッシュが不必要な規模にまで拡大するようなこともなくなるのではないか―――そう考えています。さらにいえば、暮らしにかかるコスト低下や預貯金の増額によって国民の生活水準もいまよりは改善しますよ、きっと。

 ・・・みたいなことを実現させるためには、やはり何かをあらためないとね・・・(?)

(「日本企業の『キャッシュリッチ』ぶりに思うこと」おわり)

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【円安誘導の幕引きで企業の投資意欲は自ずと回復】日本企業の「キャッシュリッチ」ぶりに思うこと⑥

2016-12-07 00:03:48 | 日本

前回からの続き)

 日本企業に対し、内部留保としてため込んだ巨額のキャッシュ(現金・預金:2015年度で約252兆円)を企業本来の目的である設備投資等に使わせるようにするはどうしたらよいか? その答えは前述したことから自然とこうなる―――アベノミクス」すなわち円安誘導が現出させた経済・為替環境をそれ以前の状態に戻す、すなわち日銀「異次元緩和」のテーパリング(幕引き)に一刻も早く着手する(って、本ブログでたびたび書いていることですが・・・たとえばかつての「ゼロ・インフレ」ベースをめざす、など)。

 その具体的な幕引き方法等は省略しますが、これによって為替は現在よりも間違いなく円高外貨安に振れていくでしょう・・・って実際には、いまの(市場原理に則していないという意味で)不自然で過剰な円安から、実質実効的なレートで見た妥当な為替水準に戻っていく、といった感じです。

 こうなれば、本邦企業の経営者は手持ちのキャッシュを投資に回していくようになるでしょう。なかでも対外投資はけっこう早く回復するかも。円高外貨安の進行で、海外直接投資とか外国企業M&Aのコスパ、そして為替リスクが減じる金融資産投資の予想利回りも高まるからです。いっぽうの国内関連投資も・・・やや時間がかかるかもしれませんが、エネルギーや原材料の円建て費用の下落で国民の可処分所得が増加し、これが各社最大の「商売相手」である個人消費を上向かせていくなかで、緩やかに回復していくのではないでしょうか。

 ・・・といった具合に、アベノミクスの人為的な円安誘導策が解消されれば、企業はキャッシュを自身内部にため込むしかない窮屈なビジネス環境から解放され、本来の企業活動におカネを使うようになるだろうと予想する次第です。ゆえに、安倍政権が熱心に検討している(?)とされる、企業の投資促進を意図した内部留保課税なんて不要ということになります。企業がキャッシュを抱え続けているのは、じつは自分たち(政府・日銀)のせいだった―――自分たちがそれ以外にないような状況に本邦各社を追い込んでいたからだ―――ということに気づくだけでよいのでは・・・?

 それにしても、「何にも使おうとしないなら課税だ!」と脅しをかけて(?)、企業に対して市場原理や株主利益に反するリスキーな(?)投資を強いるあたりも、安倍政権の左翼的な本質が窺えるところだな~なんて感じるわけですが・・・

続く

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【アベノミクスが削いだ企業の新規投資意欲】日本企業の「キャッシュリッチ」ぶりに思うこと⑤

2016-12-05 00:04:03 | 日本

前回からの続き)

 前述の事情などから、本邦法人が内部留保として抱える現金預金は増え続けている―――こうした状況に対し、いまの安倍政権内には不満感がくすぶっているもようです。「企業はキャッシュをため込み過ぎている、これを設備投資や賃上げに使わせるため、内部留保に課税するべきだ」なんて声が今後、政府内で高まりそうだとの観測もあるようで・・・

 しかし・・・企業がキャッシュリッチになった現状を結果としてもたらしたのは、当の安倍政権・・・の経済政策「アベノミクス」(≒円安誘導)だったりするわけです。本稿ですでに綴ってきたとおり、アベノミクスは実態以上の円安外貨高を演出して企業の対外投資意欲を減退させるとともに、この国の経済活動の支柱である個人消費に冷や水をかけるような政策を連発し、企業の国内収益見通しを不透明にしてしまった・・・

 この個人消費に対するアベノミクスのネガティブな作用についてはこちらの記事を含めて本ブログであれこれ書いているとおりです。手短にいえば、アベノミクスは円安誘導の「悪いインフレ」と「消費増税」の「Wパンチ」で、国民の消費力を意図的に大きく削いだ、ということ。それが表れている一例が、こちらの記事等で紹介したアベノミクス後のエネルギー&食料品価格の高騰ぶり。これによって家計の大半は光熱費や食費の急増に苦しみ、娯楽や教養などの他の消費に回すおカネを失ったはず。このあたりはアベノミクス下で減り続ける勤労者の実質所得とか、対照的に急上昇中のエンゲル係数などで誰でも容易に確認できるところです。前回述べたとおり、勤労者の所得は増えていないわけだから、生活費が政策的に引き上げられればこうなるのは必然です・・・(って、それこそが日本を貧富差の大きな国に作り替えようとするアベノミクスの狙いのとおりなのだけれど・・・?)

 こうしてアベノミクスは、その開始からいままで、日本企業にとって内外の新規投資に二の足を踏ませるような経済・為替環境を現出させてきました。となれば各社は、合理的な経営判断の結果として、手元に残った利益をキャッシュで抱えざるを得なくなります。かくして、企業内キャッシュの増加率が下記グラフ(本稿前段でも登場)のとおり、ここ数年で一気に高まったのは、アベノミクスのせいだった、ということになるわけです・・・(?)

 ・・・したがって、本邦企業の経営者にとっては、安倍政権が内部留保への課税みたいなことをほのめかすのならば、それは筋違い、という思いが強いはず。実際、日本商工会議所の三村会頭は9月の会見で、内部留保は新たな設備投資やM&Aに備えた資金で、これへの課税は企業のやる気を失わせ、経済原則に反する、と述べておられます。そのご本心は、だって、アベノミクスだから・・・なのではないでしょうか(?)。

続く

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【消費伸びず、設備投資手控えで、内部留保増加へ】日本企業の「キャッシュリッチ」ぶりに思うこと④

2016-12-03 00:01:05 | 日本

前回からの続き)

 アベノミクス」(≒円安誘導)によって醸成されたいまの不自然な(?)円安環境では国外投資が円建てで過度に割高になるため、結果として日本企業の多くがこれを避け、利益をのキャッシュで保持するようになった―――前回、各社が近年「キャッシュリッチ」(現金預金、2015年度で約252兆円)になってきた背景のひとつをこう綴りました。ここでもうひとつ挙げられるのは今後、諸外国では大規模なリセッションの発生が高い確率で予想されること。各国では人々の不相応な消費を煽った資産・借金バブルが崩壊しつつあるわけです。なのでわたしたちは当面、対外投資に手を出さないほうが無難というものです(?)。

 では、肝心の国内投資のほうは、ですが・・・国外と同様、これまた投資に値する対象を見出すのが難しい・・・(って、国外投資よりはずっとマシだとは思いますが・・・)。その大きな理由は、現在の日本が「需要不足」ということだろうと考えています。これでは本邦企業は収益を増やす見通しが立てられないため、設備投資などは手控えざるを得ない。その結果、企業内に残った利益の大半が現金預金になる、ということに・・・

 で、その需要不足ですが、「個人消費の脆弱さ」と言い換えることができると思っています。こちらの記事等でも書いたように、個人消費こそは、わが国GDPの柱です(GDPの約6割を占める)。よって、これが上向かなければ日本の景気はなかなかよくならないし、企業もおカネを投じて生産ラインを増強しようなどとは思わないでしょう。

 その個人消費の推移を表したものが上記のグラフになります(出典:内閣府)。これを見ると、わが国の個人消費は2000年代に入ってから290兆円あたりで横ばい状態が続いていることが分かります。対前年増減率も各年度ともに±1%前後と大きな変化はありません。直近(2015年度)は約292兆円と、10年前の2005年度とほぼ同じ、という結果になっています・・・

 個人消費の伸び悩み―――このあたりの原因のひとつとして本稿との関連で考えられるのが、勤労者所得の増加が見られないこと。以下のグラフは本邦法人(除く金融機関)の人件費と労働分配率(人件費/付加価値[=人件費+営業純益+支払利息等+租税公課+動産・不動産賃借料])の推移を見たものです(出典:財務省法人企業統計)。まず人件費ですが、上記の個人消費と同じ横ばい傾向。2015年度は約198.5兆円と、2011年度(199.7兆円)をわずかに下回っています。そして労働分配率(企業が生産した付加価値のうち、労働者が賃金等として受け取る比率)のほうは、おおむね70%前後で大きな変動は見られません(好況時は[営業純益増のため]低下、不況時は[同減のため]上昇する傾向がある)。

 ―――といったように、わが国では消費活動の主役である現役勤労者の収入が増えてはいないわけです。これでは当然、個人消費の伸びは期待できないし、企業もそれが分かっているから設備投資を見送るようになって、その結果、余った利益が企業内キャッシュとして貯まり続けることになる・・・

続く

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【外国資産に手出し無用!で、キャッシュリッチに】日本企業の「キャッシュリッチ」ぶりに思うこと③

2016-12-01 00:03:06 | 日本

前回からの続き)

 現在、日本企業が巨額のキャッシュ(現金預金、2015年度で約252兆円!)を抱えている理由は、本ブログでたびたびご紹介している通貨の強さ(実質金利の高さ)を表す不等式「(金>)円>ドル>ユーロ>新興国通貨」で説明がつけられると考えています。端的にいえば、円のキャッシュ以上に利回りを得られる優良な投資対象がなかなか見つからない、ということ。

 ・・・もし自分が本邦事業会社の経営者だとしたら、手持ちの資金をどう活用しようとするでしょうか? 企業家であれば、まずは設備投資を思い浮かべるでしょうが、後述するような事情もあって、いまの日本では魅力ある案件の形成は難しくなっています。では対外投資は?ですが、これは現在、日本国内の投資以上に見当たらない・・・どころか、かえって危険なものばかり(?)。というのは、外貨建てのこれらは為替差損を発生させるリスク、つまり時間の経過とともに円換算の価値がどんどん下がっていくおそれが大きいためです。まさに「円>外貨」が教えるとおり―――この為替リスクを差し引いても円建てでプラスのリターンを生むプロジェクトなんて、いまの世界のどこにあるのですか?―――ということです(って、「金>円」だから、有望な金鉱山開発などはよろしいかも?)。

 上記に関して付け加えると、とりわけ「いま」はマズい―――いまは外国への投資(直接投資ばかりではなく外資買収とか外貨建て金融資産投資など)は慎むべき!―――といえるのではないでしょうか。なぜなら、足元の為替が過度に円安外貨高に振れていて、外国資産が円建てで実態以上に高く評価されているため、ヘタにこれらを入手したら高値掴みになることが目に見えている(?)ためです。

 で、そんな市場環境―――本邦企業家が外国に投資しづらい環境をもたらしたのは、いうまでもなく「アベノミクス」すなわち「円安誘導。その実施部隊である黒田日銀異次元緩和」で円が人為的かつ不健全なかたちで外貨に対して過剰なまでに安くされている様子は、本ブログであれこれ書いているとおりです・・・。なので常々「日本企業よ、アベノミクスに踊らされて(?)、どうかそんな高値掴みはしてくれるなよ~」と祈るような気持ちでいるわけですが・・・

・・・って、それほど心配することなないでしょう(もっとも、一部企業はすでに相当な外貨高レートで外資企業買収等をしてしまったとの印象がぬぐえないが・・・)。その根拠が上に書いた内部留保に占めるキャッシュ額の巨大さです。つまり大半の企業経営者が上記リスクをしっかりと認識し、危険な外国投資等には手を出さず、結果として、いまは現金預金を積むことが得策との経営判断をした、ということなのでしょう。このあたりはこちらの記事に綴った本邦金融機関の投資行動と実質的に同じで、両者ともに賢明だと思います。ようするに、新たな投資機会が来るまで「」で「巣ごもり」・・・

・・・とはいうものの、企業内にこれほど多額のキャッシュが留まったままでは・・・という気がするのもたしかです。これを何か別な、この国の成長に寄与できるかたちで活用できないものか・・・

続く

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