イタリアはともかく、EU圏唯一の勝ち組(?)ドイツ・・・最大の銀行の経営危機が取り沙汰されるくらいに欧州全体の金融不安の根は深い、ということなのでしょう・・・
アメリカのサブプライムローン・バブル期にMBS(Mortgage Backed Securities:住宅ローン担保証券)を不正な手段で売ったとして米司法省から140億ドルもの巨大制裁金の支払いを求められているドイツ銀行の株価が低い水準で乱高下しています。一時は10ユーロ台と上場最安値を記録した同行の株価ですが、同金額が50億ドルほどに減額されそうだとの報道を受けて下げ止まり、現在(10/6)では12ユーロくらいにまで戻ってきました。それでも時価総額は167億ユーロ程度と、今年第2四半期(6/30)時点における同行の総資産額約1.8兆ユーロ(株主持ち分約620億ユーロ)などからみて、市場が同行の現状に根強い不安感を抱いている様子が窺えます。
で、このたびの制裁金ですが、まだはっきりとはしないものの、結局はかなり減らされるだろうと予想しています。本件に関与した他の銀行に対する最終的な和解額も減額されているからです。実際、米銀シティグループは当初120億ドルを請求されましたが、結果としては70億ドルの支払いで済んでいます。なので米当局としては、他社との扱いの公平性を保つ意味でも、ドイツ銀と減額交渉する(しかない)でしょう(?)。
とはいえ、ドイツ銀の支払負担が巨額になる事態は避けられそうもない感じです。同行はこの大金をどのように工面するのか、が市場の最大関心事であるわけですが・・・
・・・当のドイツ銀行は、増資の計画はない、なんて強気の構え(?)をみせているようですが、何とも心もとない気がします。もし手持ち資金以上の支払いを強いられた場合、まずは自分でおカネを集めなくてはなりませんが、上記のようにバランスシートの信ぴょう性が疑わしい(?)この銀行に投資しようというマネーが合計で数十億ドルも集まるかどうか・・・
そこで当然のように考えられる手が同行に対するドイツ政府による公的支援です。ところが・・・これまたすんなりいきそうもありません。その理由ですが、第一にこれが政治的に有権者の猛反発を招く策だということ。どの国でもそうですが、不祥事を起こした銀行の資金繰りを支えるために血税を投入することに対する納税者の理解を得るのは難しく、ただでさえ支持率の下がっているメルケル現政権としては正直、やりたくないところでしょう。
第二に、「ベイルイン」(bail-in)すなわち当該行の株主や債権者らに何らかの損失負担をさせることなく公金を注入することはいまのEUの共通ルールに反すること。これは全EU参加国とりわけその盟主ドイツとしては絶対に(?)順守しなければならない取り決めです。もしこれを自ら破ったら、こちらの記事に書いたイタリアやスペインといった他の国々が、ドイツもやったのだから、と雪崩を打って自国の銀行(の経営者、株主、債権者、預金者等の)救済に財政資金を大盤振る舞いしてしまうから。そうなれば最終的に「欧州安定メカニズム」のマネーは底をつき、欧州の金融システムひいては通貨ユーロの信認は崩壊しかねない・・・
・・・かくしてドイツ政府・メルケル政権は表向き、苦境にあるドイツ銀行を突き放すような態度を取り続けることに・・・って、水面下では後述するような策を練っているようですが・・・