なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「東北抗酸菌研究会」

2018年07月02日 | Weblog

 先週の土曜日は「東北抗酸菌研究会」に出てきた。非結核性抗酸菌症の話が聴きたかった。

 結核病棟を持つ病院の先生から、結核治療の現状、特に高齢者結核の現状についての報告があった。80歳以上が半数を占めて、死亡率は34.4%(1/3)になる。ほとんど寝たきり状態で栄養状態の悪い患者さんが多い。そもそも経口摂取できないため、治療もできないそうだ。治療は4剤治療では副作用で中断してしまうため、3剤(HRE)で治療しているが、それでも副作用が多い(皮疹・発熱・食欲低下・肝障害)。INH・RFPを軸としながらも多彩な治療薬の組み合わせ・投与量投与方法の調整で対処している。点滴注射で治療する場合は、INH・SM・LVFXになるが、そもそもラインがとれないこともある。

 高齢者結核の治療の大変さが伝わってきた。会に先立って、秋田県では結核治療はモデル病床(専門病院がそれぞれ1~2床の結核病床を持って治療に当たり、いわゆる結核専門の病院は置かない)で行うようになったそうだ(渡辺彰先生の話)。 

 

 「非結核性抗酸菌症の最新知見」 新潟大学呼吸器・感染症内科 菊池利明先生

 非結核性抗酸菌(NTM)は188種類以上ある。ヒト-ヒト感染はしない。主なNTMはMACだが、aviumは西日本に、intracellulareは東日本に多い。マイコバクテリア科は5つの属に再分類された。結核菌群はM.tuberuculosis単一種になった。

 MAC症 

 キャピリアMAC抗体は、0.7U/mlをカットオフ値にすると、最初のKatadaの論文で感度84%・特異度100%、その後の14報のまとめでは感度70%・特異度91%。抗体価は病勢を反映する。

 MAC症の治療は、CAM(C)・EB(E)・RFP(R)で必要に応じてSM(またはKM)を追加する。菌陰性化はSM追加で71%、CERのみde51%。治療期間は菌陰性化後約2年間。英国ガイドラインでは治療期間は菌陰性化後最低1年間(以前は2年としていた)。ATSも1年間としている。

 MAC症の2タイプ。結節・気管支拡張型は、喫煙歴のない中年女性で、病変は中葉舌区、緩徐に進行。線維空洞型は、喫煙歴のある中高年男性で、上葉に大きな結節影と内部の空洞、1~2年で急速に進行する。

 結節・気管支拡張型の間欠療法の可能性。連日投与は46%が副作用で治療を変更する、週3回間欠投与は21%で治療を変更する。菌陰性化は前者で76%後者で67%と統計的には差がない。間欠投与ではEBの副作用が特に少ない。間欠でダメな時は、連日に変更すると30%菌陰性化する(最初間欠で開始して、ダメな時に連日への変更が可能かと)。

 RFPが入るとCAMの血中濃度が低下する。最低限CAM+EBでいいのではないか。むしろ菌陰性化はCAM+EBで83%、CAM+EB+RFP75%と前者の方がよい。

 MAC症に対するエリスロマイシン(EM)少量療法。無治療よりは悪化しない。EM投与でCAM耐性化はない。

 M、intracellulareaviumより病勢が強い(予後が悪い)。予後の悪いM.chimaeraintracellulareと判定されている可能性がある。MAC症には11菌種が含まれるが、chimaeraintracellulareと近縁。

 M.lentiflavumはコバスTaq Man MAIでintracellulareとされたが質量分析では分けられる。

 M、Kansasii

 NTMの4%。INH+RFP+EBを投与。菌陰性化から1年で治癒可能。50歳代喫煙男性で肺尖から上肺部の薄壁空洞。

 M.abscessus

 最も難治なNTM症。信頼できる抗菌治療はない。亜種はDDH法で判別不能。M.m.abscessus(陰性化率が比較的低い)とM.a.massilience(陰性化率が比較的高い)。 抗菌薬は、XAM+AMK+IPM/CS数週間からCAM+FRPM+KM(週2階筋注) 

 

この会は第20回になるが、メーカーの支援がなくなり、今回で終了になるそうだ。

コメント (1)
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