・ 壮観な阿波おどりを背景に、母と娘の絆を謳いあげる。
さだまさし原作の映画化3作目の舞台は、長崎ではなく徳島だった。グレープ時代ザ・ピーナッツの前座で全国を巡業中、ケーブルカーで眉山に登った印象が深く彼の創作意欲を掻き立てたという。
東京で旅行代理店のキャリアウーマンとして働いている咲子(松島奈々子)。徳島で独り暮らしをしている母・龍子(宮本信子)が入院しているという知らせを受け、久しぶりに帰郷する。医師からは末期ガンであることを宣告され途方に暮れる。
物語は母から亡くなったという咲子の父と若かった母・龍子との秘められた恋に辿りついて行く。
最大の見所は、12000人のエキストラを動員した徳島名物<阿波おどり>。地方の文化には独特の祭りが多いが夏は東北と並んで四国が知られ、阿波おどりもそのひとつ。優雅な女踊りと少し滑稽な
男踊りが連をなして壮観だ。
犬童一心監督はCM出身らしく、美しいなだらかな眉山やダイナミックな阿波踊り風景を背景に、母と娘の心情を描写している。
神田のお龍こと龍子役の宮本信子が適役だ。伊丹作品以来ご無沙汰だった映画出演は10年振りという。粋な着物の着こなし、人形浄瑠璃での節回し、気に入らない客を啖呵で追い出すなど得意なシーンが盛り沢山。
松島奈々子も微妙な年頃の30代を迎え頑張ったが、映画のフレームには不向きな体型なのか?共演の恋人役大沢たかおとともに、涙を誘う予定調和の脚本では力の発揮どころが限られてしまった。
ほかには、今は亡き脇役の夏八木勲・山田辰夫のさり気ない演技が見られたのが得した気分にさせられた。
献体という制度を再認識させられたのもこの作品の特徴だが、徳島観光PR映画の域を超えることはできなかった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます