晴れ、ときどき映画三昧

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「シェイプ・オブ・ウォーター」(17・米 )60点

2018-03-11 16:58:18 | 2016~(平成28~)

・ 第90回オスカー作品賞は、時流に乗ったサブ・カルチャー版「美女と野獣」。




サブ・カルチャーの奇才ギレルモ・デル・トロが製作・監督・脚本を手掛けた第74回ベネチア金獅子賞作品のファンタジー・ラブストーリーが、第90回オスカー作品・監督賞など4部門を受賞した。

62年冷戦下の米国・ボルチモアにある極秘研究所に不思議な生き物(半魚人)が運ばれてくる。幼いころ声を失ってしまった女性イライザ(サリー・ホーキンス)は半魚人が解剖されるのを知り、何とか海に逃がしてあげたいと行動を起こすうち心を通わせて行く。

種族を超えた者同士が魂を通わせ、かけがえのない存在として愛し合うファンタジー・ラブストーリーといえば「美女と野獣」を思い起こす。

本作は若くて美しいヒロインではなく、言葉というコミュニケ-ション手段を持たないハンデキャッパーで清掃員のイライザで異色のヒロイン。
演じたS・ポッターは失礼ながら決して美人ではないアラフォー女優だが、地味ながら演技派で筆者には「人生は時々晴れ」(02)、「17歳の肖像」(09)、「ブルー・ジャスミン」(13)などで記憶に残る助演女優。
監督は彼女をイメージしてシナリオを書いたという程、心優しいイライザ役にピッタリ。

いきなりスレンダーな裸身を晒しバスタブでの自慰行為から始まるヒロイン像は、<美女と野獣への対抗心>がありありと感じられる。

半魚人は、監督が幼い頃観たアマゾンの秘境で神として崇められていた「アマゾンの半魚人」のキャラクター。スーツアクターを演じたのはダグ・ジョーンズだが、これも<美女と野獣>とは違って王子様の化身ではない。

異色のカップルを暖かく見守るのは隣人の老画家ジャイルズ(リチャード・ジェイキンス)と、清掃員のゼルダ(オクタビア・スペンサー)の二人。ゲイであることを隠しているジャイルズと、黒人なるが故貧しい生活を強いられているゼルダは、何れもマイノリティである。

対して敵役のスクリックランド大佐は、マイノリティを抑圧する横暴な白人で、早く現状から脱出して出世街道を走り続けようとする傲慢な男。
演じたマイケル・シャノンは、やることなすこと憎々し気な60年代の白人男性の象徴的存在で現大統領のイメージと重なってしまうのはうがち過ぎか?愛読書が「パワー・オブ・シンキング」というのも同じ。暮らしを豊かにすることを最優先し、愛車はティールカラー(淡い緑)のキャデラック。

時代を反映したポップスが流れ、青緑と赤をアクセントカラーにした美しい映像が際立ち高次元の演出と卓越した演技でサブカルチャーの存在を主張した怪奇映画へのオマージュともいえる本作。本国ではその暴力とセックス描写がR18以上指定になってしまった。

筆者はオスカーを獲らなかったら映画館へ足を運ばなかっただろうが、再度観る機会があれば新たな発見があるかもしれない。




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