・ テレンス・スタンプ主演の異色西部劇。
本場アメリカの西部劇が衰退していた60年代後半、ロナルド・M・コーエン原案・脚本による異色西部劇として登場した本作。
主演は「コレクター」(65)でナイーヴな青年を演じ一斉を風靡したイギリス人俳優テレンス・スタンプ、監督がイタリア系カナダ人シルヴィオ・ナリッツアーノ、音楽がギリシャ人マノス・ハジタキスという国際色豊かな顔ぶれ。
白い肌と青い眼の米国人孤児だったアズール(T・スタンプ)は、メキシコの盗賊オルテガ(リカルド・モンタルバン)に息子同様に育てられた。
独立記念日、オルテガらは国境を越えテキサス開拓民村落を襲うが、オルテガの息子マヌエルが医師モートン(カール・マイデン)の娘ジョアンヌ(ジョアンナ・ペティット)に暴行をしようとするのを観たアズールは思わずマヌエルを射殺する。
負傷したアズールはモートン親子に手当をされ、閉ざされていた心を徐々に開き農民として生きる決心をする。
イタリアン・ウェスタンのような風合いでスタートした本作だが、敵役であるはずのオルテガが盗賊でありながら首領としての度量と愛情を兼ね備えた存在感があり、魅力的に描かれている。
演じたR・モンタルバンの貫録が、モートン医師役のカール・マイデン共々ドラマに重みを持たせてくれる。
ヒロイン・ジョアンヌを演じたジョアンナ・ペティットは同じ開拓民の若者ジェス(アンソニー・コステロ)の想いを知りながらブルーに一目惚れする芯の強い女性を好演しているが、なんとなく身勝手に見えてしまうのが難点。
河を挟んでのテキサス開拓民VSメキシコ盗賊の争いがハイライトだが、アズールことブルーの特殊な生い立ちに苦悩する姿を通して開拓民とメキシコ人の狭間で揺れる心情が描かれ、一風変わった西部劇となった。
アクションシーンは「ベンハー」のヤキマ・カナットが担当している。葦原での馬の疾走シーンや西部劇には珍しい空撮による俯瞰のショットが迫力満点。
原題「ブルー」が示すように良くも悪くもT・スタンプの魅力に委ねた作品で、育ての親に刃向うブルーの複雑な心境にどう決着するか?というエンディングは、正統派西部劇とは違った趣きで彼の個性に見合ったものだった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます