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「遠すぎた橋」(77 英・米) 80点

2015-07-31 17:18:24 | 外国映画 1960~79
 ・ <マーケット・ガーデン作戦>を検証した最後のオールスター大作。

                   

 「史上最大の作戦」の作者コーネリアス・ライアンの「遥かなる橋」を基にリチャード・アッテンボロー監督、ウィリアム・ゴールドマン脚本で映画化。

 44年9月、潰走するドイツ軍を追った英国モンゴメリー元帥率いる北方連合軍の<マーケット・ガーデン作戦>を描いた14大スターが出演した最後のオールスター映画で、2700万ドルの製作費を掛けた175分の大作。

 <マーケット・ガーデン作戦>とは、ベルギー・オランダ間の5つの橋を占領するために、4個の空挺師団・旅団(英第1・米82・米101・ポーランド第1)が敵中に降下する<マーケット>作戦と機甲軍団(英30)が駆け抜ける<ガーデン>作戦で、一気にライン川を渡ってオランダを解放、ベルリン侵攻してクリスマスまでに終戦しようというもの。

 マーケット作戦司令官はブラウニング中将(ダーク・ボガート)、ガーデン作戦司令官にはホロックス中将(エドワード・フォックス)が就いた。事前にオランダ・レジスタンスや偵察隊からドイツ軍の戦車が残っている情報が入っていたが、ブラウニングは軽視。アーカート少将(ショーン・コネリー)、ポーランドのソサボフスキー少将(ジーン・ハックマン)が難色を示すが、作戦は執行される。

 空挺部隊が予定通り5つの橋を占拠できるか?重装備の地上部隊が間に合うか?が充分論議されないまま作戦に酔ってしまった上層部の甘さが、9日間で連合軍側の戦死・戦傷・行方不明者を17千人以上出すという、悲惨な結果となった。

 英国ではこの作戦について語ることは英雄モンゴメリー元帥を傷つけることになりタブーと言われていた。30年以上経ったとはいえ英国人であるR・アッテンボローがここまで表現した勇気は讃えられるもの。

 史実をもとにエピソードを交えながら脚色したというストーリーは、連合軍個々の兵士やオランダ民間人、そして独軍の視点でも描かれていて臨場感溢れる作り。

 圧巻のパラシュート降下シーン、迫力ある戦闘シーンも感心させられるが、何より必要以上にグロテスクな描写が強調されていないところに好感を持った。

 難点は様々な場所で同時並行的に起こる出来事に、基本的なこと(誰が何処で何をしようとしているのか)が判らないと置いてきぼりを食らってしまうこと。大河ドラマのように地図やクレジットが入っていればいいのにと想うのは筆者だけだろうか?
 
 5つの橋のうちアンヘルム橋とナイメーヘン橋での攻防がハイライト。

 アンヘルム橋ではアーカート隊長が降下したのが橋から13キロ離れた場所に降下、橋を攻撃するフロスト中佐(アンソニー・ホプキンス)が、独軍ビートリッヒ中将(マクシミリアン・シェル)率いるSS装甲師団長と激戦。合流予定のソサボフスキーが輸送機不足で間に合わず、ビートリッヒは孤立してしまう。

 ナイメーヘン橋は中央高地に降下した米軍キャビン准将(ライアン・オニール)が命知らずのクック少佐(ロバート・レッドフォード)に奪還を命令。手漕ぎボートで渡河するという離れ業を見せる。出番は少ないが伝説的英雄となったクックを演じるのはレッドフォード以外見当たらない。230万ドルのギャランティには驚かされたが・・・。

 ほかにも地上軍のバンドール中佐を演じたマイケル・ケインの凛々しさが目についたが、霧で出発が遅れ、おまけに長い1本道を駆け抜けるには障害が多すぎた。

 イギリス勢の苦戦ぶりとは対照的に、クック少佐の大活躍・爆破されたソン橋を仮設架橋で渡河したスタウト大佐(エリオット・グールド)・上司を敵中から救い命を取り留めたドーハン軍曹(ジェームズ・カーン)と軍医大佐(アーサー・ヒル)の美談など、米軍空挺団の活躍ぶりが目立つ。

 激戦地アンヘルムでのスパイダー医師(ローレンス・オリヴィエ)、野戦病院として自宅を解放したホルスト夫人(リヴ・ウルマン)の関わりが描かれるが民間人の犠牲者も決して少なくない。

 司令部が作戦失敗を認め撤退命令を出すのが遅かった。それでもブラウニング司令官は命辛々帰隊したアーカートへ「作戦は90%成功した。ただ遠すぎた橋へ行っただけ」というコメントが虚しく響いた。

 家を焼かれた手押し車で家財道具を載せて歩くアンヘルムの人々の姿がこの作戦を象徴しているようだ。
 
 


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