晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「風にそよぐ草」(09・仏) 70点

2015-08-02 15:19:02 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ 観るたびに巨匠A・レネのシュールな表現、遊び心に惹かれる。

                   

 昨年3月、91歳で亡くなったフランスの巨匠アラン・レネ。本作は86歳のときで、クリスチャン・ガイイの原作を映画化した大人のラブ・コメディ?

 若いころの「夜と霧」(55)、「二十四時間の情事」(59)、「去年マリエンバードで」(61)などと比べると肩の力が抜け、遊戯的小説といわれるガイイの世界を借りながら彼独自の映像世界を作るエネルギーに感動する。

 欲しくもなかった靴を衝動的に買ったマルグリット。突然スケボーの少年からバックをひったくられてしまう。

 同じ日、ショッピングセンターで時計の電池を交換したジョルジュ。駐車場で赤い財布を拾う。中にはパイロット免許証があってマルグリットという名前だった。

 普通なら警察に届けるが、どうやらジョルジュはマルグリットに興味を持ったらしい。

 エドゥアール・バールのナレーションで始まったこのドラマは、マルグリットの足元からテンポよく始まり、赤毛の後ろ姿や赤い靴と黄色いバッグが印象的で、彼女が帰宅して風呂に浸かるまで顔が映らない。台詞もなく彼女の想いは全てナレーションなのも不思議な感覚だ。

 一方ジョルジュの妄想も全てナレーションだが、男はどうやら犯罪歴があって選挙権がなく、若い妻・スザンヌに養ってもらっているらしい。その妻の勧めもあって警察に届けることに・・・。

 サスペンスのような筋書きだが、どうやら熟年のシュールな恋愛劇らしい。しかも男は妻子持ちで、拾った財布がキッカケでストーカーと化してしまう危ない展開。

 原題は「狂った草」で、レネ曰く恋愛は<アスファルトや石壁の裂け目から目を出す草のよう>で、些細なことで狂いだす不条理なものという。

 男は女の家に電話してお礼以外のものを期待するが、何で?と言われ自尊心を傷つけられ、ストーカーとなり家の郵便受けに手紙を入れたり、車のタイヤに傷つけたり存在を主張する。

 たまらず女は警察に注意して欲しいと依頼して、一件落着。音沙汰が無くなると女は男の存在が気になってくる。

 こういうことは男女でなくても人間関係には有り勝ちで、まして恋愛感情では真髄をついている。マレの瑞々しい感性はまだまだ健在だ。

 アゼマを演じたのは実生活でもパートナーであるサビーヌ・アゼマ。とても還暦とは思えない。

 ジョルジュに扮したのはアンドレ・デュソリエでレネ作品ではおなじみ。年齢や社会的通念を乗り越えた熟年男の恋愛感情を見事に演じていた。

 若い妻のスザンヌにはアンヌ・コンシニ。何か親子ではと思わせるほど年の差を感じるし、嫉妬心がないようで、もしかするとジョルジュの妄想世界にいる妻では?そうすると家族での食事はジョルジュの幻想??

 ほかにもサビーヌの親友ジョゼファにエマニュエル・ドゥヴォス、警官にマチュー・アマリックが扮していてなかなか豪華。

 色彩とカメラワークでシーン毎に雰囲気が変わるレネの映像に、筆者もまるで大空へ飛び立ってしまいそうな錯覚に陥る。

 調布で事故があったばかりで、高所恐怖症の筆者にはこの映画だけで充分だ!

 


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