晴れ、ときどき映画三昧

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「夜明けの祈り」(16・仏/ポーランド)70点

2018-01-20 15:31:46 | 2016~(平成28~)

・ 歴史に埋もれた事実をもとに、命の大切さを問う衝撃作。



第二次大戦直後のポーランドで、悲劇的な事件に巻き込まれた修道女たちと、それを救うために尽力した若きフランス人医師との交流を描いたヒューマン・ストーリー。

モデルとなった仏人ドクターであるマドリーヌ・ポーリアックの甥フィリップ・メニヤルの原案をもとに「ココ・アヴァン・シャネル」(09)のアンヌ・フォンテーヌが監督。主演のマチルドにはルー・ドゥ・ラージュが扮している。

ナチス・ドイツ軍撤退後、ポーランドを占領しようとするソ連軍と戦うポーランド兵を手当する赤十字の女医マチルド。彼女のもとに修道院のシスターが救助を求めた。
一度は断ったマチルドが雪の中で祈るシスターに心を奪われ、修道院を訪れると衝撃的な事実を目にする。
それはソ連兵の蛮行により身ごもった修道女が臨月で苦しんでいた・・・。

清貧な修道女たちの佇まいや雪景色の風景から始まるドラマは、歴史に埋もれた戦時中の性暴力への強烈な批判であると同時に、信仰とは?を改めて問いかけるテーマが潜んでいる。

無神論者のマチルドは、医師として命の尊さを最優先するため助産婦と専門医を呼ぶことを院長マザー・オレスカ(アガタ・クレシャ)に訴えるが、修道院の閉鎖と世間へ恥をさらすことを理由に拒否される。

絶望したあまり命を絶ったり、自分を庇ってくれたソ連兵を慕い修道院を去ったり、赤ん坊を観て母性に目覚めたり、身ごもった7人の修道女たち。
彼女たちを気遣って、救いたい思いと篤い信仰心との狭間に悩むシスター・マリア(アガタ・プセク)もいるが、頑なな院長の信念に阻まれる。

<信仰とは24時間の疑問と1分の希望>に生きる彼女たちの運命にマチルドを演じたL・D・ラージュの毅然とした眼差しから、困難に立ち向かいながら人間の尊厳を守ろうとするひた向きさが窺える。

相棒で恋人的存在のユダヤ人医師サミュエル(ヴァンサン・マケーニュ)のサポートもあり、危険を顧みず孤立した彼女たちへ支援の手を差し伸べる姿は、リアル感を超越した美しさを感じる。

子供たちが戯れる修道院に明るい光が差し込むエピローグを含め、事実はこうあって欲しいと願う監督を始めとする製作陣の明確な意思が感じられる作品だ。







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