晴れ、ときどき映画三昧

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「アメリカの友人」(77・西独/仏) 80点

2019-06-06 12:01:17 | 外国映画 1960~79


・ ヴィム・ヴェンダースの長編7作目は犯罪ロード・ムービー。


パトリシア・ハイスミスのトム・リプリーシリーズの3作目「リプリーのゲーム」をヴィム・ヴェンダース監督が脚色した犯罪ロード・ムービー。今年亡くなったドイツの名優ブルーノ・ガンツとアメリカの個性派俳優デニス・ホッパーの共演で、哀愁たっぷりに描かれた二人の奇妙な友情の物語。

米国人詐欺師トム・リプリー(D・ホッパー)は、死んだはずの画家の贋作で儲けている。ハンブルグの競売場で額縁職人ヨナタン(B・ガンツ)に色使いが怪しいと見抜かれる。
白血病で死の不安を抱えるヨナタン。彼を殺人に巻き込み完全犯罪を目論むトムとの危険な絡みは、孤独な寂寥感漂う奇妙な友情の誕生となる。

灰色の空・セピア色のハンブルグの街並みと赤いワーゲンや黄色のレインコートが色鮮やかな映像は、主人公ヨナタンの不安な心のうちを表しているようだ。

パリでマフィアを殺すため身代わりを探す一匹狼の殺し屋ミノ(ジェラール・ブラン)に借りのあるリプリーは、パリの血液学の権威の診断と25万ドルの報酬を餌にヨナタンを仲介する。

NY・ハンブルグ・パリ・ミュンヘンを舞台に繰り広げられるクライム・サスペンスは、平穏な日々が欲しいリプリーと余命短いヨナタンの手に入れたいものが思うに任せない二人の焦燥感が混ざり合った奇妙な友情へと繋がって行く。

カウボーイ・ハットで欧米を駆け巡る自由奔放なリプリーは孤独で人恋しさを秘めている。リプリーは妻と息子と暮らす平穏な日々だが死の恐怖を秘めハンブルグにいる。人間は無いものねだりをする生きものらしい。

贋作の老画家ボガッシュも自分の色使いをしてみたかったに違いない。

ボガッシュを演じたニコラス・レイ、マフィアのボスにサミュエル・フラー、標的の殺し屋イクラハムにダニエル・シュミットなど大御所監督が俳優として出演しているのも見逃せない貴重な作品でもある。

パリのエスカレータでの殺人シーンやミュンヘンの特急列車での格闘など、そのカットだけで絵になるシーンは若かりし頃のヴェンダースならではの狂気と不安な男の世界を想わせてくれる。

多少独りよがりな面も垣間見られるが、終盤美しい海辺で繰り広げられるやりとりは、ヨナタンの妻マリアンネ(リザ・クロイツァー)の登場とともに二人の友情の終焉を告げている。ロード・ムービー作家として定評あるヴェンダース好きには必見の作。





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