・心理学を取り入れたヒッチコックのサスペンス・ドラマ。
サスペンスの巨匠・ヒッチコックによる心理学をテーマにした本格的ドラマ。ウィンストン・グラハムの原作を、ジェイ・プレッソン・アレンが脚色した。
赤い色と雷雨を異常に怖がり、無意識に盗みを続けるマーニー(ティッピー・ヘドレン)と、盗癖を承知で結婚し救おうとするマーク(ショーン・コネリー)の葛藤を描いている。
ヒッチコックは「性的フェチズムに興味を惹かれた」という製作意図を語っているが、冒頭マーニーの後ろ姿にその意図が充分感じられる。おまけに黒髪だったマーニーが金髪になるなど、ヒッチの金髪フェチぶりは健在。「鳥」(63)で好演したT・ヘドリンも期待に応え、前半は好調なスタート。とくに誰もいないオフィスでの金庫破りのシーンは圧巻!マーニーと掃除婦をワンフレームで納め、見つかるのでは?という観客の視線を意識したカットは期待充分だった。
ところが、冷淡な母バーニー(ルイーズ・ラサム)との不仲のわけでハナシを引っ張りながら、マークの献身的な愛が中心となり、そこまでやるかというほど不自然な流れについて行けなくなってしまった。そして、衝撃的事実もあまりにストレート。
これがグレース・ケリーの復帰作として用意されたというので納得。このあたりがモデル出身T・ヘドレンの限界だろう。<007>から脱出したかったS・コネリーもあまり活きなかった。マーニーに嫉妬するリル役のダイアン・ベーカーも黒髪に染められ気の毒な役割となってしまった。
お馴染みのスタッフ、ロバート・バークスの撮影、これが最後となったバーナード・ハーマンの音楽、イーデス・ヘッドの衣装も、らしさの片鱗は窺えるが纏まりに欠けてしまった。
本作を機にサスペンスの巨匠としてのヒッチコック作品は下り坂となって行く。筆者のようなヒッチ・ファンにとって残念な映画として記憶に残っている。
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