・ S・マックイーンが最も愛した作品。
プロトタイプのカーレースで最高峰とも呼ばれる「ルマン24時間耐久レース」を舞台にレースの興奮そのものが題材となったセミ・ドキュメンタリー映画。
スティーブ・マックイーンが自身のプロダクションで全精力を降り注いだだけあって、その躍動感を見事に映像化している。
ルマンの映画で思い出すのは「男と女」だが、本作のタッチは「白い恋人たち」を連想させる。
ポルシェのエース・ドライバー、マイク・テラニーに扮したS・マックイーンは、主人公に乗り移ったような誇りと孤独感を魅せとても演技とは思えない。
レース仲間だった故ピエトロ・ベルジェッティのモニク(エルガ・アンデルセン)との交流や、ベテランのヨハン・リッターの最後のレースという伏線はあるが、サルテ地方の一大イベントの臨場感をふんだんに映像化して観客をレース会場にいるかのような雰囲気にさせてくれる。
最大の見せ場はレースそのもので、70年の38回大会に撮影カメラを載せたポルシェ908は大会に参加。カーNO.29は完走ならなかったが9位だったというから驚きだ。
レースファン以外にはその映像の迫力がどのように伝わるか疑問のムキもあるかと思うが、コースオフしたフェラーリNO.7の炎上やポルシェNO.20のクラッシュ・シーンには驚いたことだろう。
逸話も多く、マックイーンの恩師ジョン・スタージェスの途中降板は有名。当然人間ドラマを描くつもりのスタージェスと、レースの魅力を如何に描くかに拘ったマックイーンの衝突は当然の帰結となった。
私生活でも最初の妻ニール・アダムスとの離婚理由となった曰く付きの作品でもある。
本国アメリカでは不入りでスタージェスの「800万ドル賭けたマックイーンの途方も無いジョークかホーム・ムービー」を実証するものとなった。
しかしヨーロッパや日本では大ヒット。ミシェル・ルグランのテーマ音楽とともにラストシーンは映画史に残るとも言われた。マックイーンが最も愛してやまない106分に悔いはないはずだ。
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