・実在のユダヤ系ギャングを、想い入れタップリに演じたW・ベイティ。
ギャング映画の代表作「ゴッド・ファーザー」(72)でコルリオーネ・ファミリーに殺されるモー・グリーンのモデルでもあるバグジーことベンジャミン・シーゲル。バグジーとは害虫・バイ菌の蔑称で、本人はもちろん嫌っていた。映画スター並みの風貌でナルシストだった実在のユダヤ系ギャングを、ウォーレン・ベイティが想い入れタップリに演じている。
監督は「グッドモーニング・ベトナム」(87)、「レイン・マン」(88)、「わが心のボルチモア」(90)と好調なバリー・レヴィンソンで、この頃が絶頂期だった。
NYのユダヤ系ギャングのベン・シーゲルは幼なじみのハリウッド・スター、ジョージ・ラフト(ジョー・マンテーニャ)とともに西海岸へ組織拡大のため乗り込んで行く。アル・カポネの用心棒だったロスのギャング、ミッキー・コーエン(ハーヴェイ・カイテル)と提携し、その荒っぽさで地元のジャック・ドランガ(リチャード・C・サラフィアン)を服従させ地盤を築いて行く。
社交的で女好きは相変わらずで、ハリウッドでは売れない女優ヴァージニア(アネット・ベニング)に一目惚れ、社交界ではフラッソ伯爵夫人(ビビ・ニューワース)とも懇ろになる。ムッソリーニとも親交がある伯爵を通してイタリアに渡ってムッソリーニ暗殺を本気で考え、マイヤー・ランスキー(ベン・キングスレー)に諌められたりする。
終戦直後、ラスベガスの古臭い賭場を手に入れたベンが思いついたのは、カジノ付きの巨大リゾート・ホテルの建造。
ベンがギャング史に名を残したのは、何もない砂漠のラスベガスに巨大ホテルのホテル・フラミンゴを開業したこと。しかし金銭感覚がなく当初100万ドルの予算が6倍に膨れ上がり、採算が取れなくなったため、資金調達した仲間から疑われ組織の幹部会で進退を問われるハメとなり・・・。
ベンはマイヤーに見込まれ殺人会社のヒットマンとしてイタリアン・マフィアのチャーリー・ルチアーノ(ビル・グレアム)を裏切ったハリー(エリオット・グールド)を抹殺する一方で、NYで暮らす妻と娘2人の家族思いでもあった。
そんなアンバランスな魅力を画面に振りまくW・ベイテイが気持ちよさそうに演じている。ヴァージニアを演じたアネット・ベニングは愛人としてホテル建造に関わりながらも200万ドルを隠匿する強かな女を演じている。この共演がもとで、21歳年上のW・ベイテイと結婚し4人の子供までいるオシドリ夫婦となったが、それまでのベイテイの女性遍歴を観ると余程の操縦上手と見える。
脇ではB・キングスレーとH・カイテルが存在感を魅せていた。
この年のオスカー最大の9部門にノミネートされ大本命と言われたが、主要部門は「羊たちの沈黙」に浚われ、美術監督・装置、衣装デザインの3部門のみの受賞となった。
ハリウッドとユダヤ資本の密接な関係は本編でも窺えるが、如何せんベンとヴィクトリアのラブストーリーにシフトした創りは、奥行きに欠けるきらいがあった。
今日のラスベガスの繁栄の祖として名を残したベンの栄光と悲運。陰ではバグジーの仇名で呼ばれたベンをリアルに表現するのを、プロデューサーでもあるベイティが許さなかったのだろう。
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