晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『私が、生きる肌』 85点

2012-06-04 10:59:16 |  (欧州・アジア他) 2010~15

私が、生きる肌

2011年/スペイン

観客を絶えず緊張感と深遠な世界へ誘うアルモドバル

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆85点

「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」「ボルベール(帰郷)」の女性賛歌3部作で知られるスペインの鬼才ペドロ・アルモドバルの最新作。
12年前悲惨な事故がキッカケで妻を亡くした形成外科医・ロベルは、バイオ・テクノロジーを駆使した人工皮膚を開発する。トレドの豪邸である人物を亡妻そっくりに整形し、妻の名であるべラと呼んで自宅に監禁する。
ロベルは使用人3人を解雇して長年仕えていたメイドのマリリアを呼び戻しべラを監視させる。その家に現れたのは銀行強盗で逃れてきたマリリアの息子・セカ。べラはセカとの不倫が原因で逃亡中事故に遭い、顔を損傷しため自殺したハズなのにそっくりな女がいる。
<亡き妻への愛から、猟奇的な行動に出た天才医師の愛のものがたり>を思わせるが、一歩間違えればとんでもない映画になりかねない雰囲気。ところが、ここから不思議な展開を見せ始める。悲劇の主人公ロベルは6年前の娘を思い出していた...。
アルモドバルは10年前フランスの小説家ティエリ・ジョンケの「蜘蛛の微笑」を読んで映画化を想いつき、観客を絶えず緊張感と深遠な世界へと誘う異色の心理劇として大胆に脚色。
いつもながらセット・小物の抜群なセンスは、アンチョン・ゴメスの美術、情熱的な色鮮やかな原色と血の色の赤が強烈な映像はホセ・ルイス・アルカイネの撮影、ラテンの情念を音色に乗せたアルベルト・イグレシアスの音楽など常連がこの官能ミステリーをしっかり支えている。それは<ロベルとベラの心と身体の不一致>というテーマであり、<2組の母と息子の愛>がテーマでもあった。
目を奪われたのは妙にリアリティのあるジャン=ポール・ゴルチエのスキンスーツ。おまけにシャネル、シビラ、シャネル、ディオールなどがフンダンに登場しブランド好きを楽しませてくれる。見逃してはならないのが、<ドルチェ&ガッバーナの花柄ワンピース>で重要な小物となっている。
主演のロベルを演じたアントニオ・バンデラスは「アタメ」以来22年振りのアルモドバル作品登場だが、他の俳優が演じたら失敗しかねない知的な医師でありながら狂気を孕んだ役柄を踏み外すことなくこなしている。
今回のミューズであるべラ役のエレナ・アナヤは、殆どがスキンスーツを身にまとい屈辱と嫌悪が入り混じるなか、<心までは奪えないというヨガのテクニック>を会得しようとする複雑な役柄を好演して期待に応えた。
マリリアを演じたのは「オール・アバウト・マイ・マザー」で大女優を演じたマリサ・パレデス。バイタリティのある母性愛は、サブストーリーをシッカリ支えていて健在ぶりを見せてくれた。



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