・人種差別の根深さが伝わってくる社会派サスペンス。
’64年ミシシッピー州ジュサップ郡で公民権運動家3人が殺害された事件をモデルに、人種差別問題を描いた人間ドラマ。監督はサマザマな子供・若者たちを描いてきたアラン・パーカー。脚本のクリス・ジェロルモは、事件をもとにFBI捜査官2人の軌跡を中心に描くことで、ドラマティックな展開へとアレンジされている。
公民権運動家3人が乗った車はスピード違反の名目でパトカーに追われ、銃殺されてしまう。この街では人種差別が公然と行われていて、FBI捜査に対し街のKKK(白人による支配の復活を掲げた秘密結社>や保安官らによってことごとく妨害されてしまう。KKKは、黒人のみならず黒人に味方する白人を「裏切り者」として最も憎んでいる。南部出身で叩き上げのベテラン捜査官アンダーソン(ジーン・ハックマン)は実情を知っていて適当に切り上げようとするが、東部出身で若手エリートのウォード(ウィレム・デフォー)は理想に燃える情熱家で事件に挑もうとする。その正義感にアンダーソンの心に火がついてくる。しかし捜査官に協力的な態度を見せると容赦なくリンチにあったり、家を焼かれたりする事件が後を絶たない。
捜査官・アンダーソン役のジーン・ハックマンが地道な聴き込みで核心に迫って行く人間味溢れる役を好演している。若き日のウィレム・デフォーやフランシス・マクドーマンドが観られたのも良かった。
本作ではFBIが黒人の殺し屋を雇い陰で糸をひく町長を脅したりするが、事実とは違うとのこと。FBIは公民権運動には非協力的で事件にも消極的だったという。それでは本作が成り立たないので、対照的な2人とそれに関わる街の人々とのドラマになっている。
あくまでも史実とは違うことを観る必要があるとはいえ、’64年6月、全米に起きた<フリーダム・サマー>のキッカケとなったこの事件は、ここで描かれた内容と大差ないことに衝撃を受ける。さらに50年後の現在もKKKの存在があることの驚き。エンタテインメント性のあるドラマながら、人種差別の根深さが伝わってくる社会派の要素を失うことなく仕上がっていて見応えがあった。
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