晴れ、ときどき映画三昧

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「ギャンブラー」(71・米)80点

2018-01-07 10:28:14 | 外国映画 1960~79

・ 開拓期のアメリカを定点で捉えたR・アルトマンの異色ウェスタン。




19世紀末から20世紀へ移ろうとする米国開拓期。ワシントン州のカナダ国境の炭鉱町を舞台に、流れ者の三流ギャンブラーと娼婦が経営する賭博場と売春宿で繰り広げる人間模様を鬼才ロバート・アルトマン監督・脚本で描いた異色ウェスタン。

採掘量も底をつき始めた亜鉛鉱山にある酒場に現れたトランプ賭博師マッケイヴ(ウォーレン・ベイテイ)。鉱夫たちから巻き上げた金をもとに賭博場を建てる。そこへ流れ着いた男勝りの売春婦ミラー(ジュディ・クリスティ)から、売春宿の共同経営を持ち掛けられた・・・。

ベトナム戦争で疲弊した米国で若者達に受け入れられたニューシネマ。戦争回避者をスタッフに起用してバンクーバーで撮影した本作は、ニューシネマを代表する「M★A★S★H」のR・アルトマンと、「俺たちに明日はない」(67)のW・ベイテイがコンビを組み、アメリカの開拓史を定点で捉えた群像劇の趣。

原題は「マッケイヴとミセス・ミラー」が示すとおり、教会とインチキ酒場やほったて小屋が立ち並ぶ寂れた鉱山町を、賑やかな町プレスビテリアン・チャーチへ変遷させた異色カップルとその周辺人物のドラマ。

争いであっけなく殺される男と残された妻(シェリー・デュヴァル)や売春宿に居続けるカウボーイ(キース・キャラダイン)にベトナム戦争の影が見え隠れして、正義の戦いのない現実を思い知らされる。

アイルランドの出稼ぎ鉱夫を目当てに腹黒の酒場を経営していた男がマッケイヴに追いやられ、教会の牧師すら武器で自衛する寂れた町を仕切っていた鉱山会社が乗っ取りに来る。

流れ者が街に定住し、そこで繰り広げられる人間模様は利権争いの場となり、力尽くで勝者が町を仕切ってゆくさまが独特の詩情溢れるタッチで描かれている。

撮影したのは後に暗部を観やすくするフラッシング技法を開発したヴィルモス・ジグモンド。バックに流れるレナード・コーエンの歌声とともに雨や雪景色の風景にとてもマッチしている。

教会が火事になり消化に躍起になる町の人々をよそに、殺し屋3人を相手に決闘するハメになったマッケイヴ。かっこよさはなく、凄腕ガンマンでもなく真のギャンブラーでもない小心者の主人公とアヘンを吸い快楽を委ねる娼婦あがりのヒロインに妙な愛着を感じてしまう。

こんな欠点だらけでヒロイズムを見いだせない二人が主演のドラマにアルトマンの真骨頂が窺える。何か不思議な魅力に惹きつけられる作品だ。














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