晴れ、ときどき映画三昧

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「沈黙 サイレンス」(16・米) 80点

2017-07-08 15:55:06 | 2016~(平成28~)

  ・ M・スコセッシのライフワークともいえる遠藤周作の原作を映画化。

   

 「タクシー ドライバー」(76)、「グッドフェローズ」(90)、「ギャング・オブ・ニューヨーク」(02)の巨匠・マーティン・スコセッシが、遠藤周作の同名小説の映画化を28年ぶりに果たした。

 カトリックの家に生まれ将来司祭になりたかったというスコセッシ。「最後の誘惑」(88)で、キリストが妻子を持つ作品を公開し宗教関係者から酷評を浴びメゲテいたとき、原作の翻訳版を読み大いに触発された。何度も映画化が噂されながら消えていた幻の映画が遂に実現した。

 17世紀・江戸初期にキリシタン弾圧が行われていた時代。ポルトガル宣教師フェレイラ(リーアム・ニーソン)が棄教したという噂を耳にした若い宣教師が、日本に潜入して目にした惨状に価値観を根底から揺さぶられ苦悩する壮大な人間ドラマ。

 主人公ロドリゴに扮したのは「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールド。同僚ガルぺ(アダム・ドライバー)とともに師と仰ぐフェレイラが棄教したことに驚き、真相を確かめたくマカオにいたキチジロー(窪塚洋介)を案内人に未知の土地へ。

 そこには貧しいが敬虔な信徒たちとそれを取り締まる役人たちがいた。踏み絵による調べで、信仰厚い善良な村人が拷問を受け、次々と殺されて行く様子を見せられる。

 スコセッシは圧倒的映像力で若い二人の宣教師が見たキリシタン弾圧の様子を淡々としかも残酷に再現し、殉教による死が如何に惨いものかを捉えてゆく。

 殉教による死を選んだイチゾウ(笈田ヨシ)やモキチ(塚本晋也)に対し、キチジローはユダ的存在でこの物語の狂言廻しの貴重な役割を果たしている。演じた窪塚洋介が人間の弱さと強かさを併せ持つ複雑な役を見事に演じていた。

 もう一人際立っていたのは井上筑後守に扮したイッセー尾形。老獪な気性の持ち主で、合理性と鋭利さを兼ね備えた長崎奉行。禅問答のようなやり取りでロドリゴをねじ伏せる。

 人間の苦しみに沈黙し続ける神に疑問を持つ<宗教と信仰がテーマ>だが、いわゆる宗教映画を一歩抜け出し、人間の弱さや苦悩をどのように受け止めどう対処して生きてゆくかを観客に考えさせられる作品だ。

 



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