晴れ、ときどき映画三昧

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「夕陽の群盗」(72・米)75点

2019-08-21 12:00:26 | 外国映画 1960~79


・ 南北戦争時代、若者たちを非情なタッチで描いたR・バートン監督デビュー作。


「俺たちに明日はない」(67)でニューハリウッド映画の先駆けとなったデヴィッド・ニューマン、ロバート・バートンの共同脚本家が、1930年代から南北戦争時代にトキを移して描いた青春群像西部劇。原題は「BAD COMPANY」(悪い仲間)。のちの「クレイマー クレイマー」(79)でオスカー監督のデビュー作でもある。

主人公は良家育ちのドリュー(バリー・ブラウン)で兵役を逃れミズリーへ旅立つ。途中出会ったのが小悪党のジェイク(ジェフ・ブリッジス)で真面目で世間知らずだったドリューは小悪党集団5人と旅するうち非常な世間を知り、いつしかジェイクとの奇妙な友情が芽生え始める・・・。

少年が未知の世界へ踏み出し非常な現実を思い知らされるストーリーは、同年の「男の出発」と重なるが、本作は「俺たちに明日はない」の悲劇性が伴う。

銃と金、そして悪知恵と力が全てという無法地帯を生き抜くためには、盗みや裏切りは日常茶飯事。若者6人の旅はエピソードを重ねる度に一人減り二人減って結局残ったのはドリューとジェイクの二人だけだった。

R・バートンの演出を支えたのはヴィルモス・ジグモンドと並ぶ70年代を代表する撮影監督のゴードン・ウィリスと音楽のハーヴェイ・スミチッドだ。

中西部カンサスでの荒涼とした秋から冬への寒々しい風景は美しくもあり、厳しさを感じさせる茶色の寒々しい大平原が続く。太陽が差し込む逆行の光と影が美しく、生きて行く厳しさを映し出している。

カリフォルニアを目指し夢破れた中年夫婦は金がなく、妻を少年たちに2ドルで相手をさせる。女性を敬わなくてはいけないと教わったドリューにジェイクは首を傾げるが、「ジェーン・エア」の朗読を聴き納得するところが微笑ましい。

11歳のブークは鶏を盗んだ後、パイを盗もうとして銃殺される。
ビッグ・ジョー(デヴィッド・ハミルトン)一味のような無頼漢に出会い身ぐるみ剥がされ、ローニー(ジョン・サヴェージ)兄弟のように吊るされたり若者たちの末路はあっけなく絶たれてしまう。

そんななかでも若さが唯一の取り柄だった少年たちを観る眼差しには優しさが込められていてた。ベトナム戦争の最中に作られた本作には、閉塞された社会でもわずかな希望を友人との絆に求めようとする若者たちへの思いやりがあったのだろう。

ノスタルジックで軽快なピアノが奏でる音楽が、本当の悪にはなり切れない二人への鎮魂歌のように流れていた。







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