・ J・マンゴールド監督渾身のリメイク西部劇。
グレン・フォード主演「決断の3時10分」(57)を観た「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」(05)のジェームズ・マンゴールド監督がいつかリメイクしたいと願っていた作品で、トム・クルーズ、エリック・バナで企画された。
ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベイルの共演で実現、大ヒットした西部劇。
アリゾナ準州の小さな牧場主が200ドルの報酬で悪名高い強盗団の頭目を刑務所のあるユマ行きのコンテンション駅まで護送しようとする物語。
頭目ベン・ウェイドに扮したのはラッセル・クロウ。「L.A.コンフィデンシャル」(97)で注目され、「インサイダー」(99)、「グラディエーター」(00)、「ビューティフル・マインド」(01)と立て続けに主演しスターとなった彼が無法者を演じるのは単純な勧善懲悪ウェスタンではないことを雰囲気で匂わせる。
早撃ちウェイドと呼ばれる拳銃の名手でありながら教養もあり絵も上手い。おまけに女性にモテ笑うと人なつっこい。オリジナルより複雑な人物設定で、おさないころ親に捨てられ孤児院で育った環境を背にどこか家族愛に飢えている人物像だ。
筆者にとってどちらかというと苦手な演技派スターだが、本作ではまずまずの好感を抱かせる存在感。
対する牧場主ダン・エヴァンスを演じたC・ベイルは、「ダークナイト」三部作(05~12)のバットマン役で象徴されるように本来なら主役のハズが準主演扱いがイメージとしてある。
北軍の名狙撃手でありながら負傷して片足を不虞。街の発展のために不都合な牧草地を排除するため放火で牛を失ってしまう。妻や14歳の息子ウィリアムのためにも牧場再建を誓う。
出会いから道中、そしてコンテンションの街までふたりの距離感がどのように変化していくのか?
21世紀に勧善懲悪=西部劇という単純なストーリーは成立しないが、西部劇ならではのヒューマンな趣きを情感豊かに描写して大ヒットへと導いた監督の手腕を評価したい。
ふたり以外では前半登場したピンカートン探偵社に雇われた老賞金稼ぎバイロンのピーター・フォンダの演技が観られたのはうれしい。銃撃を受け獣医に球を執ってもらいすぐ復帰するなど多少の破綻もあるがドラマに厚みを持たせてくれた。
中盤以降ではベンを狂信的に崇拝する副頭目チャーリーのベン・フォスターが光っていた。二丁拳銃で躊躇なく殺傷し、どこまでもベンを追いかける姿は全てベン命あってのもの。かなり時代と役柄はちがうもののランス・アームストロングの栄光と挫折を描いた「疑惑のチャンピオン」(16)の彼を彷彿とさせる演技だった。
法や道徳・良心も金や暴力に負けてしまうかもしれない現実を、西部劇という世界で突破したかったマンゴールド。四半世紀たった今、西部劇を映画化するのはかなり高いハードルを超えなければならないことを改めて感じた。
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