晴れ、ときどき映画三昧

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「パトリオット・デイ」(16・米) 70点

2017-10-23 15:58:46 | 2016~(平成28~)


・ ボストンマラソン・テロ事件の知られざる事実に基づく、存在感ある俳優たちの群像ドラマ。




13年に発生したボストンマラソン爆破テロ事件をもとにピーター・バーグ監督マーク・ウォルバーグ主演コンビ3回目による犯人逮捕までの102時間を追った実録ドラマ。

まだ記憶も生々しい事件だが、オリジナルキャラクターであるトミー・サンダース巡査部長を主役に据え、捜査関係者・犯人・被害者の市民など多くの人が関わった事件の経緯をリアルに再現したドラマ。

パトリオットデイとはマサチューセッツなど3州が4月の第3月曜日に設定した祝日で、毎年ボストンではマラソン大会が開催される。117回を迎えたこの年も50万人の観衆で賑わい盛大に行われていた。

ゴール付近のボイルストン通りと沿道の店をセットで再現させ、まるで実際の大会を描写したような本物感は見事というほかない。

そのゴール付近で爆発事故が2度起こり会場はパニック状態に。警備していたトミーは何が起こったか訳も分からず会場警備とケガ人介護に奔走する。

徹底したリアリズムは現場の惨状までにおよび、リアルさを追求するあまりグロテスクなシーンも・・・。

47分後にFBIが到着、特別捜査官リック・テローリエ(ケヴィン・ベーコン)は地元警視総監エド・デイヴィス(ジョングッドマン)からバトンタッチ、巨大倉庫に捜査本部を設置、大掛かりで慎重な捜査を開始する。

FBIと地元警察の摩擦はよくあるテーマだが、本作では多少の食い違いはあったものの連携が上手くいって早期犯人逮捕の要因ともなった。

事件は犯人2人の兄弟が、どのように行動するかが観客には予め伝わっていて、一見事件とはかかわりのない人々がどう事件へ結びつくのかが分かるストーリー展開になっている。

捜査班は膨大な監視カメラのチェックや情報聞き込み数万件をどう判断するのか?地道な捜査によって白い帽子と黒い帽子の容疑者が浮かび上がっていく。

事件解決には政府・州・地元の大勢の捜査官、生存者家族、病院スタッフ、市民の協力あってこそという感動的なシーンも満載される。

なかでも8歳の少年の遺体を見張る若い警官のいも言われぬ表情、人質になった中国留学生の勇気ある通報などが印象的。

逃げる犯人と警察との銃撃戦は事実に基づく再現ドラマの典型で、ウォータータウンの老巡査部長ジェフ(J・K・シモンズ)が犯人を取り押さえるシーンはまるで西部劇のよう。

エンディングで本人たちが登場するが、K・ベーコン、J・グッドマン、J・K・シモンズという一見しただけでインパクトある個性派俳優たちの役柄がこの群像ドラマに華を添えてくれる。

徹底したリアリズムとサスペンスフルなアクションが融合するエンタテインメントはカタルシスな感動ドラマとして帰結するが、<語り継ぐのは悲劇ではなく希望>という言葉に集約されるボストン市民の力を強調するあまり、イスラム=悪という単純図式に陥りかねない危うさも感じる。

「シリアでは多くのイスラム教徒が殺されている」という犯人の妻キャサリン(メリッサ・ブノワ)の言葉が素通りしてしまっているのが惜しい。

歴史的事件をドラマ化する難しさを感じる作品でもあった。










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