フリーダム・ライターズ
2007年/アメリカ
H・スワンクの熱意が伝わる熱血教師役
shinakamさん
男性
総合 75点
ストーリー 75点
キャスト 80点
演出 75点
ビジュアル 75点
音楽 75点
実在の教師だったエリン・グルーウェルのベストセラーをヒラリー・スワンクが製作総指揮・主演した学園ドラマ。若き高校教師役が人種の違いや貧困による非行を乗り越え前向きに生きる生徒たちとの交流を描いている。原作は生徒たちの日記から彼らの心の変遷が伝わるオムニバスだが、映画化にあたっては教師の立場から描かれている。リチャード・ラクラヴュネーズの脚本・監督は誠に手堅く、人一倍ドラマチックには描かれていない。このあたりは同じ実話をもとにし高校教師のミッシェル・ファイファー主演・「デンジャラス・マインド」とは大分趣きが違う。
「ボーイズ・ドント・クライ」「ミリオンダラー・ベイビー」と個性的な役で若くして2度オスカーを獲得しているH・スワンク。その後あまり恵まれず中途半端なときこの役が回ってきただけに、本作への思いは並大抵ではない熱意が伝わってくる。
ロス暴動から2年後の’94.ロングビーチの公立校に赴任してきたエリン(H・スワンク)は203教室を担当するが、このクラスは人種毎に固まり荒廃している特殊クラスだった。教科主任マーガレット(イメルダ・スタウントン)の割り切った注告を無視して生徒たちと真っ向で向き合う熱血教師ぶりが始まる。
ラインゲームで互いの憎しみ・苦しみを語り合い互いに理解を深めて行くサマを手始めに、アンネの日記を読ませ死と背中合わせの生徒たちの感想を引き出したり、日記帳に自分の気持ちを書かせたり創意工夫のオンパレード。これが素直に受け止められホロコーストの見学やアンネを匿った女性を学校に呼んで講話を聴くなど実話とは思えぬ好循環を見せる。
私生活では夫スコット(パトリック・デンプシー)の理解が限界を超え、行き過ぎを諫めていた父スチーヴ(スコット・グレン)が協力をするようになり「お前は自慢の娘だ」というまでになる。
キレイごとと出来過ぎの感は否めないが、社会の縮図である203教室に奇跡が起こり大学に進み教師となった生徒が3人も出たと知り、<理想を持って現実を動かすこと>を実践したエリンには拍手を送りたい。
反面、傷口の舐め合いや生徒の私物化では?という疑問も湧いてしまう。
文科省推薦があっても良いほど教育の大切さを謳った作品だったが教育委員会に直訴したり親の意見を説得したり、教科主任の指導を無視して私費で授業したりする熱血ぶりは理想的な教師とはいえないのだろう。筆者の高校時代、担任教師が安保問題を取り上げただけで問題になった体質が今も変わっていないから無理もない。日本での公開は単館でしかも短期間で終了してしまったので、見逃したヒトも多かったのでは?
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