晴れ、ときどき映画三昧

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「私の中のあなた」(09・米) 75点

2014-09-06 17:17:10 | (米国) 2000~09 

 ・ 重いテーマ(医療問題)を、優しく(家族愛)で包み込んだカサヴェテス。

                

 「ジョンQ-最後の決断-」(02)、「きみに読む物語」(04)で医療と家族愛をテーマに語り継いできたニック・カサヴェティス。父ジョンを超えつつあるニックが、ジョディ・ピコーのベスト・セラーをもとにシリアスな家族愛の物語を映画化している。

 ハイスピードカメラでファンタジックなシャボン玉と戯れる少女たちの映像とともに、<わたしは遺伝子操作でつくられた子供。白血病の姉を救うために生まれた。>という冒頭ナレーションがかなり刺激的だ。
 
 姉のドナーとなるために生まれた妹アナ・フィッツジェラルド(アビゲイル・ビレスリン)は臓器提供を拒み、両親を訴訟するというシリアスな内容で、そのまま法廷に持ち込まれ裁判となろうとしている。

 母・サラ(キャメロン・ディアス)の生き甲斐はケイトを死なせないこと。ケイトが不治の病だと知ってから、弁護士を止め献身的に支えてきた。消防士の父・ブライアン(パトリック・リード)はそんな妻や子供たちを温かく見守っている。夫婦の主導権は妻にありそうだ。

 アナの兄・ブライアン(エヴァン・エリクソン)はストレスから失読症に罹り寮生活を余儀なくされていたが、経過も良くなり自宅へ戻っている。アナの訴訟費用は兄の援助で700ドルを用意し、TVCMで勝率91%を誇るという宣伝文句の弁護士、キャンベル・アレクサンダー(アレック・ボールドウィン)に持ち込んでのこと。

 不思議なのは、臓器提供を嫌がっていたアナと姉・ケイト(ソフィア・ヴァシリーヴァ)は仲良しで、アナの行動には何か秘密がありそうだ。

 なりふり構わず頑張る初めての母親役を演じたC・ディアス、幼いながら自分で考え正直に行動する健気なアナを演じたA・ブレスリン、家族想いで丸坊主姿も厭わなかったS・ヴァシリーヴァが、絶妙のバランスでイイ味を醸し出していた。

 控えめだが愛情豊かな父親役のP・リード、同じ病を持つケイトの恋人役・テイラーのトーマス・デッカー、僅か700ドルで訴訟を買って出た弁護士役のA・ボールドウィン、12歳の娘を交通事故で亡くした判事役のジョーン・キューザックなど、訳ありの人々がしっかりと脇を固めている。

 カサヴェテスは、原作とは違うエンディングにするため相当エネルギーを要したという。それは何故だろう?

 ひとつは、当初ダコタ(ケイト)、エル(アナ)・ファニング姉妹の予定だったキャスティングの変更。ケイト役だったダコタが坊主頭になるのを嫌がって拒否したため、「リトル・ミス・サンシャイン」(06)で好演したA・ブレスリンを起用して妹・アナをメインに構成したから。

 もうひとつは、<延命治療や尊厳死の是非>という重いテーマの色合いをかなり薄めていて<亡くなったヒトは家族ひとりひとりの心の中に存在し、家族の絆を深める役割をしている>との想いを伝えたかったから。 
 
 ハリウッド風ながら、随所にユーモアも交えながらのフィッツジェラルド一家のエンディングは、アーロン・ジグマンの音楽、キャブレ・デシャネルの映像と相まって、原作とは違う救われたものとなった。
 

 


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