・自身の子供時代をもとに描いた、ちょっぴりビターなファンタジー。
「カミーユ、恋はふたたび」(12)<未見>で脚本・監督・主演したノエミ・ルボスキーが描いたちょっぴりビターなファンタジーは、自身の体験をもとにした物語。
主人公は9歳の少女カミーユ(リュス・ロドリゲス)でルボフスキーが母親に扮し、父親には「潜水服は蝶の夢を見る」のマチュー・アマルリックが共演している。
カミーユはパリのアパルトマンでママと二人暮らし。ママは精神を病んで情緒不安定で、その言動に振り回されながらも日々を過ごしている。
ある日ママからプレゼントされたのは小さなフクロウだった。なんとマチルドとは会話ができた・・・。
一見メルヘンチックなストーリーだが、とても成り立ちそうもない二人の暮らしぶり。何しろ学校に呼び出された教師との会話で母親失格ぶりを露見し、お店でウェディングドレスを試着し街にでて歩き出す。
離婚した父親は二人を遠くから優しく見守るが、決してそれ以上介入しない。母と娘の絆を描いた監督の自伝的物語なので好意的に描かれているが、筆者には放っておけない環境でもっとアクションを起こすべきだと思わずにいられない。
演じたカメレオン俳優M・アマルリックが普通の父親役を演じたのは長年の友である監督への友情出演だったようだ。
感受性豊かな母と娘は次第に社会に適応できなくなってくるが、その絆は割き難いものがあったのだ。
9歳の少女にとってその境遇は、ミレーの名画<オフィーリア>の夢にうなされ、フクロウとの会話で本心が語られる。
カラフルな衣装で無邪気さと大人びた言動の入り混じったマチルド。演じたロドリゲスの自然な演技はとても映画初出演とは思えない感性の豊かさがあって堂々たる主演ぶり。
母親役を熱演したルボルスキーは自身の母への愛が溢れ渾身の演技。
二人に負けず頑張ったのはふくろうだ。まるでしゃべっているような風貌はビターな物語をメルヘンチックに癒してくれた。
大人になったマチルドは言葉が交わせなくても雨の中で踊ることで母娘であることを再確認でき、オフェーリアからも脱却できた。<明日もこれからも>の原題がぴったりなエンディングだった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます