晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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『さよならをもう一度』 80点

2012-06-24 11:37:13 | 外国映画 1960~79

さよならをもう一度

1961年/アメリカ

中年女性の哀しみをリアルに描いたアメリカ製フランス映画

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆85点

終始自由恋愛と結婚をテーマにした小説を書いたフランソワーズ・サガンの「ブラームスはお好き?」をサミュエル・A・テイラー脚色、アナトール・リトヴァク監督で映画化した米国製ラブ・ストーリー。若いころ観たとき、パリの街角に住んで仕事をする主人公ポーラとロジエが何故英語を話すのだろうか?と不思議に思った作品。
国籍は別にして、イングリッド・バーグマンは自称40歳で美貌の室内装飾家。イヴ・モンタン扮する5年越しの恋人でトラック販売会社の重役・ロジエとは互いに自由を束縛しないという約束。今とは10年ぐらい年齢のギャップのある40代の女性にとって衰え始める美貌は将来の不安を感じ始める時期。そんなとき現れたのが25歳のアメリカ人資産家の息子・フィリップ。職業は弁護士だが、1日をどうやって過ごそうか考えるだけの日々で若い女性には飽き飽きしていた。アンソニー・パーキンスは前年「サイコ」で精神異常の青年役で主演して注目を浴びたが、本来こういう役がぴったりで、ベスト・アクトといってよい。
メインテーマは中年女性の恋の揺らめきだが、若い男との恋は良くも悪くも残酷な状況にいる己に気付かされる。ポーラには百戦錬磨のプレイボーイと世間知らずで一途な若い男との究極の選択しかなかったのだろう。ヒロインの哀しさが車のワイパーでは払いきれない涙に象徴されている。
ブラームスの交響曲3番ヘ長調3楽章がさまざまなアレンジで奏でられ、ディオールのコスチュームに身を包んだバーグマン。体型が変わりつつある中年女性の哀しみがリアルで2人の男が引き立て役として上手く噛み合っていた。



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1 コメント

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Unknown (風早真希)
2023-01-31 11:03:13
このイングリッド・バーグマン、イヴ・モンタン、アンソニー・パーキンスの豪華3大スター競演の映画「さよならをもう一度」は、言うまでもなくフランソワーズ・サガンの名作小説「ブラームスはお好き」の映画化作品で、私の大好きな俳優・トニ・パキことアンソニー・パーキンスが、カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞した作品でもあるのです。

この「さよならをもう一度」には、いろいろな意味のある言葉だと思う。
「さよなら」は人生の中で、幾度も繰り返しあるものだともとれるし、今は「さよなら」をするけれども、いつの日か逢える、逢いたいという哀しい願いを込めた言葉ともとれます。

この映画の原題名「GOOBYE AGAIN」は、「HELLO AGAIN」と同じ意味なのかもしれない。

初めてこの映画を観たのは、もう随分前になりますが、その頃は、私にはまだ出逢いも別れも中途半端でしたが、今では「さよなら」という言葉が「別れ」の意味だけではないことを知るようになりました。

「さよならなんて怖くない」なんて威勢のいいことは、私にはとても言えません。
やはり「さよなら」は哀しいもの。だけど、決してその恋を、その相手を私は忘れようとは思わない。

自分の心の中の部屋へその想いを大切にしまい込んでおき、その部屋へ時々訪れる。
その思い出が、初めは哀しいかもしれないけれども、きっといつか楽しい思い出になるに違いないのです。
新しい部屋が見つかるまでには、かなり時間がかかるけれど------。

ポール(イングリッド・バーグマン)は、もうすぐ四十歳、一度離婚しているが、今は好きな仕事を持ち、経済的にも安定した生活を送っています。

ロジェ(イヴ・モンタン)とは数年来の愛人関係。
ポールは、ロジェを愛しているが、プレイボーイの彼に心寂しい満たされないものを感じている。
彼もそれに気づいてはいるが、どうすることもできない自分を知っている。

そこへ、少年からすぐ大人になった様なフィリップ(アンソニー・パーキンス)が現われます。
彼は一目でポールに夢中になる。ポールは初めは迷惑に感じていたが、彼女の心の寂しさに入り込むようなフィリップからの「ブラームスはお好きですか?」という音楽会への優しい誘いに心が動揺するのです。

とにかく、バーグマンの一つ一つの仕草がとても言葉では言い表せないほど、素敵なのです。
一人暮らしのアパルトマンへ帰る。
ロジェとは今ドアの外で別れたばかり、化粧台の前に座り、髪のほつれ毛をかきあげながら、イヤリングを一つ一つゆっくりとはずしていくシーン。

雨の中、ポールの店の前で彼女を待っているフィリップ、襟を立て、ずぶ濡れのまま立っている彼の姿を見て、思わず抱きしめてしまうシーン。

フィリップと同棲生活に入り、仕事に行かない彼をたしなめると「もう僕が嫌いになったの」とダダをこねる彼を抱き、ボロボロ涙を流すポール。

そんなポールの心の変化を知ったロジェとの言い争いの後、一人車を運転し、涙が出てくるのをぬぐいもせず、車のワイパーを動かし、目にたまった涙と雨とを勘違いする自分に気づき、思わず苦笑するシーン。

母性的な愛情で、フィリップに魅かれるポール。
そのどの行為も四十近い中年女性の心の寂しさ、いじらしさが痛いほど伝わってきます。

大人の、全てをわかりつくした女の魅力は、フランス映画の「夕なぎ」や「離愁」のロミー・シュナイダーにも見られましたが、この映画のバーグマンの美しさは、それに匹敵するものがあり、彼女たちを見ていると、女性にとって歳をとることは魅力を増していくもので、決して恐くはないのだという風に感じさせます。

ロジェは、ポールが離れていき、初めて彼女を愛していることに気づきます。
ポールもフィリップについていけない自分を感じ、ロジェの元へ帰る決心をするのです。

そして、ロジェとポールは結婚し、ポールの「I am old」という言葉に、泣きながら去っていくフィリップ--------。

今日もロジェの帰りを待っているポール。
化粧台の前に座り、コールドクリームを指にとり、顔にゆっくりとぬっていく。
その一つ一つの指の往復が、今まで幾度となく繰り返され、これからも繰り返すであろう、男と女の離れがたい関係のように思えてなりませんでした。
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