晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「タリーと私の秘密の時間」(17・米 )70点

2018-12-26 12:45:42 | 2016~(平成28~)



・ 妊娠・出産・育児を通して、母親への応援歌を描いたJ・ライトマン。

「ヤング≒アダルト」(11)のトリオ、ジェイソン・ライトマン監督・マッケンジー・デイビス脚本・シャーリーズ・セロン主演で、3人の子育てに奮闘する母親と若いナイト・ナニーとの不思議な交流を描いたヒューマン・ストーリー。原題は「タリー」

「JUNO ジュノ」(07)では大人に早くなり過ぎた少女、「ヤング≒アダルト」では大人になり切れない女性を描いてきたJ・ライトマン。

本作では親になったことで大人にならなければならない女性を、妊娠・出産・育児という大変さを通じて独特の切り口で描いている。

これはD・コーディが3人目の子供を産んで体験したことをもとにシナリオを書き下ろしているだけに、子を持つ女性の共感を得られる設定。

コメディタッチという前触れだが、世の男性には辛口過ぎて耳が痛いシーンが盛り沢山だ。

いつも感心するのはS・セロンの役作りのストイックさ。今回は出世作「モンスター」(03)を上回る18キロも増量して、体形の崩れを晒しての熱演は<女版デ・ニーロ・アプローチ>を実践している。

主人公マーロには、オシャマなサラと発達障害のジョナの姉弟がいる。それだけでも大変なのに3人目を妊娠中。夫ドリューは優しいが無関心。

人には頼りたくないといっていたマーロだが、限界となって兄が世話してくれたナイトナニー(夜だけのベビー・シッター)を頼むことに。

現れたのはタリー(マッケンジー・デイビス)という若い女性だった。その完璧な育児ぶりにすっかり心を許したマーロ。

ふたりの絆の深さが異常なのは、タリーがコスプレで夫のベッドルームへ現れるシーンあたりから。

筆者は当初<ローズマリーの赤ちゃん>のようなサスペンスを予感していたが、このシーンから見事に外れたことを認識、<アメリカン・ビューティ>的なブラック・コメディを想定することに。

以後どんどんエスカレートして行き<ファイト・クラブ>化して行く破目に・・・。

S・セロンの大熱演も空回り?と思わせながら、タリーを演じたM・デイビスの不思議な魅力と音楽の絶妙なストーリー・テイリングに目が離せない。

自動車事故で入院したマーロが、全ての疑問を回収して物語は終焉する。

マーロの問題は全て解決していないが、ヘッドフォンでゲームに興じていた夫が、揃ってキッチンで同じ音楽を聴くシーンは平穏な家族への応援歌でもあった。