晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「30年後の同窓会」(17・米 )80点

2018-12-10 12:10:49 | 2016~(平成28~)


・ 中年男3人の再生ロード・ムービー。

「6才のボクが、大人になるまで。」(14 )のリチャード・リンクレイター監督が、ダリル・ポニックの小説「LAST FLAG FLYING」を映画化。

ベトナム戦争の戦友・3人が30年振りに再会、バージニア州ノーフォークからニューハンプシャー州ポーツマスまでアメリカ東部を北上する旅を経て再生する物語。

出演は「フォックス・キャッチャー」(14)のスチーブ・カレルを中心に、「トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男」(15)のブライアン・クランストン、「マトリックス」3部作のローレンス・フィッシュバーンのベテラン俳優たち。3週間のリハーサルを積んで撮影に挑んだ。

再会のキッカケはドク(S・カレル)が、サル(B・クランストン)の経営するバーに現れたこと。
ドクは1年前に妻を亡くし、2日前イラク戦争で亡くした息子の遺体対面に立ち会って欲しいという。

途中立ち寄ったのは教会で、牧師は元戦友のミューラー(L・フィッツバーン)だった。3人は忌まわしい過去を引き摺ってもいた。

哀しみに暮れ塞ぎがちなドク、酒好きでジョークばかりのサル、神に仕え旅に気乗りしなかったミューラー。50代になり境遇も変わった3人の中年男が旅を続けるうち、徐々に打ち解け昔に戻って行く。

原作者で本作の共同脚本を手掛けたD・ポニックの原作に「さらば冬のかもめ」がある。ジャック・ニコルソン主演で映画化されたが、その30年後のイラク戦争の時代の頃である。

息子を故郷へ埋葬したいドクとアーリントンで英雄として扱いたい上官。二人の支援で故郷へ戻ることになり、息子の親友である若い軍曹ワシントン(J・クイントン・ジョンソン)とともに戻る途中のエピソードがハイライト。
テロリストと間違えられたり、アムトラック内での猥談で大笑い、携帯を買って列車に乗り遅れたりする帰路ではすっかり30年前に戻っていた。

シリアスな反戦映画にもなるストーリーを馬鹿話や猥談を交え、ユーモラスな展開にしながら中年男3人の人物像をリアルに浮き彫りにするストーリー展開は流石だ。
なかでも、思い通りの行動で優しさもあるストーリーを動かす役柄のB・クランストンの好演が目立った。

二つの戦争をテーマにしながら戦争シーンは一切なく会話だけでその状況が目に浮かんでくる。忌まわしい過去も戦友の実家を訪ねることでひと区切りがついた。

正義の戦いが欺瞞でありながら愛国心は失わない3人の生きざまがアメリカという国を支えており、若い世代にも脈々と引き継がれて行く姿を息子の遺書が象徴しているようだ。

家族愛・友情・大切な人を失う哀しみについて語りかける本作は、青年期を謳歌したり悩んだりする日常を切り取ってきたリンクレイターが成熟期を迎えた証か。

エンディングに流れるボブ・ディランの「Not Dark Yet」が染み入ってくる。