晴れ、ときどき映画三昧

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「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(17・米)75点

2018-10-02 16:38:37 | 2016~(平成28~)

・ 6歳の少女の視点で米国の歪みを描いた人間ドラマ。




フロリダのディズニー・ワールドの近く安モーテル<マジック・キャッスル>を舞台に、アメリカの格差社会の一例を切り取り6歳の少女の視点で描いた人間ドラマ。

監督・共同脚本はショーン・ベイカー、主人公ムーニーにはブルックリン・キンバリー・プリンス、母親にはブリア・ヴィネイト、優しく見守る管理人ボビーにはウィレム・デフォーが扮しオスカー助演賞にノミネートされた。

夢の国の象徴ディズニー・ワールドの近くで子供たちが遊んでいるのを目撃したのをキッカケに、脚本のクリス・バーゴッチとともに取材を始めたベイカーは、サムプライム・ローンズのため家を失った隠れホームレスの存在を知って本作の映画化構想をしたという。

モーテル<マジック・キャッスル>に住むムーニーは、下の階のスクーティ、隣のブロックに住むジャンシーと遊び仲間。閉鎖したレジャーランド、コンドミニアムの廃墟を遊び場に悪戯し放題。

ムーニーの若い母ヘイリーは定職を持たずその日暮らしだが、娘には人一倍愛情を注いでいる。

こんな二人の日常は、明るい陽射しのフロリダとはウラハラに脆弱な社会環境そのもの。どう見ても破たんが来るのではとハラハラさせられる。

モーテルの管理人ボビーはそんな二人の善き理解者だが、金のためヘイリーがやった行為には手の施しようもなかった。

35ミリフィルム使用のカメラは、ムーニーの視点であるローアングルと大人目線のアングルを駆使して物語を描いている。そのため悲劇がことさら強調されていないが、貧困による負の連鎖は画面から滲み出てくる。

子役たちの自然な演技は「誰も知らない」の是枝作品を思わせる。ベイカー監督は台本と演技を叩き込んでからアドリブを取り入れたという。天才少女の演技や本格的演技は初体験のB・ヴィネイトとともにリアルさが本作を魅力的にしている。

iphoneによる無許可撮影のラストシーンは賛否両論だが、幼いムーニーが成長するためのステップであると想いたい。

ベイカー監督には英国マイク・リー作品のような貧困にメゲズ頑張っている市井の人々を描き続けて欲しいと願っている。