晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「カフェ・ソサエティ」(16・米) 70点

2017-11-12 12:18:42 | 2016~(平成28~)


・ J・アイゼンバーグを得て、ますます健在なW・アレン節。




NY生まれのボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)は、映画界の敏腕エージェントである叔父・フィル(スティーヴ・カレル)を訪ねてハリウッドに現れる。
辛うじて雑用係として雇われたボビーは、秘書のヴォニーことヴェロニカ(クリシチャン・スチュアート)に街を案内してもらううち虜になってしまう。
ジャーナリストの恋人がいるというヴォニーに夢中になったボビーは、自宅でワインを用意して待つが・・・。

ハリウッド嫌いでNY好きのウディ・アレンが、30年代ハリウッド黄金時代とNYの煌びやかな社交界を舞台に、平凡な青年が翻弄されながらも生き抜いていく人生を描いたロマンティック・コメディ。

御年81歳のアレンだが、エネルギッシュな制作意欲は衰えていない。主演はしていないが主人公を演じたJ・アイゼンバーグは彼の分身的存在で、自身はナレーションを務めている。

シニカルな哲学はやや薄まっているが、プロローグでの巧みな展開から軽快なテンポで速射砲のような会話、ボビーの家族が繰り広げるユダヤ人ネタやブラックユーモアは健在だ。

「地獄の黙示録」「ラスト・エンペラー」の撮影監督ビットリオ・ストラーロによる初デジタル映像も必見!

ヒロイン・ヴォニーを演じたC・スチュアートはシャネルのミューズでもあり清楚な前半よりゴージャスなパーティドレスがお似合い。彼女を初めて観たのは「パニック・ルーム」(02)でのジョディ・フォスターの娘役だったが、月日の経つのは速い。

宣伝文句に出てくる二人のヴェロニカでもう一人のヴェロニカとはNYで登場するブレイク・ライブリー。
バツイチだがゴージャスさでは彼女のほうが一枚上。ドラマの惹き立て役で出番が少なく贅沢な使い方だ。

叔父カレルに扮したのはS・カレルだが、ブルース・ウィルスの代役だったとか。コメディアン色を抑え好演したがNYでは添え物扱いだったのが残念。

隠し味的存在のボビーの家族のなかでひと際目立ったのがNYギャングの兄・ベン(コリー・ストール)。
トラブル解決の手法は即物的であっさりコンクリート詰めしてしまうという危ないユーモア。ユダヤ教には来世がないとクリスチャンに改宗し死刑になる、アレンらしいオチがコミカル。

もっぱら「ラ・ラ・ランド」のアレン版との評が多いが、ラスト・シーンは大人のお伽噺として筆者は本作の老練さが好み。