・ A・パチーノ、C・ファレルの競演でCIA諜報員の育成過程が見どころのサスペンス。
「カクテル」(88)、「13デイズ」(00)など手堅い演出に定評があるロジャー・ドナルドソン。最大の売りはアル・パチーノ、コリン・ファレルの競演によるスパイものであること。
MIT(マサチューセッツ工科大)の首席大学生ジェイムズ・クレイトン(C・ファレル)が、CIAのベテラン・リクルーターのバーク・ウォルター(A・パチーノ)にスカウトされ、優秀な企業の誘いを蹴ってCIAの採用試験に応募する。
それは、90年ペルーで石油企業の社員だった父親が飛行機事故で亡くなった訳をバークが仄めかしていたからだった。
CIAの協力でその施設や採用プロセスが明かされるが、映画的にそれほど驚く事実はなく、想定している範囲内。それでも、過酷な訓練の過程が明かされるのは初めてとのことでフィクションといえども興味深い。
ファームと呼ばれる山奥の特別訓練施設では様々な訓練が施されるが、ベテラン教官でもあるバークの手は緩まない。それは本物の諜報員を育成することと、CIAの英雄でもあるNOCに選ばれる試験でもあった。
人を騙す訓練では「女を口説く訓練」もあって、ジェイムズはバーで知り合ったレイラ(ブリジット・モイナハン)を口説くことに成功するが、彼女はCIAの訓練生だった。
さらに「尾行」の訓練では本当に敵の工作員の拉致か惑わされ、拷問まで受ける羽目に陥る。果ては落第させられたと思ったのが、バークのテストでCIAの内勤職員として二重スパイ容疑者の摘発業務を任命される。
その容疑者はレイラだった。どこまでが訓練でどこからが実践なのか分からないまま翻弄されるジェイムズの姿をカメラは追いかけて行く。
C・ファレルはいつもの無精髭でラフなスタイルながら冷徹な人間関係とは無縁な熱い男を体を張って演じていて、ファンの期待を裏切らない。ただ嘗て同じような役を演じたトム・クルーズやブラッド・ピットとは違って、頭脳明晰なエリートには見えない。そこがリアルといえばリアルだが...。
A。パチーノは得体の知れない謎の男を演じたら右にでるものはいないという得意な役柄を楽しそうに演じてC・ファレルを引立てながら、自分の世界は譲らないオーラで最後まで引っ張ってくれる。
ただ、ラストでのアリアでは哀しい窓際サラリーマンを思い出させて期待外れの面も。これは本人よりもシナリオのせいだろう。
2人のキャラクターを最大限生かしたサスペンスはテンポの良い115分で、熱風の残暑を一瞬忘れさせてくれた。