晴れ、ときどき映画三昧

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「草原の野獣」(58・米) 70点

2015-10-12 17:19:00 | 外国映画 1946~59
 ・ 華やかさはないものの、全てに隙がない西部劇。

                 

 フィル・カールソン監督、ヴァン・へフリン主演による西部劇。タブ・ハンター、ジェームズ・ダーレン、エドワード・プラットなど共演者の如何にも地味な俳優たちが、19世紀末のワイオミングを舞台に繰り広げる父と息子の物語。

 大牧場主のリー・ハケット(V・へフリン)は、先住民や侵入者たちを力ずくで追いやり開拓した先駆者としての自負がある。

 時代の変遷とともに法で整備されつつある町でも一目置かれ、不法の銃を所持していても黙認されるほど。

 彼には2人の息子がいて、兄のエド(T・ハンター)は父譲りの銃の腕は立つが粗暴で父親には反抗的。弟のデイヴィ(J・ダーレン)は優しい性格で父と兄の生き方には批判的。

 こんな2人の息子を勇敢な男として育てたいと願うリー。

 昔ながらの価値観を押し付けようとするリーから見ると、乱暴者だがエドが自分の気質を引き継いだ後継者として相応しいと思っていたのが窺える。

 エドが牧童ポールと野生の白馬を巡って争い崖下に転落させても、事故だというエドの言葉を信じて疑わない。ポールが先住民の混血児なのを軽視するような対応に、妹のクリー(キャスリン・グラント)は事実関係を目撃者から聴き保安官に訴えて出る。

 「シェーン」(53)で農夫役を演じたV・へフリン。前年の「決断の3時10分」(57)では貧しい牧場主という地味な脇役のイメージが濃い俳優だが、本作では堂々の主役で存在感を見せてくれている。

 ただ本来なら敵役の悪徳牧場主の役柄は観客の共感は得られず、 本来なら弟デイヴィが保安官とともに法の下に大活躍してもおかしくないのに、単なる傍観者になってしまっている。

 名手フランク・S・ニュージェントの脚本によるストーリーは、落としどころはこれしかないというエンディングに安堵するとともに意外性のある結末を期待していたが、やっぱり!という落胆もあった。

 主題歌も歌った兄エド役のT・ハンターと弟J・ダーレン。その後の活躍を期待したが、代表作には恵まれていないように思える。

 全てに隙がないオーソドックスな西部劇だったという感想。