晴れ、ときどき映画三昧

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「トゥルー・ロマンス」(93・米) 75点

2015-06-25 14:46:11 | (米国) 1980~99 

 ・ T・スコット演出とQ・タランティーノ脚本が融合したバイオレンス&ラブ・ストーリー。
                   

 ふとしたことから知り合ったカップルが、マフィアや警察に追われデトロイトからカリフォルニアまで逃避行するラブ・ストーリー。

 25歳だったクエンティ・タランティーノが芽の出ない自身を投影したような主人公をもとに描いたファンタジーが、5年後トニー・スコット監督で実現した。

 タランティーノの特徴である時系列を交錯させたストーリー展開や強烈なバイオレンス・シーンを、T・スコットが正統なハリウッド・スタイルに整えた感が随所に伺え、熱狂的なタランティーノ・ファンには物足りないかもしれない。

 その分ラブ・ストーリーとして万人に楽しんでもらえる作品に仕上がっている。

 パトリシア・アークエット扮するミューズ・アラバマのナレーション「私の生まれはフロリダ州のタラハッシー・・・。」で始まり、ハンス・ジマーのテーマ曲が流れるストーリーは、テレンス・マリック監督「地獄の逃避行」(73)へのオマージュ作品でもある。

 何しろ豪華キャストなのに驚かされる。

 プレスリーとカンフー映画を愛する主人公クラレンスにはクリスチャン・スレーター。

 その父にデニス・ホッパー、プレスリーの幻影にヴァル・キルマー、アラバマのヒモでもある売人にゲイリー・オールドマン、カリフォルニアに住むクラレンスの友人の同居人にブラッド・ピット、マフィアの殺し屋にクリストファー・ウォーケンなど。

 サミュエル・L・ジャクソンはすぐ殺されるチンピラ役で、うっかりすると見落としてしまいそう。

 売り出し中のB・ピットが後半チョイ役で出たのは、クラレンス役を希望したが既にC・スレイターに決まっていたので、どんな役でもいいからと出演を懇願したというから、納得。

 男尊女卑、人種差別、暴力シーンなどリアリティ皆無のファンタジーだが見どころ満載で、ストーリーは随所にタランティーノの奇才ぶりが窺える。

 主演の2人ではP・アークエットがキュートなコールガールを魅力的に演じている。「冗談でしょ、殺したなんて・・・。なんてロマンチックなの!」のセリフはタランティーノの真骨頂。

 彼女は「エド・ウッド」(94)でJ・デップの恋人役や「6才のボクが、大人になるまで」(14)で母親役を演じて息の長い女優として活躍中なのも嬉しい。
 
 序盤ではG・オールドマンとクラレンスの対決から始まり、D・ホッパーとC・ウォーケンの火花が散りそうな2人芝居が前半のハイライト。

 終盤にはマフィアの手下で大男のJ・ガンドルフィーユがアラバマをいたぶるシーンから、ハリウッド・プロデューサーの用心棒と警察・マフィアの三つ巴の銃撃戦へ至るまで目が離せない。

 着地点はタランティーノのシナリオをスコットが変更したため大分揉めたようだが、C・スレイターの懇願でスコット案で決着した。
 
 タランティーノ監督でB・ピット主演のバッド・エンディングを見てみたかったが、「地獄の逃避行」の後追いをするよりも本作の方が良かったのかも。