死刑台のエレベーター ニュープリント版
1957年/フランス
ヌーべルバーグの先駆者ルイ・マルの代表作
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 70点
キャスト 85点
演出 80点
ビジュアル 85点
音楽 90点
映画史には欠かせない50年代後半から60年代におけるフランスのニューウェーブ、ヌーベル・バーグ。トリュフォーやゴダールと並んでヌーベルバーグの先駆者であるルイ・マルの、デビュー作にして代表作がニュープリントで蘇った。ルイ・マルは若干25歳で、ジャンヌ・モローのアップによる「ジュテーム・・・。」で始まる大人の情愛を描いたクライム・サスペンスを作り上げている。
インドシナ・アルジェリアの独立戦争で政商たちが暗躍する一方、若者たちは希望を失い刹那的に日々を送っていた時代のパリが舞台。政商の社長夫妻とその側近である主人公との不倫関係もクールでドライなタッチ。もうひと組の若者たちもモラルをどこかに置き忘れたような存在である。
サスペンスとして今改めて観ると、欠陥や偶然性が見られるものの、それを乗り越えた大都会に棲むヒトの孤独や閉塞感を描いたスタイリッシュな作品である。
最大の貢献は全編に流れるマイルス・デイヴィス・クインテットのラッシュを観ながらの即興演奏による音楽だろう。若きM・デイヴィスがモダンジャズの帝王としてジャズファンだけでなく多くの人々に愛された要因となっている。なかでもJ・モローが、エレベーターに閉じ込められたモーリス・ロネを捜しながらパリの街をさまようシーンは最大の見どころ。音楽とアンリ・ド・カエの手持ちカメラの映像がぴったりマッチして、このシーンでJ・モローをスターに押し上げたといっても過言ではない。
これを機に立て続けに作品を発表したルイ・マルだが、これ以上の作品は見当たらない。