晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『蜂蜜』 80点

2011-07-16 14:28:24 |  (欧州・アジア他) 2010~15

蜂蜜

2010年/トルコ=ドイツ

健気で直向き、少年の成長ものがたり

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆90点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

トルコの新鋭セミフ・カプランオーレ監督のユスフ3部作の最終章。ユスフとは主人公の名前で第1作が壮年期「卵」(07)、第2作が青年期「ミルク」(08)で、本作がベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞した。もし受賞していなければ注目もされず上映されなかったかも。
霧が立ち込めた深い森にやってきた男。縄を使って高い木に登りだす。どうやら巣箱を置いて蜂蜜を採る仕掛けのようだ。ゆっくりとトキが経過する。突然縄を掛けていた枝がミリミリと音を立て宙ずりに。
冒頭のシーンが変わり少年が父に夢のハナシをする。少年がユスフで父が冒頭の男だ。ユスフの夢は父との秘密になった。サントラが一切なく梢の音、鳥のさえずりが沁み入るように効果的。
養蜂家の父はユスフの憧れで絶対的な存在。吃音癖がありながら父との会話や日めくりの朗読は澱みない。花の名前、蜜の色や味、燻製器の扱い方まで嬉嬉として覚える様子は健気で直向きだ。父はユスフの苦手なミルクを代りに飲んでくれる優しい存在でもある。その父がいつもの巣箱が全滅で少し遠くへ巣箱を置きに行くことに。ついて行くというユセフに父は男として家族を守れと諭される。
質素だが優しく働き者の母、寡黙で養蜂ひとすじの父に育てられたユセフ。学校で本を朗読すると貰える<よくできましたバッジ>が貰えず暗記するが違うページを読むように先生からいわれ失敗する。詩を読むリボンの少女への淡い想い、宿題をしないで隣の少年のノートと交換するなど微笑ましいシークエンスが一編の詩のように続いてゆく。
映像に独特の感性がありとても美しく、主人公も少年らしく可愛いが、淡々とドラマが流れるように進んで行くので、気合いを入れて観ていないとついつい睡魔に襲われそう。筆者はしっかり見届けたが左右の隣席から寝息が聴こえていたので寝不足のトキは要注意。