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晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『竜馬の妻とその夫と愛人』 80点

2010-06-23 11:46:42 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

竜馬の妻とその夫と愛人

2002年/日本

英雄に関わった凡人たちの葛藤

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆75点

三谷幸喜の舞台脚本を市川準が惚れ込んで映画化した。味の違う2人のコラボレーションが坂本竜馬の妻を巡る3人の男のラブ・コメディをどう融合させるのかが最大の興味。
大河ドラマで再び脚光を浴びている幕末の志士・坂本竜馬。その妻おりょうも竜馬がぞっこんだったのは有名だが、横須賀に墓があるのはあまり知られていない。その横須賀でおりょうの面倒をみたのは、西村松兵衛というのは事実のようだ。
三谷脚本は松兵衛(木梨憲武)を主人公に、おりょう(鈴木京香)の妹と結婚した海軍中佐・菅野覚兵衛(中井貴一)、竜馬似のテキヤ・虎蔵(江口洋介)という竜馬の呪縛から離れられない3人が可笑しくも哀しい男心を繰り広げる。
テンポのある台詞の応酬でドラマを盛り上げる三谷脚本は映画でも活かされていて、松兵衛と覚兵衛の襖の影でのやりとりが舞台劇そのもので木梨と中井のコンビは絶妙の漫才のよう。アドリブを大切に使う市川演出とも波長が合っている。
ただ、引きで長回しの人物描写が特徴の市川映像とは馴染めず、浮いてしまった。寂れた長屋の日常風景もテンポを狂わせ、原作に気遣いし過ぎたのが要因か?思い切って市川作品を前面に出して欲しかった。
ハナシはとても面白く、4人の俳優も好演しているが、音楽もチグハグでトータル・バランスに欠けてしまった。
木梨の台詞は、21世紀の日本語で聴かせどころの自分で考えたというセリフも明治を忘れてしまって月9のドラマのよう。おりょうの鈴木京香は如何にも男好きな雰囲気で実際こんなヒトだったのかもしれない。


『嫌われ松子の一生』 80点

2010-01-24 15:13:53 | 日本映画 2000~09(平成12~21)




嫌われ松子の一生


2006年/日本






ファンタジーに成功した邦画の貴重な作品








総合★★★★☆
80



ストーリー

★★★★☆
80点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
85点




ビジュアル

★★★★☆
85点




音楽

★★★★☆
80点





山田宗樹の原作を「下妻物語」の気鋭・中島哲也監督が、テイストの違うファンタジーな映画に仕上げた。昭和の時代を駆け抜け、平成になって取り残され孤独のまま死んでいったひとりの女・川尻松子の物語。
CM出身の中島監督はCG・アニメを駆使し松子の波乱万丈の人生を通して、昭和の高度成長期を画面いっぱいに原色で繰り広げ、POPな世界を創出している。好き嫌いがはっきり出る監督でどちらかというと苦手なほうだが、この作品は好きである。特に、どうしても暗く陰惨になりがちなソープ・ランドや刑務所暮らしのシーンをミュージカル仕立てでテンポ良く見せる技術は、和製ミュージカルの成功例で鮮やかのひとこと。
主演の中谷美紀は惚れこんだ役だけあって一皮むけた一世一代の大熱演で、日本アカデミー賞主演女優賞受賞も納得の役者振り。これも中島監督のサディスチックな指導が生きたお陰であろう。
松子に係わる男たちも個性派揃い。教え子でヤクザの龍洋一(伊勢谷友介)太宰治に憧れる作家の卵の八女川徹也(宮藤官九郎)雄琴で同棲するヒモ小野寺(武田真治)などどれをとっても幸せになりそうな男はいない。幸せを夢見る少女だった松子は孤独になることを恐れるあまり惨めな暮らしを繰り返す。
奇想天外で誇張されているが、平成の現代が抱える社会問題、家族の確執・失業・DVが浮き彫りにされていて決して絵空事ではない。それはミュージシャン志望の頼りない甥の笙(瑛太)と海外青年協力隊としてウズベキスタンへ旅立つ明日香(柴咲コウ)の若い2人の関係が象徴的。
不器用で惨めな53年の人生を精一杯生きた松子に愛着を感じさせたのは、「人間の価値とは何をしてもらうかではなく、何をしたか」で決まるという言葉のせいか?






『空気人形』 85点

2009-10-10 15:35:21 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

空気人形

2009年/日本

リアルな描写と見事に融合させた大人のファンタジー

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆90点

音楽 ★★★★☆85点

人と人との関わり方をテーマに映画化してきた「誰も知らない」の是枝裕和監督、「歩いても歩いても」以来2年ぶりの長編6作目である。大都会東京に取り残されたような下町を舞台に繰り広げられた大人のラブ・ファンタジー。
心を持ったラブドールが外に出てさまざまな出会いと別れを繰り返す。人形を恋人代わりにする男といえば「ラースとその彼女」が似た設定だが、これは人間ではなく人形が主役で、ロボットが感情を持つスピルバーグの「AI」に近い。一歩間違えると危ない映画になるドラマについて行けるか心配したが、主演のペ・ドゥナの清潔感あふれる演技もあって安心して入って行けた。
ラブドールの持ち主はレストランで働く秀雄(板尾創路)。5980円で買った空気人形(ペ・ドゥナ)に、のぞみと名づけ、恋人の代用品として孤独感を癒している。心を持ってしまった代用品・のぞみが初めて発した言葉は「き・れ・い」。メイド服を着て外へ出ると何気ない風景がのぞみにとって新鮮なワンダーランドだ。リー・ピンビンのカメラがエモーショナルに情景を映し出し、ゆったりとした流れに身を委ねて行く。
登場人物は都会で暮らす孤独な人々。アルバイト先のビデオ・レンタル店の店長(岩松了)は毎朝玉子かけご飯を食べて出勤する。店員の純一(ARATA)も何か寂しげ。その孤独な青年に好意を抱き、好きな人はいるかと聞かれ「いいえ」とウソをつく。心を持った故である。
是枝監督はこれでもかというほど心がからっぽの人々を周りに配す。元高校の代用教員の老人(高橋昌也)、TVの事件をメモして犯人を名乗る老婦人(冨司純子)、年を取ることを恐れる会社受付嬢?(余貴美子)、過食症で閉じこもりのOL(星野真里)、悪徳警官の映画ばかり借りにくる交番巡査(寺島進)、妻を待ち続ける男(丸山智己)と娘(奈良木美羽)親子。それぞれの日常が切り取られる。リアルな描写が大人のファンタジーと見事な対比を見せ融合している。
のぞみは、老人が教えてくれた吉野弘の詩「生命は、その中に欠如を抱き それを他者に満たしてもらうものだ」を純一に託す。
生みの親の人形師(オダギリ・ジョー)が、生きることの意義を示唆してくれるとても切ない物語で、是枝監督がひと回り大きくなったことを証明してくれた。


『大いなる遺産(1997)』 80点

2009-09-27 11:55:45 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

大いなる遺産(1997)

1997年/アメリカ

A・キュアロン監督のアートへのこだわり満載

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

19世紀英国の作家チャールズ・ディケンズの最高傑作といわれる原作を、現代のNYに置き換えたアルフォンソ・キュアロン監督の愛憎劇。
フロリダのガルフ・コーストに住むフィネガン少年は、姉のボーイフレンドで便利屋ジョーに育てられる。ある日、スケッチブックを手にした海辺で脱獄犯(ロバート・デ・ニーロ)を助ける。そして<失われた楽園>と呼ばれる屋敷に住むディンズムア夫人(アン・バンクロフト)と姪のエステラという少女に出会う。
大人になったフィネガン(イーサン・ホーク)とエステラ(グウィネス・パルトロー)はNYで再会し、愛を育むことができるのだろうか?
ミッチ・グレーザーの脚本は、19世紀の英国階級社会の普遍的な愛憎劇を大胆な置き換えと省略によって米国人の孤独を表現している。そこにはキュアロン監督のアートへのこだわりが満載され、フランチェスコ・クレメントの絵画とともに全般に流れる光りと緑の映像美が秀逸。
印象的な水飲み場のキスシーンはその象徴である。美少年(ジェレミー・ジェイムズ・キスナー)美少女(ラクエル・ボーディーン)とディンズムア夫人のトライアングルが絶妙!
E・ホークは一途な若者を好演しているが、G・パルトロウの我が侭で冷酷な美しさに圧され気味。オトコの敵とも言われるエステラも、彼女が演じるとフィネガンと同じ気持ちになってしまう。
A・バンクロフトは厚化粧で隠しきれないほどのシワを堂々と見せ怪演。「卒業」のロビンソン夫人で見て以来の哀れな女振りは健在である。
ロバート・デ・ニーロには、トキドキ裏切られるが今回もそのひとつ。むしろ育ての親・ジョー役のC・クーパーが素朴で愛情豊かなオトコを演じて印象に残る。
金と名誉と幸せを量りにかけたテーマのドラマとしては荒っぽいが、美しい映像を112分楽しめた。


『大停電の夜に』 80点

2009-02-04 11:33:53 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

大停電の夜に

2005年/日本

温かい眼差しに心が癒される

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆85点

「東京タワー」の源孝志が監督した、全世代への愛のメッセージ。自身のTVドキュメンタリー<N.Y.大停電の夜に>をヒントに相沢友子と共同で脚本を担当した。
イヴの東京が大停電で機能ストップした夜12人に起きた心の交流を描いて、その温かい眼差しにこころが癒される。イヴの群像劇という設定が「ラブ・アクチュアリー」に似ているが、こちらは至って日本的で湿っぽい。
なかでも田口トモロヲ扮するサラリーマン・遼太郎は仙台への左遷辞令を受けた晩不倫相手のOL美鈴(井川遥)とホテルで別れを告げた夜だった。オマケに重病の父から出生の秘密を打ち明けられる。その妻静江(原田知世)は離婚届けを自宅で用意していた。一方ジャズバーのマスター木戸(豊川悦司)は店を開けたままで、ある人を待ち続けている。
他にも出所明けのチンピラ(吉川晃司)と妊婦(寺島しのぶ)、自殺寸前の人気モデル(香椎由宇)や自動車メーカーを定年退職した宇津井健とその妻淡島千景など、色とりどりの人びとがいつもと違う夜を迎える。
多少強引なところはあるものの、こんな夜だから普段できない言動が生まれるのだろう。マスターに憧れるキャンドル・ショップのオーナー田畑智子の<あなたに素敵なことがありますように>と蝋燭に灯をともすところが何ともロマンチック。
エレベータや地下鉄に閉じ込められたり、ライフラインがストップしてそれどころではないだろう?と野暮なところは抜きにして、個性溢れる12人の演技を楽しみながら、疲れた気分を癒すにはもってこいのドラマ。フランスで活躍中の永田鉄男の映像に、菊地成孔の都会的な音楽がイヴの大都会の雰囲気を醸し出し、クリスマス・プレゼントを貰った気分にさせられた。


『バーバー吉野』 80点

2007-09-12 12:02:31 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

バーバー吉野

2003年/日本

里山風景での「スタンド・バイ・ミー」

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆75点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

「かもめ食堂」「めがね」の荻上直子監督・脚本による長編デビュー作品。
100年以上続く伝統である少年の髪型・通称「吉野刈り」。町に一軒しかないバーバー吉野のおばちゃん(もたいまさこ)が頑なに守る伝統を、東京から来た坂上君の髪型がキッカケで、息子慶太(米田良)達が疑問を持ち始める。
大人達が理想とする里山でのライフ・スタイルが、徐々に壊れようとする地方都市に暮らす少年達の大人への第一歩が微笑ましく、「スタンド・マイ・ミー」を想わせる。
秘密基地でエロ本を見る彼らは、大人の世界を垣間見るが実感がなく、同級生(岡本奈月)が皆な好きだったりする。
男なら誰でも経験する、少年の背伸び振りが微笑ましい。少し物足りなかったのは、父親(浅野和之)や先生(三浦誠己)など大人の描き方で、実感が乏しくメルヘンの域を超えられなかったことか。


『夕凪の街 桜の国』 85点

2007-08-31 15:48:33 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

夕凪の街 桜の国

2007年/日本

原爆投下の悲惨さを風化させない感動作

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

こうの史代のコミック原作を「半落ち」の佐々部清が監督・脚本。昭和33年と平成19年、2人の若い女性を通して原爆の悲惨さを訴え、家族の絆・人間愛をテーマにした感動の物語。
昭和33年、夕凪の街・広島に住む平野皆実(麻生久美子)は母(藤村志保)と茨城にいる弟・旭の3人家族。死んだ妹を忘れられず、心の中で生き残ったことに葛藤している。そんな悩みを会社の同僚打越(吉沢悠)に打ち明け救われるが...。
平成19年、桜の国・東京の郊外に住む石川七波(田中麗奈)は父、旭(堺正幸)の後を追ううち広島へ。叔母・皆実の存在と父母の軌跡を知り、同行した幼馴染みの東子(中越典子)の悩みも原爆の影響を被る。
原爆投下の悲惨さを風化させないための感動物語だ。特に力道山と長嶋がスターだった夕凪の街編が涙なくして観られない。(象徴だった広島市民球場も間もなく消えるとか。)麻生久美子の儚げな健気さが魅力的だ。吉沢悠の純朴さも良く出ていて、昔の青春・恋愛ドラマを再現しているような風情がある。佐々部監督は戦後生まれなのに時代再現にかなり頑張った成果が表れている。
藤村志保のさり気ない存在感はこのドラマには欠かせない助演賞もの。
映画化にあたり原作を大切にして大胆なアレンジはできなかったのかもしれないが、桜の国を前半に持って行き夕凪の街をもっと膨らませ盛り上げて欲しかった。
原作は世界各国で翻訳され読まれているらしいが、この映画も外国(特に米国)で上映され、未だに原爆の後遺症に悩む人がいることを知って欲しい。


『佐賀のがばいばあちゃん』 80点

2007-04-30 11:52:28 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

佐賀のがばいばあちゃん

2005年/日本

がばいばあちゃんには人生の哲学がある

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆75点

島田洋七の自伝小説の映画化。「がばい」とは佐賀弁で「すごい」という意味。昔は何処にでも居たおばあちゃんには、しっかりした人生哲学があった。
広島の母(工藤夕貴)が女手ひとつで2人の息子を育てるのは難しく、叔母さん(浅田美代子)に頼んで佐賀の祖母(吉行和子)に弟・明弘を託す。
がばいばあちゃんには一生貧乏という二文字がついて回ったが、それを吹き飛ばす<明るさと逞しさ>があった。その数年間の暮らしで得た、愛情溢れる人生哲学が随所に流れ、微笑ましい。そして今社会問題となっているイジメ・格差・環境汚染・リサイクルを、難なく超越した生活感に納得させられる。
明弘を3人の子役が素直な演技で分担している。特別出演の三宅裕司が大人になった明弘役で、子供の自分を回想するところに若干違和感があるのが残念。豆腐屋(緒方拳)が指で穴を開け豆腐を半額にするところ、運動会で先生が自分の弁当と交換するところなど周りの大人の思いやりも極めて温かい。
他に島田紳介・山本太郎・洋八が友情出演してこの映画を支えている。
佐賀を去る日、ばあちゃんが「はよ行け。」と言いながらも、姿が見えなくなると堪らず叫んだ「行くな!」が涙をさそう、心温まる作品だ。


『ユメ十夜』 70点

2007-02-17 09:29:42 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

ユメ十夜

2007年/日本

邦画の勢いがある今だから作れた?

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shinakamさん

男性

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆75点

漱石41歳時(1908年)の原作「ユメ十話」をオムニバスで構成。夢という世界を夫々の解釈で如何に映像化して行くのか、巨匠・新鋭入り乱れた競作。興味深々で観たが、やはり10分間は得手不得手が出て、力量を充分発揮できない作品も見られた。
企画ありきの映画だが、邦画の勢いがある今だから作れたという意味で、今後の邦画のパワーに好影響があるのでは?
映画館での鑑賞は好みがはっきり出るので、普段は絶対見ない監督作品も見ることができ、意外と食わず嫌いだったことを認識できたのも収穫だ。
故・実相時昭雄監督、久世光彦脚本コンビの第一夜が、一番しっくりしていた。ごひいきの西川作品はエンディングに?。