幸福な食卓
2006年/日本
懐かしい青春映画の香り
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shinakamさん
男性
総合
80点
ストーリー
80点
キャスト
80点
演出
80点
ビジュアル
80点
音楽
80点
瀬尾まいこの原作を小松隆志が監督。現在の社会問題を抱えながら家庭を支える家族の物語。ヒロイン佐和子(北乃きい)と転校生・大浦(勝地涼)の淡い青春ドラマが今どき微笑ましい。昔良くあった青春映画を思い出させてくれる。
日常の暮らしで家族の象徴である食卓をテーマにしながら、父さん(羽場裕一)は職場の悩みで自殺未遂、母さん(石田ゆり子)は家庭からの自立、兄さん(平岡祐太)は大人への挫折を抱えているところが、今風。
北乃きいの気負いのない自然な演技と、勝地涼のキラキラした清潔感溢れる演技がこの映画を支えている。そして、健気に支える佐和子が初めて味わう挫折が家族をひとつにするという、極めてオーソドックスなテーマを丁寧に描く小松監督に好感を持った。エンディングにミスチルの曲に乗って歩く佐和子の横顔が延々と写るシーンも昔の歌謡ドラマに良くあった手法で懐かしい。
あなたを忘れない
2006年/日本・韓国
あくまでフィクションの日韓友好映画
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shinakamさん
男性
総合
70点
ストーリー
70点
キャスト
80点
演出
75点
ビジュアル
70点
音楽
80点
’01年JR新大久保駅で起きた、転落者救助のため亡くなった26歳の韓国の若者をもとにした青春ドラマ。ノン・フィクション映画を想像するような宣伝をしたために観客が戸惑ってしまったが、あくまでフィクション映画として観ないと期待外れとなってしまう。
むしろ青春恋愛ドラマとして観るべきだろう。改めて日韓のお国事情の違い(兵役・歴史認識・宗教心)を浮き彫りにしながら、それを受け止め日本で青春を目一杯生きた、一人の純粋な若者の物語である。
主役のイ・ソンテはこの主人公に相応しい心の優しい青年を好演。冬ソナの父ジョン・ドンファンがやはり父親役でこの親にしてこの子ありという雰囲気を醸し出している。恋人役のマーキーは歌手らしく純粋な演技は好感が持てるものの、如何せん台詞が棒読み。竹中直人・金子貴俊ら芸達者が脇を固めている。
個人的には無理を承知で、亡くなった3人(転落者と救助しようとした2人)の事実をもとにした物語を観たかった。
それでもボクはやってない
2007年/日本
新ジャンルで健在振りを示した周防監督
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shinakamさん
男性
総合
85点
ストーリー
85点
キャスト
85点
演出
90点
ビジュアル
80点
音楽
80点
「Shall We ダンス?」以来11年振りに周防正行監督が手掛けたテーマは「裁判」。見事に新ジャンルで健在振りを示した。
「半落ち」「ゆれる」「手紙」など犯罪を通したテーマは最近の邦画に多く見られるが、殆ど家族愛の話。この映画は「日本の裁判制度そのもの」を問う社会派ドラマでありながら、「痴漢冤罪」という誰でも遭遇することになり兼ねないことで、観客を引き付けているところに切り口の素晴らしさがある。
キャスティングも地味ながら達者な俳優を選んでいる。被告役の加瀬亮は素直な中にも何処にでもいそうな普通の若者を演じていて、「硫黄島からの手紙」に続きその力量を感じる。共演の瀬戸朝霞も新人弁護士らしく毅然とした台詞で「愛の流刑地」の検事役・長谷川京子とは大違い。山本耕史・もたいまさこの周防組初出演者と役所広司・竹中直人などの常連組が上手く絡まり、とても自然な感じがする。
暗い社会派ドラマにしないで、エンターテインメント性を保ちながら世の中には余り馴染みのない刑事裁判の仕組みを丁寧に描き、法曹界に一石を投じたところがこの映画を一皮剥けた作品にした。

たそがれ清兵衛
2002年/日本
山田洋次監督、藤沢時代劇の最高傑作
shinakamさん
男性
総合
85点
ストーリー
85点
キャスト
85点
演出
85点
ビジュアル
85点
音楽
85点
藤沢周平原作・山田洋次監督の時代劇シリーズ第一作。シリーズ3作品のうち最高傑作だ。
妻を亡くし2人の娘の成長を励みに日々を必死に生きる五十石取りの御蔵役清兵衛(真田広之)と千五百石で酒癖が悪い夫(大杉漣)と離縁した幼馴染み朋江(宮沢りえ)の物語。
貧しくも楽しいヒトトキも、幕末庄内蕃の下級武士を時代は放って呉れず、藩命により上意打ちを命じられる。
真田の殺陣の上手さと宮沢の匂うような美しさがこの映画を引き立てる。とくに甲田(田中泯)との一騎打ちは迫力満点。
脇役陣も小林稔持・丹波哲郎・岸恵子など適材適所。こんな時代劇を作れる山田洋次は現在日本を代表する監督に間違いない。この年の最高傑作だ。
武士の一分
2006年/日本
理想の夫婦愛を描いた山田時代劇
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shinakamさん
男性
総合
80点
ストーリー
80点
キャスト
80点
演出
85点
ビジュアル
80点
音楽
85点
山田洋次監督・藤沢周平原作の時代劇シリーズ3部作の最終作品。どうしても前2作と比較され易いが、「たそがれ清兵衛」に軍配を上げざるを得ない。三村新之亟(木村拓哉)と加世(檀れい)の夫婦愛に焦点が当たっているため物語が至極シンプル。2人の演技力がどうしても試される作品となった。2人とも精一杯の演技だが、やはりキムタクにやつれた凄みに欠ける。壇れいも熱演だが色気がないため、島田藤弥(坂東三津五郎)が唯の女好きのイヤな上司となってしまった。
とはいえセットだけで、これだけリアルな四季の変化や、時代背景を描いた山田組の頑張りに感服させられた。
また役得ながら中間・徳平の笹野高史が2人を上手く補佐していて助演賞候補。他にも緒方拳・小林念持・桃井かおりなどが、この理想の夫婦愛ドラマを盛り上げていて、さすが山田作品ならではと思わせる。
ALWAYS 三丁目の夕日
2005年/日本
家族揃って見る映画
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shinakamさん
男性
総合
75点
ストーリー
80点
キャスト
80点
演出
75点
ビジュアル
75点
音楽
75点
西岸良平のコミックをもとに山崎貴監督が大胆にアレンジ、全くテイストの違う映画に仕上げた。今年の日本アカデミー賞を独占し大ヒットした。
昭和33年は日本が高度成長期を始めた頃で、そのシンボルが東京タワー。東京下町生まれの自分は14歳だったが、実体験した身には懐かしさと同時に、堤真一・吉岡秀隆のオーバーな演技に違和感を覚えた。
貧しいながらも3種の神器(TV・冷蔵庫・洗濯機)に幸せを感じ、近所付き合いが当たり前だった頃の少年達がイキイキしていて、若い人・特に少年達に見て欲しい。家族揃って楽しめる映画が少ない昨今、貴重な作品だ。続編はどのような作品になるか期待したい。
手紙
2006年/日本
犯罪者の家族が背負った重み
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shinakamさん
男性
総合
85点
ストーリー
85点
キャスト
85点
演出
85点
ビジュアル
80点
音楽
85点
直木賞作家・東野圭吾の原作を、生野滋朗が監督した社会派ドラマ。
犯罪が多発する時代で被害者の家族を主題にしたドラマはかなり見られるが、犯罪者の家族を取り上げたところがこの映画の視点となっている。
弟(山田孝之)を大学に入れるために盗みに入る兄(玉山鉄二)の短慮を責めるべきところだが、兄弟2人が必死に生きて行くには今の競争社会は過酷過ぎる。格差社会とはいえ、吹石一恵の令嬢との恋は一昔前を感じさせて不自然さは否めないが、人間の幸せは一寸先は判らないのは現実だ。
原作はミュージシャンを目指した直貴(山田孝之)が映画ではお笑いに変っていた。これで感動のラストシーンが実現するあたりは、監督の巧みな手腕を感じた。主役の3人は単なる青春ドラマではない重いテーマを、6年の歳月とともにしっかり捕らえて好演している。とくに沢尻エリカの芯の強い女性ぶりが良かった。また中盤出てくる電器販売会社会長役の杉浦直樹がいい味を出していて、このドラマの主題をさりげなく語っている。観ていて思わず出てくる涙がこの映画を象徴している。