・カーウァイは英語作品でも独特の映像と浮遊感は健在。
「花様年華」(00)「2046」(04)のウォン・カーウァイが初の英語作品に挑んだ現代劇ラブ・ストーリー。
大都会NYの片隅にあるカフェに深夜現れたエリザベス。失恋を慰めてくれたのはオーナーのジェレミーでブルーベリー・パイを焼いて出してくれた。別れた彼のアパートの鍵を託して、エリザベスは旅に出る。
NYからルート66でメンフィス、エリ、ラスヴェガス、ヴェニス・ビーチと横断するロード・ムービーでもある。当初はNYロケで完成する筈が予算が掛かり過ぎるので急遽撮影場所を変更したという、いかにもカーウァイらしい裏話もある。「セブン」の撮影監督ダリウス・コンジの映像はCMでコンビを組んでいるので、独特のスタイリッシュな雰囲気は健在。アメリカ的というより無国籍風の風景映像が流れる。
ヒロイン、エリザベスを演じたのはグラミー賞歌手のノラ・ジョーンズ。本人役での映画出演はあったが本格的演技は初めて。素直な演技は好感が持てたが、初主演は荷が重かった感も・・・。彼女自身NYでカフェのアルバイトをしながらデビューのチャンスを待っていた経験もあって、感性を見込んでのエリザベスに起用したのは如何もカーウァイらしいキャスティングだ。
相手役のジェレミーには、英国の若手演技派ジュード・ロウが選ばれた。こんなカフェがあったら女性客が押しかけるだろうと思わせるほどで優しさを持ち合わせたカッコよさ。元恋人役のショーン・マーシャルも一瞬出ていたが、寧ろ挿入曲「ザ・グレーテスト」が雰囲気づくりに一役かっていた。このあたりは音楽ライ・クーダーの意図なのだろうか?
最初と最後がNY、次に57日後のメンフィス、そして251日後ラスベガスと短編3話が繋がってひとつのドラマが構成されている。
メンフィスでは別れた妻を諦めきれずアル中になった警官アーニー(デイヴィッド・ストラザーン)とその妻スー・リン(レイチェル・ワイズ)の物語が中心となる。達者な2人に囲まれてN・ジョーンズは狂言廻しの役割り。D・ストラザーンの代表作はオスカーノミネートされた「グッドナイト&グッドラック」(06)だが、小悪魔的な妻に逃げられたやるせない中年警官に成り切っていた。妻を演じたR・ワイズは登場したとき誰だか分からないほどの奔放な美しさ。オスカー受賞(助演女優賞)作「ナイロビの蜂」(06)とは別人のような女っぷりに驚かされた。
真打ち登場はラスベガスで登場した女性ギャンブラー役のナタリー・ポートマン。ジャガーを担保にエリザベスから2000ドルを借金するが、父親への反抗から抜け出せないでいる。青味がかった鮮やかなワンピースに金髪を靡かせジャガーで疾走する姿は、若いころのジーナ・ローランスのイメージで起用したカーウァイのキャスティングの確かさを知る想い。
結局、N・ジョーンズを囲む4人の芸達者が巧く絡み合ってひとつのラブ・ストーリーが構成されていたが、肝心のヒロインに変化があまり感じられずNYへ逆戻りした感じ。
豪華な脇役を揃えながら俳優のスケジュールの都合なのか、撮影中にシナリオを変えて行く独特の製作手法なのか、纏まりに欠けた構成になってしまったのが惜しい。それでもシネマスコープを使ってのスタイリッシュな映像と浮遊感が漂うラブ・ストーリーは、他の誰とも違う世界を見せてくれている。とくに色使い、ブルーベリー・パイ、手紙・電話、ガラス瓶、鍵、モニターカメラなど小道具を巧みに活かしたドラマ作りでカーウァイのセンスの良さを満喫。

「花様年華」(00)「2046」(04)のウォン・カーウァイが初の英語作品に挑んだ現代劇ラブ・ストーリー。
大都会NYの片隅にあるカフェに深夜現れたエリザベス。失恋を慰めてくれたのはオーナーのジェレミーでブルーベリー・パイを焼いて出してくれた。別れた彼のアパートの鍵を託して、エリザベスは旅に出る。
NYからルート66でメンフィス、エリ、ラスヴェガス、ヴェニス・ビーチと横断するロード・ムービーでもある。当初はNYロケで完成する筈が予算が掛かり過ぎるので急遽撮影場所を変更したという、いかにもカーウァイらしい裏話もある。「セブン」の撮影監督ダリウス・コンジの映像はCMでコンビを組んでいるので、独特のスタイリッシュな雰囲気は健在。アメリカ的というより無国籍風の風景映像が流れる。
ヒロイン、エリザベスを演じたのはグラミー賞歌手のノラ・ジョーンズ。本人役での映画出演はあったが本格的演技は初めて。素直な演技は好感が持てたが、初主演は荷が重かった感も・・・。彼女自身NYでカフェのアルバイトをしながらデビューのチャンスを待っていた経験もあって、感性を見込んでのエリザベスに起用したのは如何もカーウァイらしいキャスティングだ。
相手役のジェレミーには、英国の若手演技派ジュード・ロウが選ばれた。こんなカフェがあったら女性客が押しかけるだろうと思わせるほどで優しさを持ち合わせたカッコよさ。元恋人役のショーン・マーシャルも一瞬出ていたが、寧ろ挿入曲「ザ・グレーテスト」が雰囲気づくりに一役かっていた。このあたりは音楽ライ・クーダーの意図なのだろうか?
最初と最後がNY、次に57日後のメンフィス、そして251日後ラスベガスと短編3話が繋がってひとつのドラマが構成されている。
メンフィスでは別れた妻を諦めきれずアル中になった警官アーニー(デイヴィッド・ストラザーン)とその妻スー・リン(レイチェル・ワイズ)の物語が中心となる。達者な2人に囲まれてN・ジョーンズは狂言廻しの役割り。D・ストラザーンの代表作はオスカーノミネートされた「グッドナイト&グッドラック」(06)だが、小悪魔的な妻に逃げられたやるせない中年警官に成り切っていた。妻を演じたR・ワイズは登場したとき誰だか分からないほどの奔放な美しさ。オスカー受賞(助演女優賞)作「ナイロビの蜂」(06)とは別人のような女っぷりに驚かされた。
真打ち登場はラスベガスで登場した女性ギャンブラー役のナタリー・ポートマン。ジャガーを担保にエリザベスから2000ドルを借金するが、父親への反抗から抜け出せないでいる。青味がかった鮮やかなワンピースに金髪を靡かせジャガーで疾走する姿は、若いころのジーナ・ローランスのイメージで起用したカーウァイのキャスティングの確かさを知る想い。
結局、N・ジョーンズを囲む4人の芸達者が巧く絡み合ってひとつのラブ・ストーリーが構成されていたが、肝心のヒロインに変化があまり感じられずNYへ逆戻りした感じ。
豪華な脇役を揃えながら俳優のスケジュールの都合なのか、撮影中にシナリオを変えて行く独特の製作手法なのか、纏まりに欠けた構成になってしまったのが惜しい。それでもシネマスコープを使ってのスタイリッシュな映像と浮遊感が漂うラブ・ストーリーは、他の誰とも違う世界を見せてくれている。とくに色使い、ブルーベリー・パイ、手紙・電話、ガラス瓶、鍵、モニターカメラなど小道具を巧みに活かしたドラマ作りでカーウァイのセンスの良さを満喫。