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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

この「どさくさ」にまぎれて、こんなことするの?

2011-05-15 16:22:59 | ニュース

大阪「都」構想をかかげ、どうしても「都」制実現をやりたい大阪維新の会と橋下大阪府知事は、昨日、下記のような方針を発表しました。

「世間の注目が東京電力の福島原発の事故や、東日本大震災のほうに向いている、そのどさくさにまぎれて、なんていうことをするのだ?!」というしかないのですが。

あるいは、「ひとつになろう日本!」とか「がんばろう日本!」とかいう、このたびの大震災後のテレビなどのメッセージに便乗するかのように、大阪維新の会や橋下府知事はこんなことをやろうと決めているのでしょうか。

私が言うまでもなく、大阪市内を含む大阪府内全域には、日本国籍ではない人々も多数暮らしていて、その方たちの子どものなかには、地元の公立学校に通っている子どももいます。また、たとえ日本国籍を有する人であったとしても、日の丸や君が代(国旗・国歌)に対してはさまざまな意見、感情を持つ人がいます。

そのような多種多様な立場、考え方の人たちが「ともに生きる、ともに暮らす地域の学校」のありようを考えるときに、少なくとも私は、このような「学校儀式で、君が代を流す・斉唱するときに起立しなければ処分」というような条例をつくることで、その学校がよくなるとは全く思えません。

むしろ、多様な立場の人たちが「ともに生きる、ともに暮らす地域の学校」をつくるという意味では、不必要な緊張関係を新たに学校や地域社会に持ち込むだけに終わるような気がしてなりません。また、こんな条例をあえてつくらなくても、大阪府の府政がどの人にとっても「ここで生まれ、育ち、暮らしてよかった」と住民に思ってもらえるようなものになれば、おのずから「郷土」を大事にする気持ちは芽生えてくると思うのですが。

というか、こういう条例をつくるということを発表するその時点で、つくりたいという人たちの側は、住民や府内の教職員を「信用していない」ということがわかってしまいますね。こういう住民や府内の教職員を信用していない人たちを選挙で選び続けるのも、今後は考えたほうがいいかもしれません。

ひとまず、東日本大震災や原発事故関連の報道などとの兼ね合いもあって、掲載されている新聞とそうでない新聞があるようですが、一応、ネット上でもわかるものを下記のとおり紹介しておきます。

大阪維新、君が代で起立義務付け 教員対象、条例案提出へ

2011年5月14日 13:10 大阪日日新聞

http://www.nnn.co.jp/dainichi/knews/110514/20110514051.html

君が代条例案に「処分ルール化も」 橋下知事

2011年5月14日 朝日新聞(関西)

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201105140044.html

大阪維新の会:君が代起立、府立学校教員に条例案 自民と協議

毎日新聞(関西)

http://mainichi.jp/kansai/news/20110514ddf041010035000c.html

なお、このような動きに対して、あらためて言っておきたいことがあります。

それは何かといえば、「大阪の人権教育や子どもの人権に関する取り組みは、この間の府政改革の動きのなかで、もはや、ここまで追い詰められているのだ」ということ。また、「そのことの自覚と、この追い詰められている状況をなんとかもちこたえる方法や、長期的な展望にたって打開しようとする手立てを検討することなくして、今後の大阪の人権教育や子どもの人権に関する取り組みの巻き返しはありえないのだ」ということです。

もちろん、このような状況においても、たとえば「なんとか府政改革の動きのなかで残せるものに便乗して・・・・」みたいな動き方を検討して、そこに乗っかろうとする人権教育や子どもの人権関連の取り組みもあるでしょう。

しかし、そのような動き方をするなかで、これまでの取り組みは残ってもぜんぜんちがうものに位置づけられ、「たましい」まで売ってしまうことになってしまうのならば、「たとえその場は敗れて野に下っても、いっそ、徹底的に抗議したり、たたかったりしたほうがまし」という場面も出てくるかもしれません。あるいは、「そんなものに加担するような残り方するくらいなら、いっそ全部さっさと廃止して、民間レベルでやったほうがマシ」みたいなこともあるかもしれません。

いずれにせよ、「どさくさにまぎれて」やってきたようなこのような維新の会や橋下知事の動き方に対して、私らがどういう立場に立って、何をいうのか。そこに、大阪の人権教育や子どもの人権に関する取り組みに携わる人ひとりひとりの「良心の問題」がかかわっているように思います。少なくとも、私はこんな動きには「つきあえないし、やってほしくない」というしかありません。

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