できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

夏休み明けの子どもの自殺防止の取り組みに抱く「懸念」

2016-08-29 20:10:57 | 受験・学校

「夏休み明けの自殺防げ 不登校支援団体ら「居場所」作り」(朝日新聞デジタル、2016年8月27日)

http://digital.asahi.com/articles/ASJ8S45C4J8SPTIL01L.html?rm=403

「新学期も君を支えるよ 自殺防止へ学校やNPO取り組み」(朝日新聞デジタル、2016年8月29日)

http://www.asahi.com/articles/ASJ8S3VM7J8SOIPE009.html

こういう取り組みを熱心にすすめている人びとの「善意」を否定する気は全くないし、できれば今、いろんな悩みを抱えている子どもたちが、どこかでこうした取り組みとつながって、ふみとどまってほしいという願いを私も持っています。

ですが、私はこうした取り組みについて、いくつかの「懸念」をもっています。

そもそも、こうした夏休み明けの子どもの自殺防止の取り組みが一定「効果」を発揮するためには・・・。

(1)まずは、いちばんこの取り組みが必要な子どもたちのところに、こういう取り組みをしている人たちの情報が届くかどうか。

(2)次に、情報が届いたとして、そういう取り組みをしている人たちを信頼して、子どもたち自身の側から「助けて」と言えるかどうか。

(3)そして、「助けて」と言えた子どもたちと、きっちりとこうした取り組みを続けている人たちがつながれるかどうか。

この3つのハードルをクリアすることが必要ではないか、と私は考えています。

そうすると今、新聞やテレビ、インターネットなどを通じて、積極的に子どもの自殺防止の呼びかけをすすめているわけですが・・・。

(1)肝心の子どもたち、それもいちばんしんどい状況にある子どもたちには、こうした取り組みに関する情報が伝わっていない危険性。

(2)肝心の子どもたちに情報が伝わったとしても、相談機関や学校外の居場所に信頼感がなかったり、あるいはその子どもたち自身が「どうやって自分の思いを伝えたらいいのか、それがわからない」という思いを抱いている危険性。

(3)自分の思いをきっちりと伝えることができた子どもたちに、相談機関や学校外の居場所などがうまくつながれず、対応を誤ってしまう危険性。

この3つの危険性についても、私、同時に感じてしまうんですよね。

「ハードルがある」ということは、「そこを越えられない危険性もある」ということなので・・・。

だから、なんとか子どもたちがこの3つのハードルを、相談機関や学校外の居場所の人々といっしょにクリアして、思いとどまってほしいと願う今日この頃です。

ついでにいうと、一生懸命やっている人びとの「善意」を否定する気はないのですが、上記のような「ハードルがある」ことを、相談機関や学校外の居場所の人々がどこまで冷静に認識できているのかどうか。

そこも、とっても気になります。




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