アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

沖縄で加速する「米軍・自衛隊一体化」の危険

2017年04月11日 | 沖縄・米軍・自衛隊

     

 トランプ大統領はシリアへのミサイル攻撃から間髪入れず、原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島へ派遣しました(写真左)。ティラーソン米国務長官は9日、シリア攻撃が北朝鮮をけん制したものだったことを明らかにしました。東アジアはトランプ大統領の下で、まさに現実的な危機に直面しています。

 その危機の最前線に立たされているのが、沖縄です。

 11日付琉球新報によれば、潜水艦や特殊部隊を支援する米軍の支援船「C・チャンピオン」が9日那覇軍港に寄港し、10日出港しました。韓国・釜山から沖縄へ来たもので、「米政府による北朝鮮への軍事力行使が取り沙汰される中、C・チャンピオンの動きは米軍特殊部隊と関連している可能性がある」(同紙)とみられています。

 米軍は現在韓国軍との共同演習で「北朝鮮上陸」を想定した訓練を行っていますが、そこでは普天間基地に所属するオスプレイが参加しています(写真中)

 こうした米軍の直接的な行動と同時に、沖縄で進行している重大な問題が、米軍と自衛隊の一体化(共同行動)です。

 日米安保条約を深化させた戦争法(安保法制)が施行(3月29日)されて1年になりますが、法案成立の直前(15年4月)、安倍政権は「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」で、米軍と自衛隊の「共同計画策定の強化・更新」を規定しました。

 在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官は3月8日の記者会見で、「個人的意見」としながら、「在沖米軍基地の在り方について『沖縄の全ての基地』を対象に『自衛隊と共同使用すべきだ』と述べ」(3月9日付琉球新報)ました。

 このニコルソン発言について稲田朋美防衛相は3月10日の衆院安全保障委員会で、「何ら決まったことはない」としながら『今後充実させるべきだ』と同調」(3月11日付琉球新報)しました。

 糸数慶子参院議員(沖縄の風)が質問主意書で「共同使用」についてただしたのに対し、安倍政権は今月7日に閣議決定した答弁書で、「決定していないため、答えることは困難」と明言を避けながら、否定はしませんでした。

 「沖縄の全ての基地の共同使用」へ向け、すでに米軍と自衛隊の共同訓練は急増しています。

 特に増加が著しいのはキャンプ・ハンセン(本島中部)で、「ハンセンでは沖縄に配備されている陸上自衛隊第15旅団の部隊が射撃や市街地戦闘、爆破訓練などを実施」(3月11日付琉球新報)しています。年度ごとの訓練回数は、07年度=1回、08年度=6回、09年度=8回、10年度=8回、11年度=14回、12年度=24回、13年度=36回、14年度=47回、15年度=95回、16年度(2月末まで)=85回と12年度以降急増しています(同紙より)。

 また、米軍基地内での自衛隊の「研修」参加も増加しています。

 「自衛隊による県(沖縄―引用者)内の米軍基地内での『研修』が増加傾向にあり、2015年度は記録が残る08年度以降最多の48回に上ったことが防衛省の資料で分かった。…実践的な経験を積む事実上の『共同訓練』で、日米の軍事一体化が進む実態が浮き彫りとなった」(1月10日付沖縄タイムス)
 同紙によれば、在沖米軍基地内での自衛隊の「研修」参加は、08年度=26回、09年度=31回、10年度=35回、11年度=40回、12年度=44回、13年度=42回、14年度=41回、15年度=48回にのぼっています。

 安倍政権が目論んでいる辺野古新基地建設や、石垣、宮古、与那国など八重山諸島への自衛隊配備が強行されれば、米軍と自衛隊の一体化がさらに急速に進行するのは明らかです。
 トランプ政権による現実的な危機の下、米軍と自衛隊の一体化・沖縄の前線基地化を阻止するためにも、辺野古新基地建設・八重山への自衛隊配備に反対することは、沖縄だけでなく、「本土」の私たちにとっても喫緊の課題です。

 


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「森友・昭恵問題」の本質を吐露した籠池氏の言葉

2017年04月10日 | 安倍政権と民主主義

     

 「森友・安倍昭恵問題」の本質は何か。それを籠池泰典理事長(当時)自身が吐露した言葉が、先日明らかになりました。
 籠池氏が昭恵氏付きの政府職員(谷査恵子氏)に宛てた「手紙」(2015年10月26日の消印、3日の参院予算委員会理事懇談会で政府が公表)で述べた言葉です。「手紙」は谷氏を経由して昭恵氏に行った陳情に他なりません。

 「安倍総理が掲げている政策を促進するために、学校の用地が半値で借りられたらありがたい

 どういう意味でしょうか。「学校の用地」が安倍首相の「政策促進」とどう関係するのでしょうか。答えは籠池氏が開校する予定だった小学校(瑞穂の國記念小学院)の「教育理念」「教育の要」にあります。そこにはこう記されていました。
 「天皇国日本を再認識。皇室を尊ぶ。伊勢神宮・天照大御神外八百万神を通して日本人の原心(神ながらの心)、日本の国柄(神ながらの道)を感じる」「教育勅語素読・解釈による日本人精神の育成(全教科の要)。道徳心を育て、教養人を育成」(森友学園HPより)

 籠池氏はこういう小学校をつくることが安倍首相の「政策を促進する」ことになると確信していたのです。なぜか。
 この「手紙」の51日前の2015年9月5日、昭恵氏は同学園の塚本幼稚園で講演しました。そして、「こちらの教育方針はたいへん、主人(安倍首相)も素晴らしいというふうに思っていて…」と森友学園の「教育方針」を絶賛したのです。これを聴いた籠池氏が、森友学園の「教育方針」を実践する小学校を造ることが安倍首相の「政策を促進する」と確信したのも無理はありません。
 
 森友学園・籠池氏と昭恵氏・安倍首相を結び付けたものは、「教育勅語」を基本にした「皇国思想教育」「道徳教育」でした。だから籠池氏はその実践のために昭恵氏(実質は安倍首相)に「用地が半値で借りられたらありがたい」と要請したのです。結果、その通りになりました。これが「森友・昭恵問題」の本質です。

 その後「教育勅語」をめぐって相次いだ安倍政権の言動(稲田朋美防衛相の賛美発言、教材化を否定しない閣議決定など)は、それを証明しています。

 日本のメディアはなかなかこの本質に目を向けようとしませんが、外国のメディア・記者はいち早くその核心を見抜いています。
 例えば、イギリスのフィナンシャルタイムズは「森友学園スキャンダル」は「安倍首相と右派のつながりを国民に気付かせた」「右派と安倍政権の親密さが問題」と報じました(写真)。
 「外国人記者は見たプラス」(BSTBS、2日放送)では、外国人記者たちは異口同音に「森友学園問題の本質は思想教育」だとし、「イギリスでもし思想教育があったら首相は辞めている」(ロイター記者)、「フィナンシャルタイムズの記事に賛成。日本が右へ傾いている気がする」(韓国記者)、「(塚本幼稚園の教育は)文化大革命時の中国よりひどい」(中国記者)など相次いで日本の異常さを指摘しました。
 「外」から見ると「森友・昭恵問題」の本質が鮮明にわかるようです。


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「トランプ氏の核戦争」に巻き込まれる現実的恐怖

2017年04月08日 | 日米同盟と安倍政権

           

 トランプ大統領によるシリア空爆、それを間髪入れず支持した安倍首相。日本が戦争しかも核戦争に巻き込まれる現実的な恐怖に身震いします。

 シリアが化学兵器を使ったという証拠はなく、仮にあったとしても、空爆は一般市民も巻き込む無差別の殺戮であり、それによって事態が好転するどころか悪化するのは必至で、どこからみても「あまりに乱暴で無責任な武力の行使」(8日付朝日新聞社説)です。

 とりわけ重大なのは、この空爆が、国連安保理も、(オバマ前大統領によるシリア空爆に歯止めをかけた)米議会も無視し、トランプ氏の独断・即決によって行われたことです。しかもその動機は、低迷する支持率の挽回やオバマ氏への対抗心というきわめて恣意的なものです。

 明かなことは、トランプ氏が民主主義のルールや国内外の世論、まして良識などまったく眼中にない、自分がやると思ったらいつでも戦争のボタンを押すこの上なく危険な大統領だということです。

 この恐怖は、言うまでもなくシリア・中東だけの問題ではありません。むしろ米中首脳会談の最中に行われた今回の空爆は、北朝鮮をめぐって中国をけん制する狙いだったともみられています。トランプ氏はすでに北朝鮮に対する武力行使(金正恩氏の暗殺を含め)のボタンに指を置いており、いつ実行しても不思議はありません。

 情勢がまだ今ほど緊迫していなかった時に新聞で読んだ専門家(米モントレー国際問題研究所部長ジェフリー・ルイス氏)の論考が思い起こされます。

 「2016年2月、トランプ氏は金正恩氏について聞かれ、次のように言ったものだ。『私なら、あれやこれやのやり方で、一瞬にして中国にあいつを消してもらうようにする
 今から1年前、この脅しに誰も注意を払わなかった。トランプ氏はまだ米大統領ではなく、朝鮮半島は今ほど危機的状況ではなかった。しかし、トランプ氏は今や大統領なのだ」
 「北朝鮮は、日韓に駐留する米軍と武力衝突する事態になれば、核兵器を先に使う計画だ。米国にショックを与え、北朝鮮への侵攻を阻止するために」(3月5日付中国新聞=共同配信)

 トランプ氏は8日(日本時間)の習近平氏との会談で、中国が北朝鮮を抑えないならアメリカが自分でやる、と言いました。中国が金正恩氏を消さないのなら自分が消す、ということでしょう。トランプ氏のこのサインによって、北朝鮮が核兵器を先制使用する恐れはきわめて大きくなったと言わざるをえません。その標的は、韓国であり日本です。

 まるで小説か映画のようなシナリオですが、これは現実です。そして日本は間違いなく当事国の1つです。沖縄をはじめ全土に米軍基地があり、安倍首相が世界のだれよりも早くトランプ氏の空爆を「支持・理解・評価」する日本は、いつ北朝鮮の核攻撃の標的になっても不思議ではありません。

 この根源は、日米安保条約による日米軍事同盟です。日米安保・軍事同盟を解消する以外に、何をするか分からないトランプ氏が引き起こす核戦争に、私たちが巻き込まれる恐怖から逃れる道はありません。


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メディアの醜態ー復興庁記者クラブとフジテレビ

2017年04月06日 | メディア

    

 日本の(大手)メディアの実態(醜態)を示す出来事がこの2日間に相次ぎました。

 ★1つは今村雅弘復興相の記者会見(4日)です。

 東電福島原発事故に対する政府の責任を棚上げし、避難者に「自己責任」を突きつける今村氏の発言は、失言ではなく、安倍政権の本質を露呈したものです。徹底的に追及しなければなりませんが、ここではメディアの側からこの問題をみてみます。

 というのは、「4日の会見で今村氏に国の責任をただしたのは、フリーのジャーナリストの男性。復興庁によると、今村氏が昨年8月に復興相に就任後、初めて記者会見に参加した」(6日付共同配信記事)という背景だったからです。

 復興庁には大手メディアを中心として新聞協会に加盟している各社による「記者クラブ」があります。毎週火曜日と金曜日の閣議の後に「記者クラブ」によって定例会見が行われています。この日「フリージャーナリスト」の質問(追及)で今村氏・安倍政権の実態があぶり出されたわけですが、それは同時に次のような疑問を抱かせました。記者クラブのほかの新聞社・テレビ局の記者は今まで何を質問してきたのか。「自主避難者」への支援の打ち切りについて、今村氏に「国の責任」をたださなかったのか。

 「記者クラブ」の弊害は以前から指摘されています。今回のようにフリージャーナリストも会見に参加できるという一部の改善はあります。しかし、問われているのは、新聞社・テレビ局の記者たちです。「記者クラブ」という仲間内のサークル(同時に国家権力にとって都合のいいツール)に安住し、(大手)企業の「社員」という安定した身分にあぐらをかいて、ジャーナリストとしての本来の在り方、「権力の番犬」としての使命を忘れているのではないか、ということです。
 
 ★もう1つは、5日朝放送された「とくダネ!」(フジテレビ、写真中)です。

 「北朝鮮のミサイル発射」を特集したコーナーで、「主な在日米軍基地」の地図が何度も映されました(写真右)。これを見て、おかしいと思いませんか?

 地図には三沢、横田、横須賀、岩国、佐世保の5カ所が記されています。なぜ嘉手納(沖縄)がないのでしょうか。
 嘉手納は日本はおろかアジアで最大の米軍基地です。在日米軍施設全体からみても、国土面積の約0・6%の沖縄には70・6%(北部訓練場の一部返還後)の米軍専用施設が集中しています。日米安保の犠牲を沖縄に押し付けているのが実態です。

 辺野古新基地問題など「沖縄の基地」がこれほど問題になっているにもかかわらず、「在日米軍基地」の地図になぜ沖縄を載せなかったのか。
 フジテレビに問い合わせました。5日は何度電話してもつながらず、6日も昼前になってやっとつながりました。応対した「視聴者の意見」担当者は、前日のビデオを確認して「確かに沖縄はありませんね。ご指摘はわかります」と認めましたが、「どういう意図で沖縄を載せなかったのか、番組の担当者に問い合わせてほしい」という当方の要求には、「それはできないことになっています」の一言でした。

 いくらフジ・サンケイグループとはいえ、沖縄抜きの「在日米軍基地の地図」を堂々と流す番組がある現実を黙って見過ごすことはできません。


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「集団自決」展の後援を拒否した翁長県政

2017年04月04日 | 沖縄・翁長知事

     

 沖縄県紙を読んでいないと分からない翁長県政の重大問題がまた起こっています。

 「『集団自決』(強制集団死)の軍命を明記するよう活動する『9・29県民大会決議を実現させる会』(仲西春雅世話人)が、県庁(写真中)1階の県民ホールで『集団自決』や会の活動などを展示するパネル展を企画して県教育庁に後援を依頼したものの、『後援の規定』を理由に断られていたことが31日までに分かった。同庁は取材に対し、後援を認めれば会を支持することになるとして『議論のある問題で教育庁が特定の立場をとることはできない』と話した」(1日付琉球新報)

 「議論のある問題」で「後援」はできないという口実で公共の施設を使わせないのは、保守自治体が市民の自主的活動に圧力をかける常とう手段ですが、それが沖縄県でまた起こっているのです。

 日本軍による強制集団死(「集団自決」)は沖縄戦の歴史の要といえます。それを「議論のある問題」とする県教育庁の言い分は異常です。
 しかも、パネル展を企画している「9・29県民大会決議を実現させる会」は、沖縄の現代史において重要な意味をもつ会です。
 「9・29県民大会」とは、2007年9月29日に宜野湾市の海浜公園で行われた「教科書検定の検定意見撤回を求める県民大会」。11万人(主催者発表)という「沖縄現代史上にも前例を見ない大群衆」(新崎盛暉氏『日本にとって沖縄とは何か』岩波新書)が結集しました。同年3月30日の教科書検定で文科省が「集団自決」から日本軍による強制の記述を修正・削除したことへの抗議集会です。これには当時の仲井真弘多知事、翁長那覇市長、仲村守和教育長らも出席しました。
 新崎盛暉沖縄大名誉教授はその意義をこう述べています。
 「沖縄社会が、改めて『沖縄戦とは何か』、『日本軍とは何か』を大衆的に問い返すきっかけになったのは、沖縄返還の際の自衛隊の強行配備である。二度目が八二年の教科書検定三度目が〇七年だといえよう」(前掲書)

 この県民大会の決議実現をめざして「集団自決」や教科書問題の真相を世代を超えて伝える活動をしている会が、大会から10年になるのを記念して企画したのがパネル展です。その度重なる要請を拒否して県庁ロビーを使わせない県の対応は言語道断と言わねばなりません。

 重要なのは、翁長県政が市民の活動や沖縄戦の歴史の普及に背を向けているのはこの問題だけではないということです。

 県立博物館・美術館が「政治色が濃い」という理由で孫崎享氏の講演に会場使用を拒否したのは記憶に新しいところです(問題化したのちに撤回)。使用を拒否した担当者は「県の指導があった」(3月4日付琉球新報)と述べています。

 また、首里公園にある第32軍司令壕の説明板(写真右)から、仲井真県政時代に「慰安婦」「日本軍による住民虐殺」の文字が削除された件で、同壕説明板設置検討委員会の元委員長・池田榮史琉大教授ら元委員3人が、その後明らかになった事実をもとに県に文言の復活を要求しましたが(2016年9月26日)、翁長県政はこれに背を向けたままです。

 安倍政権が自衛隊配備を強行しようとしている石垣市では、「南京事件」や「従軍慰安婦」の記述を理由に今年度から副読本の使用を中止しようとしています。

 こうした一連の動きは、市民活動への圧力とともに、沖縄戦をはじめとする戦争の史実を教育・普及することを妨害するものです。安倍政権が日米安保体制を強化し、戦争法(安保法制)の下で自衛隊と米軍の一体化を進めようとしていることとけっして無関係ではありません。

 琉球新報の社説(2日付)は、「教育庁は歴史の事実を後世に伝える重要性を再認識すべきだ」と結んでいます。しかし、問題は教育庁のレベルですむことではありません。
 最大の責任は翁長知事にあります。翁長氏が事の経過を知らないはずがありません。教育庁の判断は翁長氏の判断です。そもそも教育長の任免権は知事にあるのです。万々一、翁長氏が知らなかったとしても、報道によって知った時点で教育庁を一喝し、会の企画を後援すべきですが、翁長氏はそれをしていません。

 県博の問題も、第32軍説明板の問題も、追及すべきは翁長氏の責任です。
 抽象的な「県」や担当部署の責任を問いながら、肝心の翁長氏の責任は問わない「報道」を、いつまで続けるつもりでしょうか。


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「しんぶん赤旗」が元号表記を復活させた意味

2017年04月03日 | 天皇制と日本の政治・政党・政権

     

 日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が、4月1日付から1面の日付表記に元号を復活させました(写真左)。なぜ今、「元号復活」なのでしょうか。

 共産党は1989年1月7日の改元(「昭和」から「平成」)の翌日から「赤旗」での元号表記を廃止しました。それを復活させた「理由」については、同じ1日付「赤旗」の2面下隅に「お知らせ」として小さくでているだけです。「『しんぶん赤旗』は、読者のみなさまのご要望を受け、本日付より1面題字横の日付に元号(平成29年)を併記します

 共同配信記事(2日付中国新聞)には次のような「党幹部」の発言が載っています。「保守層の購読者の割合が増え、『西暦を元号に換算するのが面倒』との声が多く寄せられた」。共同通信はこれを「『天皇制を想起させる』と元号使用と距離を置いてきた同党方針の変更」としています。

 元号を復活させた「理由」の「読者の要望」とは、「保守層の購読者」の「西暦に換算するのが面倒」という「要望」のようです。元号の扱いというきわめて重大な政治方針がこうした「理由」で変更されるとは驚きです。しかし、共産党の浅薄な説明とは裏腹に、今回の方針変更にはきわめて重大な意味が含まれています。

 そもそも元号は、中国が「皇帝は時間も支配する」としてきたことにならったものです。「大化」(645年)以来、歴代天皇によって頻繁に改元されてきましたが、それを「一世一元」制にしたのは明治維新の岩倉具視だといわれています。
 「岩倉はこの(中国のー引用者)『時間支配』の観念を採り入れたのではなかったか。天皇を国民に広く、永く記憶させる装置の一つとして、元号を使ったのである。狙いは成功した。私たちはいま、明治、大正、昭和といった元号からそれぞれの時代をイメージしている」(高橋紘著『平成の天皇と皇室』文春新書)

 敗戦後、「1960-70年代の支配構造と、その中での天皇の地位に転換のきざしがあわられたのは、79年に至る元号法制化運動の過程」(渡辺治著『戦後政治史の中の天皇制』青木書店)でした。「自民党はじめ日本の支配勢力は戦後、一貫して天皇制イデオロギーの復活強化をはかってきました。『紀元節』復活としての建国記念日の制定、元号の法制化は強行しましたし、靖国神社の公式参拝は国家護持の既成事実をつくるのがねらいだった」(『戦前・戦後の天皇制批判』共産党ブックレット)のです。

 元号が「天皇制支配」「天皇制イデオロギーの復活強化」と密接な関係にあることは明白です。だから共産党もこれまで機関紙の表記に使ってこなかったのです。その重大な理念・政策を「保守層読者の要望」で放棄したことは、同党にとって特筆すべきことだと言わねばなりません。

 共産党は2016年1月4日、憲法に規定されている国事行為ではない「天皇の国会開会式臨席」を容認し、結党以来初めて出席しました(写真中は議場で天皇に頭を下げる志位和夫委員長)。今回の元号表記復活はそれに次ぐ゛天皇(制)への接近”と言えるでしょう。

 重大なのは、これが共産党だけの問題ではすまないということです。

 「森友問題」の核心は、再三述べてきたように、安倍首相・昭恵夫人が教育勅語を基本とする森友・籠池氏の「教育」を賛美していることです。稲田朋美防衛相も国会で教育勅語の礼賛を公言しました。
 さらに安倍政権は、教育勅語を教材として用いることを「否定されない」とする驚くべき答弁書を閣議決定(3月31日)しました。教育勅語の本質は「一身を捧げて皇室国家の為につくせ」(文部省の「通釈」)ということです。

 また安倍政権は、18年度から幼稚園や保育所でも「日の丸・君が代」に「親しむ」ための指針を決定しました(厚労省は3月31日)。森友・塚本幼稚園の全国化を図ろうというわけです。さらに17年度から「道徳」が「教科」となり、国家主義に基づく「教科書検定」の内容が先日明らかになりました。

 憲法を無視した「天皇のビデオメッセージ」、「生前退位議論」、「教育勅語」、「日の丸・君が代」、「道徳教育」…怒涛のような一連の動きは、明らかに天皇制イデオロギーの復活・強化を図るものです。それは「改憲草案」で「天皇の元首化」を明記している安倍・自民党の改憲策動と一体不可分です。

 「赤旗」の「元号表記復活」は、こうした流れの中で行われたのです。そのことの意味を共産党員・支持者はどう考えているのでしょうか。


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「翁長与党」(オール沖縄)はなぜ百条委に反対するのか

2017年04月01日 | 沖縄・翁長知事

       

 沖縄県議会2月定例会の最終本会議(3月29日)で、安慶田光男前副知事の「口利き疑惑」を調査する百条委員会の設置が、否決されました。翁長県政与党(日本共産党、社民党、社大=「オール沖縄」諸党派)と維新が反対したためです。県政与党の「百条委設置反対」はきわめて不可解です。

 経過を振り返ってみましょう。

 安慶田氏の「教員採用試験口利き疑惑」が表面化したのは1月18日。その後「教育庁幹部人事」への介入(圧力)疑惑も発覚。安慶田氏は疑惑を全面否定したまま副知事を辞任(1月23日)。
 一方、当時の教育長の諸見里明氏が、確かに安慶田氏の口利きはあったとする「告発文」を公表(同24日)。安慶田氏は諸見里氏を「名誉毀損」で告訴(同26日)。諸見里氏は「逃げも隠れもせず受けて立つ」と言明(同日)。

 県議会(文教厚生委員会)は、安慶田氏(2月20日)、諸見里氏(3月27日)両氏を参考人として招致。両者の言い分は真っ向から対立。

 この間、翁長知事は、「任命責任者として責任を大変自覚している」(1月24日の記者会見)としながら、真相究明や自らの責任の取り方については口をつぐむ。

 一方、県病院事業局の人事をめぐっても、伊江朝次局長が「県幹部から『辞めてくれ。まだ続けるのか』と言われた」(1月28日付琉球新報)とする疑惑が発覚。

 こうした中、県政野党の自民党が、「翁長雄志知事がどう関わっていたかも(百条委の中で)一緒に調査するのは当然だ」(照屋守之沖縄自民党幹事長、3月28日付沖縄タイムス)として百条委員会の設置を要求。

 これに対し翁長与党は、「議会として…真相究明に取り組んだ。安慶田、諸見里両氏の意見の違いは訴訟に発展しており、百条委の調査を並行させるべきではない」(3月30日付沖縄タイムス)として設置に反対。採決の結果、反対多数で百条委の設置は否決された。

 以上の経過から、翁長与党が百条委の設置に反対する理由らしき理由はただ1つ、「訴訟」になっているから議会での追及を同時に行うべきではない、ということです。
 これは驚くべき言い分です。なぜなら、司法と議会の調査権は別で、訴訟になっていても議会は独自の調査権を発揮して政治的道義的責任を追及すべきだ、というのが共産党、社民党など国政野党の一貫した主張だからです。現にそうやって東京では豊洲市場移転問題で百条委員会を設置し、国政では安倍昭恵氏らの証人喚問を要求しているではありませんか。

 都議会の百条委設置について、「百条委設置は…日本共産党都議団が早くから提案してきたものです。…全会一致で百条委設置を決めたことは、都民の声が都政を動かすことをはっきり示しました」(2月24日付「しんぶん赤旗」主張=社説)とまで言って百条委の意義を強調したのは共産党です。

 共産党や社民党など「オール沖縄」党派の、都議会や国会での主張・対応と、沖縄県議会でのそれは明らかなダブルスタンダードと言わねばなりません。

 なぜこうした理不尽なことが起こるのか。県政与党は、翁長氏自身の疑惑を含む県政の疑惑は追及しないでそっとしておくことが「翁長知事を支える」ことだと考えているからではありませんか。安慶田氏の参考人招致の時も「ほかの与党委員も…持ち時間を使い切らずに質問を終えた」(2月21日付沖縄タイムス)と、まるで国会での自民党のように消極的な姿勢を示したことにもそれは表れています。

 「質問や委員会を通し、採用試験の口利きの事実や教育庁幹部人事への翁長雄志知事の関与など、県政に向けられた疑惑の真相が明らかになったとは言えない。…二元代表制の一翼を担い行政を監視する県議会において、百条委を設置しないという対応は、チェック機能を十分果たしているとは評価しがたい。…本来、県議に与野党の区別はない。県議の役割は、政治的立場が同じ県政を守ることではなく、県政に浮上した疑惑を有権者の代表として鮮明にすることだ」(3月30日付沖縄タイムス、銘苅一哲記者の「解説」)

 その通りです。翁長氏や「オール沖縄」に゛遠慮がち”な報道・論調が目立つ中、注目される記事(指摘)です。

 諸見里氏は「県議会から要請があれば証人として出たい」(3月27日の県文教厚生委員会、同28日付沖縄タイムス)と明言しています。百条委員会を設置して、安慶田氏の一連の疑惑、そして翁長氏自身の関わりを徹底的に追及すべきです。


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