アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「北朝鮮の挑発」という「報道」の不当性・危険性

2017年04月29日 | 日米関係とメディア

     

 「北朝鮮による度重なる挑発行為は断固容認できない」。菅官房長官は29日の会見で、北朝鮮の「ミサイル発射」に対しこう述べました。
 「北朝鮮の挑発」。それは日本政府の常とう句であり、同時に、日本のメディアが1社の例外もなく繰り返し使っている言葉です。

 それは果たして事実に基づいた「報道」でしょうか。

 「挑発」とは、「相手を刺激して事件などが起こるようにしかけること」(『広辞苑』)です。
 朝鮮半島の緊張を高めているこの間のアメリカ(トランプ政権)と日本(安倍政権)、そして北朝鮮の主な動きを振り返ってみましょう(日時は日本時間)。

★3・1 米韓合同軍事演習開始(過去最大規模。金正恩委員長の「斬首作戦」を含む)。
★4・7 トランプ大統領、シリアをミサイル攻撃(「アサド政権による化学兵器使用」の証拠示さず)。
★ 同 トランプ大統領、安倍首相との電話会談で「全ての選択肢がテーブルの上にある」。安倍氏「高く評価する」。
★4・9 トランプ大統領、原子力空母カール・ビンソンの朝鮮半島近海への展開を指示。
★4・10 米ティラーソン国務長官、シリア攻撃は北朝鮮をけん制したものと示唆。
★4・11 トランプ大統領「北朝鮮へ無敵艦隊を送っている」。
☆ 同  北朝鮮、最高人民会議(国会)で「外交委員会」を復活。
★4・13 トランプ大統領「(北朝鮮制裁を)中国がやらないなら、米国と同盟国でやる」。
★ 同  安倍首相「(北朝鮮は)サリンを(ミサイルの)弾頭に付けて着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」(参院外交防衛委員会)。
★4・14 米、アフガニスタンで「大規模爆風爆弾(最強の爆弾)」を初使用。トランプ大統領「北朝鮮は問題だ。問題は対処される」。
★ 同 米NBCが「北朝鮮に核実験の兆候があればアメリカは先制攻撃する」と報道。
☆4・15 北朝鮮、「故金日成主席生誕記念日」で軍事パレード。「新型ミサイル」初公開。
☆4・16 北朝鮮、「ミサイル発射」(失敗)
★4・17、18 米ペンス副大統領、韓国と日本を相次いで訪れ、「平和は力によってもたらされる」。安倍氏「支持する」。
★4・23、24 カール・ビンソンと海上・航空自衛隊が共同「訓練」(写真右)。
☆4・25 北朝鮮、「朝鮮人民軍創建記念日」で砲撃訓練。
★4・26 米、最新鋭迎撃システム(THAAD)の発射台やレーダーを韓国に搬入。
★4・27 トランプ大統領、「北朝鮮政策」を上下両院の全議員に異例の説明。
★4・28 米、国連安保理で北朝鮮に対する「国際的包囲網」構築を訴え。
☆4・29 北朝鮮、「ミサイル発射」(失敗)。
★ 同  カール・ビンソン、日本海へ。日本海で日米・米韓共同「訓練」(予定)。

 以上の事実経過を先入観抜きで見れば、どちらが「挑発」しているかは明白ではないでしょうか。圧倒的軍事力で「相手を刺激して事件などが起こるようにしかけ」ているのは、アメリカ=トランプ大統領であり、それに忠実に追随している日本政府=安倍首相です。

 問題は北朝鮮の「核開発・保有」だ、と言うかもしれません。もちろん核開発・保有は許されるものではありません。しかし、その背景には、いまだに朝鮮戦争が終結していない(休戦中)状況で、北朝鮮が「平和協定」へ向けた対話を望んでいるにもかかわらず、アメリカがそれに耳を貸さず、韓国と一体となって北朝鮮に軍事圧力をかけ続けている(合同軍事演習の定例化など)実態があることを見落とすことはできません。

 「核」についても、アメリカが自国の膨大な核兵器保有は棚上げし、またインドなどの「核保有」は容認しながら、北朝鮮にだけ「放棄」を迫るのは、大国主義以外の何ものでもありません。北朝鮮に「核放棄」を求めるなら、当然アメリカ自身も核兵器を放棄すべきでしょう。そもそも「核兵器禁止条約」に反対するアメリカや日本に北朝鮮を非難する資格があるでしょうか。

 「北朝鮮の挑発」と言い続ける「報道」に正当性がないことは明らかです。自ら事実を検証することなく、政府の言い分(用語)を引き写しするのではメディアとしての基本的資格が問われます。

 重大なのは、「北朝鮮の挑発」と繰り返すことは、正当性がないだけでなく、日米両政府の「北朝鮮敵視」に加担することになり、アメリカによって軍事衝突(戦争)が引き起こされた時には、米・日の責任を棚上げし北朝鮮を敵視することにつながることです。
 それはかつて帝国日本の朝鮮・中国侵略・植民地化を新聞が賛美したことの二の舞いと言わねばなりません。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする