アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

『ガザからの報告』にみる<上>地獄の現状

2024年07月17日 | 国家と戦争
   

 34年間パレスチナを取材し発信し続けているジャーナリスト・映画監督の土井敏邦氏が今月、『ガザからの報告 現地で何が起きているか』(岩波ブックレット)を出版しました。提起されている重大な問題を2回にわたって考えます。

 第1回は、イスラエルのジェノサイドに遭っているガザの現状です。

 2023年10月7日(ハマスによる越境攻撃)以降、報道はあふれていますが、土井氏は「膨大な情報の中で、ガザ住民の一人ひとりの日常生活と生の声が伝わってこない」として、同書を執筆しました。

 同書はガザに暮らす土井氏旧知の「ジャーナリストM」の体験、取材による情報を土井氏が電話やメールで聞き(読み)とったものです。「地べたで生きる“ガザの民衆”」(土井氏)の実態を同書から抜粋します。

飢餓状態…住民は飢餓状態。だから倉庫や店を襲い略奪するのです。路上で一片のビスケットを乞う人がいます。(10月24日)
 相変わらず、缶詰は期限切れです。トルコやエジプトから、ゴミとして捨てられるようなサンマや豆などの缶詰を送ってきます。(2月8日)

蔓延する感染症…人びとは雨水をためて飲んでいます。テント暮らしの子どもの多くが病気です。(12月8日)
 ひどい衛生状態で、シャワーを浴びる水もない。歯磨きもできない。トイレも下水もない。皮膚病、肺の病気などが広がっています。パンデミック(感染症爆発)が広がっています。とにかく薬がないのです。(12月29日)
 ガザの子どもたちのほとんどが貧血に苦しんでいる。がん患者は治療を受けられない。病院では麻酔なしで手術が行われている。(1月)

精神・モラルの破壊…人びとは疲れ果て、うつ状態にあります。(10月24日)
 ほとんどの子どもは精神的に破壊されています。目に見えて犯罪が急増しています。(12月29日)
 今、ガザには木製の電柱がありません。ほとんどの電柱が盗まれ、料理する薪にされるのです。たくさんの窃盗団が、住民が避難している家から盗んでいます。彼らはプロではなく、若者たちのグループです。病院に置かれた遺体のポケットからスマホや財布が盗まれます。(4月26日)
 今回の戦争で住民は多くのものを失いました。しかし最も深刻で破壊的な喪失は、私たちの倫理とモラルです。これは人的な喪失、建物の破壊のような物理的な喪失よりもっと危険なことです。この倫理とモラルの喪失がこの攻撃が終わった後のガザの住民の未来に深刻な影響を与えることは確かです。(4月26日)

 土井氏は琉球新報への寄稿でこう述べています。

「遠い国に住む私たちは、「死者4万人」「避難者は百数十万人」という数字にガザの現状をわかったつもりになる。しかしその数字では私たちはその一人ひとりが被っている“苦しさ”“痛み”に思いは至らない。…“同じ人間”として何ができるのか、私たちは今問われている」(2日付琉球新報、写真右)

 あすは、この本でかなりのスペースが割かれている「ハマス」について考えます。
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