アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「皇太子夫人雅子氏の人権」と「象徴天皇制」

2017年04月15日 | 天皇制と差別・人権・民主主義

     

 ◇いまは15日の正午。今日にもトランプ大統領による北朝鮮への武力行使が予想され、情勢は緊迫していますが、今のところ(幸いにも)特別の動きはないようなので、別のテーマで書きます。

 皇太子が13日、マレーシア訪問に出発しました。雅子夫人は今回も同行せず、東宮御所で見送りました(写真左、中)。マレーシア側は夫婦での訪問を招請しましたが、皇太子一人の訪問になりました。このことについて皇太子は、出発前の記者会見でこう述べています。

 「雅子も…できれば訪問したい気持ちでおりましたが…今回は私一人で訪問することとなりました。…雅子は、治療を続ける中で、体調に気を付けながら、努力と工夫を重ね、公私にわたってできる限りの務めを果たそうとしております」(11日、宮内庁HPより)

 雅子氏が病気のため皇太子に同行できないことは少なくありません。「皇位継承」が問題になっている中、天皇制の存続を望んでいる人びと、とりわけ明仁天皇と美智子皇后が最も頭を痛めているのは、実はこの問題、雅子氏は皇后としての活動ができるのか、という問題ではないでしょうか。なぜなら、明仁天皇や美智子皇后は「象徴天皇制」において「皇后」はきわめて重要な役割を果たすものと考えており、実際に皇后美智子はそれを実践してきたからです。

 美智子皇后は2002年の誕生日にあたり記者団から「これからの女性皇族の役割」について聞かれ、文書でこう回答しています。

 「皇后の役割の変化ということが折々に言われますが、私はその都度、明治の開国期に、激しい時代の変化の中で、皇后としての役割をお果たしになった昭憲皇太后(明治天皇夫人ー引用者)のお上を思わずにはいられません。…昭憲皇太后の御時代に、近代の皇后のあり方の基本が定まり、その後、貞明皇后(大正天皇夫人)、香淳皇后(昭和天皇夫人)がそれぞれの時代の要請にこたえ、さらに沢山の新しい役割をお果たしになりました。…先の時代を歩まれた皇后様方のお上を思いつつ、私も時の変化に耐えうる力と、変化の中での判断を誤らぬ力が与えられるよう、いつも祈っています」(宮内庁HPより)

 皇后美智子が明治以降の皇后の活動をふまえ、さらに戦後の「象徴天皇制」という「時の変化」の中で「新しい役割」を果たそうとしてきたことは明白です。その結果、「外国訪問」をはじめ常に天皇に寄り添って同行する「皇后像」をつくってきました。
 明仁天皇と美智子皇后がこうした「皇后像」の継承を雅子氏にも求めていることは明らかで、雅子氏も当然それを痛いほど感じているでしょう。それがさらに病気を悪化させていることは想像に難くありません。

 しかし、皇后美智子が実践してきた「皇后像」はけっして評価されるものではありません。というより、評価され正当化されるべきものではありません。なぜなら、こうした「皇后像」は憲法の「象徴天皇制」を逸脱するものだからです。

 憲法は第1章(第1条~第8条)で「天皇」について規定していますが、それらはあくまでも「天皇」についてであり、憲法に「皇后」の文字は一つもありません。
 皇室典範はどうでしょうか。典範でも皇后は第5条で「皇族」の筆頭に挙げられているだけで、特別な規定は何もありません。
 憲法、皇室典範に基づく限り、皇后が行わなければならない任務(仕事)・義務は何もないのです。

 では皇后美智子が行っている「外国訪問」や「被災地訪問」などはどうなるのか。これらはいずれも憲法が規定する「天皇の国事行為」を逸脱したいわゆる「天皇の公的活動」への同行です。
 天皇明仁は「象徴天皇制」のあり方を自分で判断し「公的活動」を拡大してきました。時の政権はそれを政治的に利用してきました。とりわけ「皇室外交」の政治利用は顕著です。「公的活動」の実行・拡大は、天皇と政権(自民党)が結託した憲法逸脱行為と言わねばなりません。皇后美智子氏の活動はその一環なのです。

 したがって「雅子皇后」が「美智子皇后」を踏襲する必要はまったくありません。いいえ、むしろ踏襲すべきではないのです。
 しかし、天皇制の存続を図る人びと(勢力)からは、「外国訪問」を含め「雅子皇后」にさまざまな活動を要求するでしょう。次期天皇である皇太子も先の会見のように「できる限りの務め」を求めています。周囲のこうした要求が雅子氏にとってきわめて大きな圧力となるのは必至です。

 病気の人にこうした圧力をかけて追い込むことは、人権侵害も甚だしいと言わねばなりません。
 長女の愛子さんに対しても同じです。愛子さんが学校へ行った行かないを宮内庁が発表しメディアで取り上げている光景はきわめて異常です。「不登校」に対するこうした登校刺激・圧力も人権侵害にほかなりません。

 雅子氏や愛子さんに対するこうした人権侵害がなぜまかり通っているか。「象徴天皇制」があるからです。もちろん雅子さんら皇族だけではありません。天皇自身の人権も「象徴天皇制」の名の下に数々侵害されています。天皇の世襲制・終身制のもその1つです。

 憲法の中心は「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利」(第11条)という人権尊重です。その憲法の中に、基本的人権を侵害する「象徴天皇制」があっていいのでしょうか。
 私たちがいま考えなければならないのは、「生前退位」の問題ではなく、憲法と「天皇制(象徴天皇制)」の関係そのものではないでしょうか。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする