角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

旅人の想い。

2016年04月26日 | 実演日記





今日の草履は、東京都江東区の男性のオーダー草履です。ご希望配色は「紺」と「オレンジ」。おそらくこれまで、この組み合わせは編んだことがなかったんじゃないでしょうか。展示在庫として編む配色は、どうしても私の既成概念が働きます。オーダーとなったからこそ編んだ配色でしたが、なにほど違和感のないものに仕上がりました。本日の便で出発しました、早速履いてくださいね~(^^)/

今日現在角館の桜たちは、武家屋敷通りの枝垂れ桜で半分ほど散りました。檜木内川堤のソメイヨシノで散り始めといった感じです。一両日には本格的な桜吹雪となり、GW突入と同時に葉桜となるでしょう。少し皮肉な気もしますが、これも致し方ないと思います。
今年も大勢の人々、さまざまな旅人が角館の桜を愉しみました。それぞれに想いがあったことと思います。

桜が咲き始めた4月20日、埼玉県からお越しの母娘さんと出会いました。二十代前半と思しき娘さんが角館草履をお買い上げです。お二人と角館の桜が話題になり、お母さんがおっしゃるのは…

『去年の10月に亡くなった主人が、一度みんなで角館へ行きたいねって言ってたんです。それが脳の病気だったもんだから思ったより早く…。それで娘と話し合って、お父さんが望んでいたこの時季にしたんです。お父さんの写真を持って桜の前で記念写真撮ってきました~』

亡くなったご主人がきっと一緒に旅をしていると私も思いました。それは母娘さんの満足そうな笑顔に、哀しみの欠片も見えなかったからなんですね。
私が娘さんに、「お父さんが隣で、そんな草履買うんじゃないよって怒ってませんかね」と笑うと、お二人も大笑いしていました。

角館を旅する人々は、みな何かしらの想いを持っています。私たちがそれぞれの想いを分かるはずもありませんし、また知る必要もないでしょう。ただ、単に楽しいだけの旅人ばかりではないという事実を、頭の片隅に置いておきたいものです。
コメント (2)
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