角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

悩みぬいた結論。

2012年05月09日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔五阡円〕
黒や濃紺で統一した草履は、私の中で「カッコいい」の典型例です。女性サイズで編んでもあっさり売れて行きますから、やっぱり「カッコいい」は男女共通の憧れなんでしょう。
最近新たに購入した作務衣も、ひとつを「墨黒」にしました。

大型連休が終わってからの角館は、連日散策にうってつけの好天が続いています。今日も気温が高い割りに湿度が低いですから、気持ちの良い青空の下、お客様のお顔にも笑顔が多いですね。

そしてお客様の多さは今日も続きました。兵庫県からお越しのおばさまグループは、『今くらいならまだ桜があるかと思って計画したんだけどねぇ』。まだ「第二次桜ざんねん旅」は確かにおられますが、新緑の散策目的の方も増えているのでしょう。

おかげさまで角館草履の在庫もだいぶ少なくなりました。25cmに次いで26cmが完売となり、22cmと24cmが残り数えるくらいです。
在庫が少なくなると、ぴったりサイズにお気に入りの配色が合わなくなるんですね。するとオーダーとなるわけですが、お客様によってはそこで迷いが生じます。

静岡県と高知県からお越しのおばさま四人旅。元々静岡県の幼友達のようです。みなさん角館草履に関心はあるのですが、お好きな配色とサイズが合いません。草履そのものも安くないうえに、オーダーすれば別に送料が掛かってしまいます。さらにそもそも論を言えば、角館草履がなければとても困ることはないわけです。

おばさま四人は悩みました。帰りの新幹線時刻が迫っていますから、よくある『少し考えてまた来ま~す』というわけにもいきません。やがておばさまたちが結論としたのは、『いつか桜も見たいし、次の機会にしますぅ』。
縁というのはそういうもので、無理に勧めて良いものではありません。これは草履職人生活で学んだ経験則です。

ところが1分後、『次の機会がやたら早かったみたい…』と照れ笑いのおばさまたち。米蔵を出てすぐ、もう一度「会議」が開かれたようです。今度こその最終結論は、おばさま四人全員定番配色③でオーダーでした。
おばさまたちが草履コーナーに立ち止まってから、この時点でおそらく20分は経っていたでしょう。ラストの数分が最高の笑顔に見えましたね。
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密かな願い。

2012年05月07日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡四百円〕
角館草履は多様な配色が持ち味のひとつと自負していますが、やはりその中にも選ばれ易い色があります。それは一般に「可愛らしい配色」なんですね。圧倒的に女性支持層の多い角館草履では、これもまた当たり前なのかもしれません。

ゴールデンウィークが昨日で終わり、世の中は今日から「普段の日」。当然散策の人数は大きく減ると思いきや、午前10時の開店と同時にお客様が入り出し、午後3時くらいまでは間断ないご来客で賑わいました。正直、ちょっと意外な展開です。

実はこの現象を、もしかしたらの「密かな願い」に思っていました。と言うのは、ゴールデンウィーク終盤の5月5日。そろそろ帰路に着く人も多いですし、桜はない、天気は雨の悪条件。ずいぶんお客様が減るだろうと思いきや、案外そうでもなかったんです。

それは昨日のゴールデンウィーク最終日も同じ現象でした。昨日のブログでも触れた通り、桜の満開日を連休後半に予測して旅を計画された方々が、桜はなくともキャンセルせずお越しなんですね。
そしてこの現象は、連休が明けた今日も続いたということでしょう。

素直に喜びたいのは、東北に、秋田県に、角館にお客様が戻っていることです。去年はゴールデンウィークが終わったとたん、人影はパタっとなくなりました。その寂しさは怖いくらいに感じたものです。
あれから観光キャンペーン等、いくつもの施策が功を奏したのでしょう。この現象を「密かな願い」に思っていたのは、観光に携わるすべての人じゃないでしょうか。

そしてもうひとつ「密かな願い」に思っていたこと。3月15日のブログにご登場の北海道の青年。「母の日」に初任給で草履を贈りたいと言っていた彼から、昨晩ご注文メールが届きました。お母上のみならず、お父上の草履と2足です。

嬉しくないご注文などありませんが、青年があのときの心を持ち続けてくれたことがなにより嬉しいです。
母の日まであと六日。北海道の青年の親を想う心を、角館の草履職人がしっかりと届けてみせましょう。
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2012年桜まつり終了です。

2012年05月06日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔五阡円〕
黒とエンジの組み合わせは、「カッコいい草履」の典型例と思います。女性用にも男性用にもOKの配色は、つまり選ばれるのも早いということでしょう。「今日の草履」も、すでにお客様がお持ち帰り済みです。

今日25cm草履がひとまず完売となりました。またすぐに編みますから、在庫ゼロの期間はそう長く続かないでしょう。ただ他のサイズもだいぶ少なくなりました。「母の日」にご利用をお考えのお客様には、いよいよお早めの準備をお勧めしたいです。

あらためまして、本日をもって「角館の桜まつり」が終わりました。最終日の今日も、思ったより賑わいを見せてくれた角館です。ただ寒いですね。ゴールデンウィーク前半は初夏の暑さ、対して後半は早春の寒さですよ。もしかしたらこの後、もう一度桜が咲くんじゃないですかね。

昨日のブログでも触れましたが、『ちょうど今くらいが満開と思って予約したんだけどねぇ』とおっしゃるお客様が、今日も複数おられました。ほんとに私たちもそう思っていましたから、『この結果は誰も予想できませんでしたよ』とお答えすると、いくらか心が落ち着くようです。
「第二次桜ざんねん旅」は、例年より多いような気がします。

夕方閉店間際にお越しのおばさま三人旅。『名古屋から今着いたとこ。桜はなかったけど、温泉を愉しんで帰るわっ』。うちのおひとりが閉店の「蛍の光」を聞きながら、お好きな配色をお選びくださいました。
桜がなくともキャンセルせずお越しくださったお客様には、必ずや何かしらの良き思い出を作って欲しいものです。

考えてみれば観光シーズンと云われる4月~11月の期間で、桜が咲いている日数などほんの僅かしかありません。つまり大多数の日は、桜以外の思い出をお持ち帰りになるわけです。
明日からまた縁あって出会う方々に、桜だけではない角館をご覧いただきますかっ。

2012年角館の桜まつりにお出掛けくださり、草履実演をご覧くださったみなさま、そしてお買い上げくださったみなさま、誠にありがとうございました。またいつかお会いしたく存じます。
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まもなく連休終了です。

2012年05月05日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
金の和柄が美しいベースに、セオリー通りのエンジを組み合わせました。やはりこうした色調が最も早く選ばれるような気がします。昨年末から今年の桜まつり用にずいぶん編んだ草履たちも、サイズによってはそろそろ在庫の底が見えてきました。

今日も朝から肌寒い一日で、夕方近くからは冷たい雨も落ちています。思えば4月中旬くらいまでは、ちょうど今頃に満開を迎える予測をしていました。それは私たち地元民だけじゃなく、県外のお客様もそう見越して今日の角館に降り立ったわけです。

栃木県からお越しのご夫婦旅。『あらっ、草履を編んでらっしゃるの?』と奥様が実演を覗き込むと、素材のイ草に気づかれました。そして角館草履のご説明が終わる頃には、『職員室で履いたらいいんじゃない?』とご主人と共にお買い上げです。
ご清算のあとご主人がおっしゃるのは、『てっきり今くらいが満開と思ってたんだけどねぇ』。

3日からのゴールデンウィーク後半に入って、この言葉を何人から言われたか分かりません。新幹線もホテルも事前に予約が必要ですから、みなさんギャンブルのように満開日を予測するわけです。
今年は地元民を含め、このギャンブルに勝った人は僅かしかいないでしょう。

さて先のご夫婦。「職員室」と聞いたので、『なにかの学校ですか?』とお訊ねすると、『いえ、保育園と幼稚園をやってましてね』。なるほど、つまり園長先生ご夫妻というわけです。
近年保育園や幼稚園で、子どもたちが草履で過ごすという活動を聞きます。園長先生ご夫妻が率先するならば、また効果も上がるでしょう。

保育士を目指すわが家の長女は、近々また保育実習のため角館へ戻るとのことで、この連休は青森で過ごす予定でした。しかし仙台の次女が帰省するのを知って、やっぱり帰りたくなったようです。二人とも正味たったの三日間をふるさとで過ごし、明日それぞれの学校の地へと戻って行きます。

ゴールデンウィークも明日が最終日、角館を散策される人影もいつもの日曜日くらいに戻るでしょう。みなさんいろんな思い出を胸に、明後日からまたいつもの生活が始まるんですね。
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過分な褒め言葉。

2012年05月04日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
「緑好きさん」ほどではないにしても、「紫好きさん」もなかなか多いです。女性に限定されるものの、年齢に偏りはないような気がします。
昨日横浜市からお越しの女性は、「紫づくし」でオーダーとなりました。「今日の草履」とはまた別の配色をお届けするつもりです。

ゴールデンウィークの後半戦は、桜がほぼ終わったうえに天気も良くありません。太平洋側のような大雨にはならないものの、雨が降ったり止んだりで気温も低いですね。
それでも思ったより人影が減らず、今日も終日賑わいを見せた西宮家です。

角館草履をお買い上げくださる方で、リピーターさん以外はみなさん偶然の出会いでしょう。その「縁」を日々のフログでご紹介しているわけなんですが、ときにこちらが思うよりも遥かにこの縁を喜んでくださる方がいます。

東京からお越しのおばさまひとり旅。穏やかなお顔立ちで、どこか品の漂う物静かな雰囲気のおばさまでした。展示パネルの草履をにこやかに眺めながら、『私に合いそうな色をひとつと、20歳代の娘にもひとつ選んでくださいますか?』。
角館草履の説明を聞く前にご購入をお決めになる、稀なケースですね。

おばさまはお帰り際、『まっすぐ駅へ向かわないで良かったですぅ。おかげで記念になる草履と出会えました。ありがとうございますぅ』。
どう考えてもお礼を述べるのは私のほうです。ここまでご丁寧なお言葉をいただくと、なんと言いますか恐縮の極みでしたね。

東京のご出身で今は岩手県八幡平市にお住まいのおばさまが、娘さんと共にお越しくださいました。やはりどこか高貴な雰囲気を持つ母娘さんペアでしたね。
展示バネルの草履をお二人にこやかに眺めてお出ででしたので、素材や健康効果などをご説明しました。するとおばさまの笑顔が一層増し、娘さんへ『あなたにも買って差し上げるわ。好きな色を選んでっ』。

お帰り際に、『今日はとても幸せな気分ですぅ。初めて歩いた角館も素敵でしたし、このような草履にも巡り会えましたもの。またいつかお会い出来る日を、楽しみにしておりますぅ』。
ご丁寧なご挨拶をいただき、おもわず正座に座りなおすところでしたよ。

あまりにも過分なお褒めが続いたせいか、はたまたゴールデンウィークの忙しさのせいか、少し疲れが見えてきました。今日は早々に就寝といたします。
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熟年夫婦旅。

2012年05月02日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔五阡円〕
「シブい」「粋」「カッコいい」、そんな評価がぴったり合う配色ではないでしょうか。男性であれば年齢問わずお勧めできますね。
ん!? そういえば今日お越しのおばさまは、ご自分用の配色に「シブ目」をお選びでした。男女で分ける必要はありませんか。

開花宣言から夏日が続く角館は、今日も汗ばむ陽気になりました。いきなり「咲かせられた」感じの桜たちも、この暑さで限界が近そうです。明日からのゴールデンウィーク後半は、若くて元気の良い桜たちに踏ん張って欲しいところですね。

岐阜県からお越しのご夫婦旅。『5回目でようやく桜が見られましたよ』とおっしゃるご主人。感慨ひとしおといった感じでした。
奥様が角館草履を気に入ってくださると、ご主人は『買ってやるから好きなの選べよ』。私が『優しいですねっ』と言うと、『いやいや、もう何年かは元気でいてもらわないと』。照れ隠しがバレバレのお父さんでした。

東京からお越しのご夫婦旅。こちらは奥様がご主人へお勧めです。やはり私が『優しい奥さんですね』と言うと、『これから年金もらう金づるだから、まだしばらくは元気でいてもらわないとっ』と奥様。
こちらの奥様も照れ隠しがバレバレでしたね。

日々の実演では、こうした熟年ご夫妻との出会いがとても多いです。きっと子どもたちも社会へ出て、親としての務めはひとまず一段落といった年代ですね。わが家にもやがて訪れるであろう、ちょっと憧れの年代でもあります。

昨夕、とても意外な訃報が届きました。スポーツマンで質実剛健の言葉がしっくり来る知人が、46歳の生涯を閉じたとのことです。病名はすい臓ガン、見つかったときにはすでに手遅れだったと聞きました。

子どもたちを社会へ送り出してから、夫婦でゆっくり旅をする。こんなことが手の届かない夢になってしまう。やり切れません。
心からご冥福をお祈りしたいと思います。
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