角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

飛ぶ話。

2009年05月28日 | 家族の話


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
赤基調の金粉和柄プリントをベースに、合わせは朱色の小花プリントです。
パっと明るい色調が、派手よりも可愛らしく見えますね。和柄プリントがなかなかイイ演出と思います。

公開実演を休止して六日が経ちました。拘束されないこの時期をどんなふうに過ごしているかと言いますと、実は一日の数時間を入院中の叔母の介護に充てています。
介護の中でも私の担当は、もっぱら話し相手と説得役なんですね。血縁の中で最も性格が似ている私と叔母は、元気な頃よくぶつかりました。でもこうして病弱の身になると、なんでか私の言うことはよく聞いてくれます。

じっちゃとばっちゃの四十九日法要が済んだ翌24日、日付が25日に変わって間もなくの深夜、叔母の入院先から電話です。どうやら認知症状が出たらしく、看護師の手薄な深夜帯は家族の協力が必要との要請でした。
すぐさま病室へ行くと、ズボンだけ履き替えてベッドに座り込む叔母。自身の置かれている環境が分らなくなり、とりあえず動こうと思ったようです。ここから私の「説得役」がはじまることとなりました。

担当医からは、事前にこの予測を知らされていました。前述のじっちゃとばっちゃも晩年は認知症が顕著で、福祉サービスを受けない日はカミさんも介護応援のために生家へ戻るのが日常でした。特にばっちゃは「夢物語」をよく喋る人で、その様子をカミさんから聞くに、よくそれだけの作り話が次から次へと生まれるもんだと感心したものです。
カミさんは大笑いしながら私や娘たちに話して教えるのですが、これはカミさんの隠れた逞しさであると私は思っています。

そして今、私が叔母の「夢物語」に感心しています。これを真っ向から対峙するとしたら、おそらく三日と持たないでしょうね。なにしろ叔母のウソ話は故意でありませんから、後ろめたさもないので顔色も変わりません。でも喋る内容は明らかにありえないワケです。
かつてカミさんから聞かされていたばっちゃとの様子を私なりに解釈し、私もこれを「楽しもう」と思っています。

フツーの会話が突然ひとりだけ別の話に移ることを、誰から言い出したのかわが家では「話が飛ぶ」と表現します。これを見極めるのがなかなか面白いんですよ。
ばっちゃは文字通りよく「飛んで」ました。昨日飛行機で外国へ行って来たなんて話はいくつもありましたね。

昨日は叔母も「飛んで」ました。飛行機でハワイへ行くそうです。そんな話に苦虫を噛み潰した顔をしていたんではなんにも面白くありません。これをどうユーモアに結びつけ、病室を明るくするかが私の手腕にかかるわけです。
さらに叔母の連れ合いもときどき話が飛びますし、介護応援の私のおふくろも一本別の道を歩いたりします。カミさんは近くで必死に笑いをこらえてますよ。

叔母の病状を考えると、この介護もそう長くは続きません。一日一日の話し相手を、私も叔母との思い出に刻みたいと思ってるんです。
月間致知六月号は、「ユーモア」がテーマです。叔母が眠るベッド脇でこの本を読んでいると、人生においていかに「笑い」が重要であるかが分ってきます。イイんじゃないですかっ、末期がん患者の病室に、出来る限りの笑いがあったにしてもねっ。

コメント (2)
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