角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

家族と春。

2014年03月24日 | 地域の話




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き[四阡四百円]
少しシブ目の配色ですが、バラエティの中には必要です。華やかで明るい草履に人気が集まるのはその通りながら、色好みは千差万別、これは性別や年齢とも合致しません。おじいちゃんがいておばあちゃんがいて、お父さんとお母さんと子どももいるのがまず一般的な「家族」。色々な配色が互いを引き立てると置き換えれば、草履も家族に共通するかもしれません。

この春耳に入ってくる様々なニュースや情報は、「家族」というものをあらためて考える機会になっています。親類や友人の子どもが高校・大学に合格した報はとても喜ばしく、家族で大いにお祝いするのがいいでしょう。わが家も一昨日の晩、社会へ巣立つ次女と三女のために、カミさんの生家でささやかな祝宴を開きました。

ただ様々な情報の中には心が痛むものもあります。深刻な病いが見つかった知人もいれば、家族に障がいが分かった知人もいます。広い世間を見ればいくらでもある話が、いざ知人の身に起こるとこちらも平気ではいられません。もちろん私に何かできるものではないにしても、本人や家族の心労を想うと心は晴れませんね。

昨春愛娘を失った友人がいます。当時も単身赴任していた彼は、あれから一年近く一人暮らしに耐えていました。励ます意味の同僚からの誘いも、あるときから断り続けたそうです。仲間と酒を飲んでいるうちは良くても、ひとり部屋に戻ってからが辛かったと言っていました。その身に置かれた者でなければ、心痛を計り知るなど叶いません。

その友人が四月から家族と共に暮らせることになりました。事情を理解してくれた職場のおかげです。彼からのメールには、『自宅から通えるようになりました』とありました。たった一行のメールでも、彼と家族の安堵が確かに伝わりましたよ。
嬉しいニュースを家族で祝うと同じように、悲しい出来事もまた家族で分かち合うのがいいと思うんです。誰かひとりが悪いのじゃなく、皆でその責任を分けるということでしょう。

この春接した報で私が最も嬉しかったのは、娘たちの卒業よりも友人の転勤かもしれません。
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