角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

永遠の0。

2014年03月21日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き[五阡円]
黄金色で統一した配色は、明るさもさることながら神々しささえ感じます。ナイスミドルが自宅でくつろぐ際に、ちょっとリッチな気分でいかがでしょうか。
桜まつり開幕まで一ヶ月ですから、男性用サイズの在庫ももう少し頑張っておきたいと思います。

秋田市からお顔馴染みのご夫婦がお越しくださいました。奥様はかつて角館草履に挑戦したことがあって、私が作った草履台もお持ちです。これまで何度も見学に訪れていますが、決まってご主人とご一緒なんですね。ご主人は九十歳に近く、ここ数年でまた少し足が弱くなったとおっしゃいます。今日も杖をつきながら、一歩ずつ着地を確認して実演席の丸太椅子に腰を下ろされました。

以前奥様から聞いた話で憶えているのは、ご主人が太平洋戦争を兵隊として経験されたということです。復員後秋田市で公務員となり、定年まで勤め上げられました。その数年後に脳梗塞を患い半身が不自由になったんですね。ご主人とはこれまで幾度となくおしゃべりしていますが、優しい語り口の中にも人の「堅さ」がよく分かります。いつでしたか奥様がご主人のことを、『体が不自由ってこともあるんでしょうけど、とにかく頑固な人でねぇ』と話していました。

2月21日のブログに書いた映画「永遠の0」は、とうとう観ることが叶いませんでした。次女の卒業式で仙台を訪れた際も、上映時刻と私のスケジュールがどうしても合いません。そこで映画はひとまずあきらめ、原作本を読むことにしました。西宮家のスタッフさんに読書家がいて、この話をするとすぐに貸してくれました。購入するまでもなく、その翌日の晩から読み始めることになります。

物語の基本はすべて「起承転結」で成り立っています。本を貸してくれたスタッフさんも、その「結」は今思い出しても泣けてくると言っていました。実際読み始めてみると、私は「起」の段階ですでに涙腺が緩んでましたよ。先のブログにも書いた通り、戦地へ赴くことはなかったまでも親父が海軍に属していました。親父亡きあとも戦争体験談を何人かから聞いていましたから、そんな方々の顔が浮かぶんですね。

NHK朝ドラ「ごちそうさん」も、今まさに戦後の混乱期が舞台です。『兵隊さんたちに美味しいご飯を作りたい』と海軍へ志願しため以子の次男は、とうとう還らぬ人となりました。め以子の夫も未だ満州から戻りません。あの時代、国のため、故郷のため、家族のために散って行った多くの軍人の涙と同じだけ、留守を預かる妻や子もまた涙したわけです。

「永遠の0」も、著者が描くのは「家族愛」にほかなりません。最期は自らの意思で敵艦へ突入するのですが、絶命の瞬間まで心にあったのは妻子の顔と思います。時代の酷さと同時に想うのは、いつの世も家族の幸せを願ってやまない人の心ですね。
秋田市のご主人には、まだまだ頑張って角館を訪ねてほしいものです。
コメント
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