しばらくでした。いつこられたんですか。
二時間前に着いたばかりですよ
大蔵さん、さっき明治神宮にお参りしましたが、お月様が出ましてね
月がですか
ちょうど参拝し終わったとき、雲の切れ目からきれいな月がのぞいたんですよ
いつまで滞在の予定ですか
明日、お世話になった方々に転任の挨拶をしたいと思っています
それが終わり次第、な るべく早く赴任する予定です
じゃ、これでもう会えないかも知れませんね
時に大蔵さん、今日本で一番悪い奴はだれですか
永田鉄山ですよ
やっぱりそうでしょうなァ
台湾に行かれたら、生きのいいバナナをたくさん送って下さい
承知しました うんと送りますから、みなで食べて下さい
なるべく早く内地に帰るようにして下さい じゃ、これで失礼します
あなたの家に、深ゴムの靴が一足預けてありましたね
明日の朝早く、奥さんに持ってきて頂くよう頼んで下さい
そんな靴があったんですか
奥さんが知っています
承知しました
いい靴があるじゃありませんか
いや、あの深ゴムの方が足にピッタリ合って、しまりがいいんですよ
わかりました お休みなさい
・・・今日本で一番悪い奴はだれですか
事件ノ前夜 (十一日)
私方ニ泊ツタ際、
相澤中佐ハ
「 東京ハ何ウデスカ 」
ト尋ネマスカラ、
「 別ニ變リハアリマセヌ 」
ト答ヘマシタ。
処ガ此一言ノ返事ガ、
相澤中佐ヲシテ永田少将ヲ殺サシメル
一ツノ動機トナツタ様デアリマス。
・・・西田税
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/4e/d6/5ab83f5cd0b8e90348aea4676d227aba_s.jpg)
相澤三郎
( 永田軍務局長刺殺事件 )
相澤中佐事件
目次
クリック して頁を開く
・ 所謂 神懸かり問答 「 大悟徹底の境地に達したのであります 」
・ 第一回公判 ・ 満井佐吉中佐の爆弾發言
・ 新聞報道 ・ 第一回公判開廷 『至尊絶對』
・ 新聞報道 ・ 第三回公判 『永田鐵山は惡魔の總司令部 』
・ 『 相澤中佐公判廷に於ける陳述要旨 』・・眞崎甚三郎大将
・ 満井特別辯護人ノ證人申請
・ 相澤三郎 ・上告趣意書 1
・ 相澤三郎 ・上告趣意書 2
・ 判決 『 被告人を死刑に處す 』
・ 本朝のこと寸毫も罪惡なし
「 ・・・・陸軍省における相澤中佐事件は、皇軍未曾有の不祥事であります。
本事件を單に殺人暴行という角度から見るのは、皮相の讒そしりをまぬかれません。
日本國民の使命に忠実に、ことに軍教育を受けた者のここに到達した事件でありまして、
遠く建國以來の歴史に、關聯を有する問題といわなければなりません。
したがつて、統帥の本義をはじめとして、
政治、經濟、民族の發展に關する根本問題にも触れるものがありまして、
實にその深刻にして眞摯なること、裁判史上空前の重大事件と申すべきであります・・・(下略) 」
・・・ 注目すべき鵜沢博士の所論
絶對の境地
相澤中佐が 昭和一〇年正月に天誅を決意した頃のメモに、
『 かくすれば かくなるものと 知りながら 已むに已まれぬ 大和魂 』
と 書き付けてあった
『 かくすれば かくなるものと 知りながら 』
と 云ふことは、
理智から出た処の頭のよさを示すもので、
この俗智の境を越境した時に、
『 やむにやまれぬ大和魂 』
即ち まつろはぬ者 を討つ心、
天に代りて不義を討つ心 が生れてくるのである
この 境地に進むには俗智の人では出來ぬ
よほど透徹した 頭のよい人でないと出來ないのである
俗智小智でなく、
小我小欲を離れた大智大我の人でなくては 達成せらぬのである
・・相澤事件の真相 ( 菅原裕 著 )
まつろひ
祭る 祀る に 由來し、
『 神を祭り、祖先を祀るときの心境であり、祖先をお祀りの所の心境を
私もなく、邪念もなく、全く之なし 』 の 無私の精神のこと ・・皇魂から